ワカゲのその後
ラックたちはエダノケとの戦いの事をライズに伝えた。話を聞いたライズはにやりと笑みをした後、ラックたちにこう言った。
「ありがとうございます。翌日からエダノケと言う男の取り調べを行います。その取り調べで得た情報でワカゲの事を世間に伝える事が出来ると思います」
話を聞いていたドゥーレは、少し考えてこう言った。
「今思ったんだけど、大企業相手に裁判を起こすなんて無茶じゃないー? この組織も結構大きな規模だけど、ワカゲの方が結構大きいよー」
「その辺の話は大丈夫です。相手が巨大であることは我々も把握しています。今すべきことは、情報を手にすることですから」
と言って、ライズは去って行った。ドゥーレとヴァーナは欠伸をしながら部屋に戻ろうとしているが、ラックは不安だなと思いながら去って行くライズの背中を見つめていた。
「何か変な予感でもするのか?」
心配したヴァーナが声をかけた。声を聞いたのか、ラックははっと我に戻ってヴァーナにこう答えた。
「うん。この組織、かなり危ない事をすれすれでやってると思うから、きっと危ない事をするんだろうなって……」
「その手のプロなのだろう。我も少し不安だが……」
その後、ラックとヴァーナはドゥーレに早く行くよと言われ、すぐに部屋へ戻って行った。
翌日。ラックたちは荷物をまとめていた。朝食を食べている中、ライズが依頼を終えると言ったからだ。
「急な話だよねー」
「だな。ま、我としては風邪を引いたクリムとシュウが気になっている」
「シュガーさんに連絡したけど、もう元気らしいよ」
「じゃ、大丈夫だね」
部屋で話をしていると、アタッシュケースを持ったライズが部屋に入って来た。
「皆様、今回は本当に助かりました。ありがとうございます」
と言って頭を下げているが、ラックは気になっていることをライズに聞いた。
「ワカゲの方はどうなったんですか? 情報を得ることは出来ましたが……」
「その情報だけで十分です。これからは我々の仕事なので。大丈夫です、危ない橋はわたりませんよ」
ライズは笑いながらラックたちにこう言った。数分後、ラックたちは用意された車に乗ってハリアの村へ戻って行った。ラックは車の中で一体どうするのだろうと考えていた。ライズは少し犯罪ギリギリの事をやって来たのだが、今回は一体どう動くのかラックには考えが付かなかったのだ。
サンラバンの依頼が終わって数日が経過した。ラックはキッチンで食事をしようとしていたが、すぐに女性陣の群れに囲まれていた。
「すみません……食事をしたいので通りたいんですが……」
ラックはこう言っているが、女性陣の歓声によってかき消されてしまった。どうしようかと思った時、シュガーとヴァーナが魔力を発してこう言った。
「ラック君の邪魔になってるよー」
「食事の邪魔はやっては駄目だと教わらなかったか!?」
二人の声を聞き、女性陣はすぐに散って行った。やれやれとため息を吐きながらラックは食器を持って移動していたが、またため息を吐いた。
「相変わらずイチャイチャしてるね、君たちは」
「そうか?」
「どこでも先輩といたいんですー」
ラックはイチャイチャしているバカップルの横に座り、食事を始めた。何でバカップルの横に座ったのかと言うと、近くにテレビがあるからだ。あの依頼の後、ラックはサンラバンが何かしてないかニュースをチェックしていたのだ。だが、今のところ何もなかった。今日も何事もなくニュースが流れていたが、突如テレビの中のアナウンサーが慌てて何かを受け取った。そして、その中身を見てすぐにこう言った。
『速報です。今、衣服制作会社として有名なワカゲに強制捜査が入りました。ワカゲは貴重な動植物を無断で採取し、衣服を制作しているとの事です。ワカゲはこの情報を否定していますが、他にも裏ギルドまがいの事をする傭兵を雇って敵対会社の需要人物の暗殺を行っていたとも情報があります』
このニュースを聞いて、ラックは目を丸くして驚いた。その姿を見たクリムは携帯を操作し、ラックに画面を見せた。
「大分前からワカゲの悪い噂が流れているんですよ。このページを見てください」
クリムから携帯を借りて画面を見ると、そこにはワカゲの事に関して書かれた情報が書かれていた。
「この情報は、僕がワカゲで目にした情報だ」
「最初は嘘だと言われたようだが、SNSなどで分散されて大きな騒動になったんだよ。ラックはあまりネットとか見ないか」
シュウの言葉の後、ラックは冷静になってその場に座り、バカップルにこう言った。
「サンラバン……とんでもない所だな。こうやってSNSを利用して話を拡散させ、ワカゲの評判を落とすと同時に騒動を大きくさせる。警察組織が動くほどに騒ぎが大きくなることをあの人は予想してたんだ」
「あの人って、サンラバンのライズですか?」
クリムの口からライズの名前が出て、ラックは驚いた。まさか、クリムの口からライズの名前が出るとは思わなかったからだ。
「それなりに有名ですよ。かなりの仕事人間でだが、それ以上に自然を愛する男。自然を守るためなら何でもすると」
「そこまでするとは思わなかったな」
ラックはそう言いながら画面を見直した。映像ではワカゲの会長があたふたしていたが、その離れた所でほくそ笑むライズを見てラックはため息を吐いた。