ワラフ王国に到着
シュウたちを乗せたバスは無事にワラフ王国にたどり着く事が出来た。ハリアの村からワラフ王国までは四時間以上かかったが、柔らかい高級の椅子や時折出てきたお菓子などでシュウたちの気分は最悪ではなかった。
「たまにテレビでこの光景は見るけど、生で見ると結構すごいなー」
シュウの目の前に広がっているのは綺麗に整えられた花壇。それも、色に合わせるかのように花が埋められている。クリムたち女性陣(ティラを除く)は花壇を目にした途端、写真を撮ったりこの光景を目に焼き付けようと必死だった。それを見て、スネックが呆れて呟いた。
「これから仕事だってのに、呑気なもんだな」
「呑気な方がいいと思う。力が入りすぎたら仕事がやりにくくなるからな」
と、タルトがスネックの肩を叩いてこう言った。スネックとボーノは外で見張りを行っていた。一度シュウたちと合流するため、タルトの元へ来たのだ。その時、ジャックとボーノがこちらへ向かってくる女性を見て、驚いたかのように固まった。
「タルトさん……バラ女王が来ています」
「え? あっ、本当だ‼ 皆、バラ女王がこっちに来るぞ‼ 整列、整列‼」
慌てたタルトがシュウたちに整列と言ったのだが、皆思い思いに並んでしまった結果、タルトが後ろに隠れてしまった。
「あの、今回の依頼の責任者は私なんだけど……」
「あ‼ そうか、皆、タルトさんが前に出るように」
「大丈夫です。私、そう言った堅苦しい事は気にしていませんので」
近付いてきたバラ女王が慌てるクララにこう言った。圧倒的気品とそのオーラに負け、クララは茫然としてしまった。
「すごい……流石女王。並大抵のオーラじゃない」
「うふふふ。ありがとう、小さな戦士ちゃん」
バラ女王はそう言ってクララの頭を撫でた。その後、バラ女王はシュウたちを見回して頭を下げた。
「皆様、今回は私の娘、パンジーの為にワラフ王国まで来てくださり、本当にありがとうございます」
「いえいえ、これも仕事ですので」
と、タルトは緊張しながらこう言った。クリムは緊張して少しパニックになっているタルトを見て、タルトさんでも緊張することがあるんだなと思った。その時、バラ女王はバカップルを見つけ、二人に近寄った。
「あなたが有名なバカップルね。お話は伺っています」
「そ……そうなんですか!?」
「いやー、女王からそう言われると恥ずかしいです‼」
バラ女王が近付いた時、バカップルは慌てながら言葉を返した。少し緊張するバカップルを見て、ラックやシュガーはやっぱりこの二人も人間なんだなと思った。
バラ女王との会話後、シュウたちは城の中へ入った。
「うわー……」
「綺麗」
ワラフ王国の城、ワラフ城は色とりどりのレンガを使って作られた城である。古くからある城のため、歴史的にも美術的にも価値がある城と言われている。もちろん近代化に伴いちゃんと電気や水、ガスがつながっている。城の中には中で見張りをしているハヤテ、ナギ、リナサがいた。ナギはシュウを目にした瞬間抱き着こうとしたのだが、クリムに止められた。
「こりゃーすげぇ、このツボなんていくらするんだ?」
「きっと私たちの給料じゃあ変えない品物何だよねー」
ジャックとドゥーレが目の前にあるツボを見てこう言っていると、ツボを見たナギが慌てて二人にこう言った。
「あまりそのツボに触らないでよ! このツボ、一億ネカの価値があるんだから‼」
「「い……一億ゥゥゥ!?」」
とんでもない額を聞き、二人は恐れるようにツボから離れた。そんな中、ヴァーナが近くにあった白銀の鎧の近くに立ち、変なポーズをとっていた。そして、携帯を手にしているストブにこう言っていた。
「カッコよく写真に収めてくれ……」
「あいよー。でもいいのか? 鎧の方がかっこいいからお前のポーズがあほらしく見えるけど」
「フッ……我のポーズの価値はこの鎧より上だ……」
バカをやってるバカ二人を見て、クララは二人の頭を叩き、ナギは二人を引っ張ってこう叫んだ。
「あんたたちバカやってんじゃないわよ‼ この鎧は伝説の騎士をイメージした高級な素材で作られたレプリカなのよ‼ 価値としては十億ネカ、下手に壊したら弁償できないわよ‼」
「じゅ……じゅじゅじゅじゅじゅっじゅじゅ……」
「億? 万より上なのか。万より上? あ……壊さなくてよかった」
鎧の価値を聞き、二人は激しく動揺し始めた。シュウは周りに高額な物が置かれている事を知り、さらに緊張し始めた。そんな中、バラ女王は護衛を呼び、ある部屋に向かうように告げた。それと共に、リナサとハヤテもパンジー王女を迎えに行った。
「皆様、これから私の娘であるパンジーをお呼びします」
「ついにパンジー様とご対面ね」
「護衛の対象か……」
ミゼリーとティラの中に緊張感が生まれた。シュウも服が乱れてないか気にし、クリムは髪を整えた。しばらくして、ハヤテたちと共に一人の少女が現れた。濃い黄色の髪の色で美しく整い、さらっさらな長髪。顔も小柄で丸で人形の用だった。
「綺麗な人ですね……」
「ああ。テレビで見るよりもすげー綺麗だな」
バカップルはその少女を見て一目で理解した。あの少女こそが、守るべき対象であるパンジー王女だと。