お姫様の護衛
「はぁ……いい天気ですねぇ」
「ああ。本当にいい天気だなぁ」
と、バカップルは自室の部屋にあるベッドの上でだらだらしながらこんな話をしていた。ここのところ、バカップルは休む暇もなく依頼をこなしていた。大きな依頼ではなく、薬草探しやモンスター退治などの簡単な依頼だったが数が多かったため、流石のバカップルも疲れてしまったのである。
「たまには平日の昼間からだらだらするのもありですねー」
「仕事が多かったんだから、休んでもいいんだよ。特に、俺らの場合は小さい依頼から大きい依頼まであるからなー」
「そうですよねー」
会話をしながらバカップルは抱き合い、そのままベッドの上をゴロゴロしていた。そんな中、電話が鳴り響いた。せっかくのムードが台無しになったじゃねーかと思いつつ、シュウは渋々立ち上がって電話を取った。
「もしもし」
『シュウか。タルトだが、申し訳ないが大変なことが起こりそうなんだ』
電話の相手はタルトだった。タルトが話した大変なことが何か分からず、シュウは慌ててこう聞いた。
「大変なことって?」
『実は、ワラフ王国の王女、パンジー様が何者かに命を狙われているんだ。その護衛のため、私たちエイトガーディアンが総出動する事になったんだ。だが、パンジー様の命を狙う輩が多いらしく、信頼できるギルドに助けを求めてくれと言われたんだ』
「それで、俺たちが選ばれたんだね」
『ああ。だが、シュウとクリムちゃんだけでは対応しきれないため、ジャックさんや他の皆も手伝ってほしいんだ』
「それだけ相手は多いんだね」
『パンジー様の命を狙う奴は有名な裏ギルドを雇ったと言われる。大変な依頼になると思うが……』
「分かった。皆には俺から話をするよ」
『話の方は大丈夫だ。今先程ハリアの村のギルドにも連絡をした。明日、こっちに来て詳細を説明する』
「うん。その時に話を頼むよ」
『ああ。ではまた明日』
クリムはシュウとタルトが話を終えた所を見て、シュウに近付いた。
「ワラフ王国ですか。今、あの国は現女王のバラ女王の跡取り問題で揉めていると聞いています。パンジー王女がその跡を継ぐと噂されてますが……」
「多分その辺の問題で命を狙われてるんだろう。この依頼、かなり難しくなりそうだな」
シュウはそう言うと、すぐに銃の点検を行った。クリムもこの依頼が長期になると予想し、武器の点検を行った。
翌日。ハリアの村の会議室にバカップルやジャック、ミゼリー、ラック、シュガー、ティラの他、ストブたちが部屋に集まっていた。
「ハリアの村のギルドの凄腕たちが集まるのか。こりゃー大きな仕事になるねー」
ティラは周りのメンバーを見て、大きな依頼があると予想していたが、心の中では大金が入ると思ってうきうきしていた。逆にジャックやラックはどんな依頼があるのだろうと思いつつ、少し不安になっていた。ジャックたちにも依頼の話は耳にしているのである。簡単にしばらくし、タルトが会議室に入って来た。
「急に大きな依頼を持ちこんでしまって申し訳ない。私たちエイトガーディアンだけではこの依頼を解決することは出来ないとみて、君たちの力を借りたいんだ」
「いいよいいよ! その代わり依頼料がっぽりもらうからねー!」
と、ティラはハイテンションでこう言ったが、シュウが急いで近付いてティラを落ち着かせた。呆れたクララは続けてくださいとタルトに向かって言い、タルトは咳ばらいをして話を続けた。
「今回協力を頼みたい依頼ワラフ王国の王女、パンジー様の護衛。今、先にエイトガーディアンが護衛を行っているが、この数日間でパンジー様を狙った攻撃がいくつか発生した」
「ニュースには聞いていたが、かなり起きているみたいだな」
「メディアには事を大きく広げないよう、ワラフ王国が伝えてある」
ジャックの言葉を聞き、タルトは言葉を返した。その後、シュウたちに依頼の事が書かれた詳細が渡された。クリムは詳細を見て、シュウにこう言った。
「こうやって見ると、結構いろんな人から命を狙われてますね」
「その一人一人が裏ギルドを雇っていたら、対処が大変だな」
「ええ。その中に私の命を狙う奴がいなければいいんですが」
クリムの言葉を聞き、シュウはある事を思い出した。少し前にクララが言っていた、一部のチュエールで修行した魔法使いが賢者になれず、クリムの事を恨んでいると。
「その可能性もあるな。でも、クリムなら普通に勝てるだろ」
「まぁそうですね。復讐心で動くやつに私は負けませんよ」
と、クリムはどや顔で呟いた。その後、タルトの話が終わった後、シュウたちはワラフ王国が用意したバスに乗り込んだ。
「うわー、ワラフ王国が用意したバスだから結構豪華だねー」
バスの中に入ったシュガーは豪華なバス内を見て驚いた。椅子は有名企業の社長が座っているような皮で出来た高級な椅子。天井は綺麗だが、しっかりとしたクーラーが付けてあり、座椅子の所には簡易的な冷蔵庫があり、その中には超が付くくらい高級なジュースが入っていた。
「これ……飲んでもいいのかな?」
「用意してくれたんだから飲むっきゃねーだろ‼」
超高級ジュースを手にし、クララは恐れて震え、ストブは何にも気にせず蓋を取って飲み始めた。だが、ティラがある事を知って騒いだ。
「どうしたんだ?」
「気にしないでいいよ父さん。どうせお酒がないとかそんなだから」
呆れたシュウがタルトにこう答えた。シュウの言うとおり、ティラは酒がないといって子供のように騒ぎ始めた。ジャックとラックがティラを止める中、運転手がこう言った。
「そろそろ出発してもいいですかねぇ?」