異色コンビの戦い!
ラックとタルトは草むらを見回しながら、少しずつ魔力を開放していった。敵の動きは大体把握している。草むらに隠れて隙を見て武器の銃で攻撃をする。姿を隠した場合だと草が視界に入って攻撃はできないため、攻撃を行う場合は姿を見せて攻撃をするだろうと二人は思っていた。
「かなり厄介な相手と戦う事になりましたね」
「本当にそうだな。下手に魔法を使ったらこの辺りが炎の海となる」
「ええ、うかつに魔法は使えませんね」
と、二人は話していた。隠れていた男は、幸運にもこの会話を耳にしていた。その後、男は二人の様子を少し離れた所で確認した。望遠鏡で二人が身に着けている武器を確認し、にやりと笑った。
「剣しか持ってねーのか。これは俺の勝ちかもな」
そう言うと、銃を構えてラックの頭を狙うように標準を入れた。少し揺れる腕を固定させた後、男は再びにやりと笑ってこう言った。
「お前から葬ってやるぜ、坊主」
ラックを倒したと確信した男は、そのまま引き金を引いた。しかし、男の予想していた運命は外れてしまった
「銃声!?」
引き金を引いた直後に銃声に気付いたタルトは声を出し、ラックと共にその場から離れたのだ。その結果、銃弾はラックから外れて行った。
「チッ‼」
攻撃が失敗した後、男は急いでリロードを始めた。だが、ラックとタルトがこっちに向かって走ってきたのだ。先ほどの攻撃で居場所がばれたことを察し、男はリロードを後回しにしてその場から離れた。
男は少し遠く離れた所に移動し、周囲を見回した。ワラフ城から離れてしまったが、今の状況は先にラックとタルトを倒さなければならないと考え、男は大きく深呼吸をしてリラックスをした。リロードを終え、男はポケットの中を調べた。
「左右のポケット、合わせて十五発か……」
残りの段数が十五発であることを確認し、この十五発でどうやって二人を倒そうかと考えた。その時、遠くから足音が聞こえた。少し顔を出して外を確認し、二人がこっちに向かって歩いてくることを確認した。男はまずいと思いつつ、姿を隠して移動を始めた。だが、その直後に風のような物が頭の上をかすった。そして、草の一部がパラパラと降ってきた。
「まさか……」
「そこか‼」
ラックが風の刃を発しながら、男に向かって来たのだ。飛んで来る風の威力を感じ、男は弾丸を撃っても無駄だと察した。こうなったら逃げようと思い、姿勢を低くしたまま男は走り出した。だが、男の逃げ道を予測したかのようにタルトが現れた。
「見つけたぞ!」
「ヤベッ‼」
突如現れたタルトを見て、男は向きを変えて逃げようとしたが、その前にタルトが剣を握って素早く剣を振り始めた。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
タルトの攻撃を喰らい、男は宙を舞った。それに合わせるかのようにラックが飛び上がり、剣で攻撃を始め、最後に盾で男を殴って地面に叩きつけた。
「グッ‼」
「このまま終わらせる‼」
男が地面にめり込んだ直後、タルトが魔力を開放させて体の運動神経を上げ、男に迫って来た。男は立ち上がる寸前、防御は出来ない。
「おい……待ってくれ! 頼むからさ!」
「変質者の言う事を聞くとでも思ってるのか?」
タルトは男に向かってこう言うと、強烈な一閃を食らわせた。男は悲鳴を上げながら宙を舞い、そのまま吹き飛んだ。
「結構ぶっ飛びましたね」
「かなりきつくやったからな。さて……どこへぶっ飛んだんだろう」
と、タルトはしまったと思いつつため息を漏らした。
予想外の出来事、タルトが遠くへぶっ飛ばしてくれたことにより男はワラフ城へ少し近付けた。だが、先ほどの二人の攻撃で男は深い傷を負っていた。
「ぐ……このままパンジー王女をやってやる……」
苦しそうにそう呟いた後、男は懐に隠し持っていたリボルバーを手にした。そして、事前に調べていたパンジー王女の部屋に銃口を向けた。
「一か八かだ……」
この一撃でパンジー王女を討てればいい。男はそう思いつつ引き金を引こうとした。だが、窓にいたシュウが男を見つけ、スナイパーライフルで打ち抜いたのだ。
「がはっ……」
シュウの銃弾を喰らい、男はその場に倒れた。しばらくして、ラックとタルトが倒れた男の元へやって来た。
「やっぱりこうなりましたね」
「ああ。きっと王女の部屋にいるシュウが男に気付くだろうと思っていたんだ」
二人は窓の方にいるシュウに向かって手を振ると、シュウも返事として手を振った。
その後、シュウは部屋に戻ってクリムたちの方を向いてこう言った。
「とりあえず敵は倒したみたいだ」
「さっすが先輩‼」
「あんな所にいる敵を打ち抜くなんてシュウさん流石です~‼」
クリムとナギがシュウに抱き着こうとしたが、クリムはナギをどかしてシュウに抱き着いた。
「チッ」
床に倒れたナギは小さく舌打ちをすると、起き上がってこう言った。
「でも、これで終わったわけじゃないでしょ?」
「ええ。大した魔力ではないので、ただの下っ端だと思います。後は、倒した奴らから話を聞きださないといけませんね」
クリムはナギに対し、こう言葉を返した。まだ見ぬ敵を恐れ、パンジー王女は恐怖で震え始めた。