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豪華客船を狙う影

 俺は何でこんなことをしているんだ?


 と、ハヤテは心の中でこう思っていた。場所はとある会場の上の豪華客船の上。今、ハヤテはそこにあるパーティーフロアでドレスを着たナギと踊っている。ハヤテ自身もかなり値の張るレンタル用のスーツを着てナギの手を取って踊っている。いやいやと。ナギも心の中ではこう思っている。


 こんな奴と踊るより、シュウさんと踊りたい! 仕事だから仕方ないけど~!


 と、こんな感じで。




 一体何でこうなったかと言うと、かれこれ数日前に時はさかのぼる。シェラールのエイトガーディアンの元にある依頼があった。


「ほう。あのモリアームズ交易会社から来たんですね」


「はい。私はモリアームズのカップル限定イベントの責任者、コムズと申します」


 コムズは名刺を取り出し、タルトに手渡した。タルトは名刺をしまった後、自己紹介をしてコムズに質問をした。


「依頼の内容はなんでしょうか?」


「実は、今度行うカップル限定の豪華客船パーティーをぶっ潰すという予告のような手紙が送られまして……」


 そう言って、コムズは一枚の紙をタルトに渡した。紙を見たタルトは渋い顔をした後、コムズに返した。その紙には『こんなイベント開催する暇があったら他に金を使え‼ 俺たちの言う事を聞かないと船を木端微塵に吹き飛ばす‼』と、書かれていた。


「いたずらか本気なのか分かりませんね。もし、海の上で爆発したら大惨事になる」


「そうなんです。このイベントは我が社が定期的に行うイベント。カップルたちの為に美しい夜空と豪華なディナーを用意し、素晴らしい時を過ごしてもらうために始めたんです。それが……」


「話の内容は分かりました。パーティーを守る事、そしてこの手紙を送りつけた奴を逮捕することですね」


「そうです。お願い出来るでしょうか?」


「ええ。もちろんです」


 タルトは答えた後、メンバーをどうするか考えた。リナサはまたハリアの村へ遊びに言っており、キャニーとフィアットは別件でいない。スネックとボーノに頼もうとしたが、あの二人は任務を放棄して豪華な食事を食べ歩くに違いないから外した。ここで頼れるのはハヤテとナギ、そしてシュウとクリムのバカップルしかいなくなった。


「少し待ってもらえないでしょうか?」


 タルトはコムズにこう言うと、ハヤテとナギを呼んだ。だが、呼んでも二人はすぐに来なかったため、不審に思ったタルトはエイトガーディアンの部屋へ向かった。扉を開けた瞬間、タルトの顔面にコップが激突した。


「あ‼ 何やってんのよバカハヤテ‼ あんたが投げたコップがタルトさんに命中したじゃないの‼」


「お前が避けるからだろうがアホナギ‼」


「何ですってバカハヤテ‼」


「お前だって俺の事をバカって言っただろうがアホナギ‼」


「誰がアホだァァァァァァァ‼」


 二人はくだらない事で喧嘩をしていた。呆れたタルトは二人を捕らえ、拳骨をお見舞いした。


「バカやってんじゃない。仕事の話だ‼」


「仕事~?」


「そうだ、こっちへ来い。それと、今回の仕事にはシュウとクリムちゃんにも手伝ってもらう予定だから、私は後で電話をするから……」


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼ 久しぶりにシュウさんと一緒に仕事ができるんですね‼ 私、張り切ります‼」


 と、はしゃぐナギを見てタルトは大きなため息とともに心の中でこうぼやいた。本当に大丈夫かなと。


 その後、仕事を承諾したタルトはハリアの村へ連絡をした。バカップルはすぐにリナサとミゼリーと共に来ると伝えた。タルトは電話を置き、コムズにこう言った。


「明日にはハリアの村から私の息子とその彼女、そしてエイトガーディアンのリナサと信頼する村のギルドの戦士が来ます。また、彼らに話をお願いします」


「分かりました。では明日」


 コムズは頭を下げてこう言うと、部屋から出て行った。タルトは少し不安な気持ちで明日を迎えた。




 それから、合流したバカップルとリナサとミゼリーはコムズから話を聞き、依頼を承諾した。


「分かりました‼ 私とシュウさんが豪華客船に客として入って、怪しい奴を捕まえればいいんですね‼」


 ナギがそう言うと、後ろにいたクリムが魔力を開放した。タルトとミゼリーはクリムを抑えた後、タルトは仕事の説明をした。


「今回はハヤテとナギがカップルのふりをして豪華客船内を捜査。私とシュウとクリムちゃんが船の裏で爆発物の操作、ミゼリーさんとリナサが外で犯人を捜査。と言う形をとる」


 その言葉を聞いたハヤテとナギは物凄く嫌な顔をした。自分たちがカップルのふりをして捜査をするなんて嫌だと思っているからだ。しかし、仕事である以上仕方ないとして二人は承諾の返事をした。とても嫌そうな顔で。タルトは咳ばらいをした後、ハヤテとナギにこう言った。


「お前たちの気持ちは分かるが、これは仕事だ」


「何で俺とナギなんですか? シュウとクリムがいるじゃないですか」


「二人は有名なカップルだ。犯人も二人の事は把握しているだろう。もし、二人が捜査をしているなんてばれたら何をするか分からない」


「そう言う事か。だから裏方に回るのか」


「そう言う事だ」


 タルトはそう言って、シュウたちに豪華客船の資料を渡した。クリムは資料の写真を見て、シュウと共に声を上げた。


「すげー綺麗な船だなー」


「流石豪華客船。一度オフの時に先輩と乗りたいです」


「こらこら、話はあとで」


「お兄ちゃん、クリムお姉ちゃん、今から仕事だから」


 ミゼリーとリナサにこう言われ、バカップルは返事をした。タルトはシュウたちを見て、今回の依頼は無事に遂行するか、少し不安になっていた。ハヤテとナギがカップル役なのも不安の一つだが、それとは別でこの犯人の身元がまだ分からないというのがタルトの不安の一つでもあった。


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