ワカゲからの刺客
ラックたちがワカゲに侵入し、貴重な情報を得てから翌日が経過した。ライズは近日中にワカゲを告発するとラックたちに伝え、その準備を行っている。話を聞いた後、ドゥーレはラックにこう言った。
「そろそろこの騒動が終わるねー」
「うん。ただ、ワカゲがまだ何かをするかもしれない」
ラックはドゥーレに言葉を返した後、立ち上がってドゥーレとヴァーナにこう言った。
「僕は外を見てくる」
「りょうかーい」
「頼むぞラック。我は少し時の流れに身を任せていよう……」
「ただの昼寝でしょー」
ドゥーレとヴァーナの会話を聞き、ラックは少し苦笑いになった。その後、部屋を出たラックは武器を装備した状態でサンラバンの周囲を歩いていた。
「平和だが……何か起こるような気がする……」
ラックは小さく呟いた後、魔力を少し開放して歩き始めた。しばらくし、ラックはビルの裏側へ回った。その動きを見た男がラックの後を追うかのようにビルの裏側へ回った。ラックは後ろを振り向いて様子を見たが、その前に男は姿を隠した。
「……気のせいか」
ラックはこう言った後、再び歩き始めた。男はラックが離れた所に行ったと確認した後、姿を出して再び後を追った。そうしているうちに、男は少し広い場所にたどり着いた。辺りを見回したのだが、そこから続く道はなかった。だが、男はこの場所から魔力を感じ取っていた。
「君は一体誰なんだい?」
不審に思っていると、後ろからラックの声が聞こえた。男はため息を吐いてラックにこう言った。
「さっきの声はわざと俺に聞こえるように言ったんだな」
「ええ。気のせいと言えば、僕があなたに尾行されていると分かってないと思ってね」
「あーあ、簡単な嘘に引っかかったな俺」
男はそう言うと、魔力で剣を作って後ろにいるラックに攻撃を仕掛けた。反撃が来るだろうと予測していたラックは左手の盾で男の攻撃を防御し、魔力を開放しながら後ろに下がった。
「喰らえ‼」
ラックの盾から、雷の矢が何本も発した。男は雷の矢をかわしながらラックに近付き、飛び蹴りを放った。
「そんな簡単な攻撃が当たるか‼」
男の飛び蹴りに対し、ラックは盾を振って男を吹き飛ばした。その時、ラックの盾には男が発した魔力の粒子が付いていた。
「粒子が付いたな」
「だからどうした?」
その時、ラックは男の魔力の粒子が光出した事を察し、盾を放り投げた。その瞬間、ラックの盾は爆発した。
「勘がいいね、坊主」
「敵の装備に魔力の粒子を付け、爆発させてダメージを与える。うまく魔力を使う魔法使いなら簡単にできる戦い方さ」
ラックは言葉を返すと、傷だらけの盾を拾い、魔力を込めた。その瞬間、爆発によって傷だらけの盾がすぐに新品のようにピッカピカになった。
「何だよその盾、魔力を込めたらピッカピカになったじゃねーか」
「僕の盾は少し特殊でね、魔力を込めたら盾としての性能が上がるんだ。それよりも、君は一体誰なんだい?」
ラックの質問に対し、男はため息を吐いて言葉を返した。
「言わなきゃなんない?」
「ギルドの戦士を襲った以上、君は犯罪者だ。ギルドの戦士としては、君が何者か調べなければならないんでね」
「そうかいそうかい。なら教えておく。俺はワカゲに雇われたエダノケって戦士だ」
エダノケと名乗った戦士を見て、ラックは不審に思った。やけに簡単に自分の素性とワカゲに雇われたことを白状したからだ。
「簡単に自分の素性を相手に教えるんだな」
「何でか教えてやろうか? お前はここで俺にぶっ殺されるからだよ‼」
エダノケはラックに向かって叫んだ後、両手に魔力の剣を装備し、斬りかかった。ラックは盾で攻撃を防いでいるが、攻撃を行う隙は見当たらなかった。
「さーて、そのピッカピカの盾で俺の攻撃に耐えれるかなァ!?」
エダノケは下品な笑いと共に叫んだ。
その頃、風邪をひいていて出番が全くなかったバカップルはベッドの上でいちゃついていた。
「このままずっとクリムと一緒にいたい」
「私も先輩と同じ意見です」
と、そんなことを言いながらイチャイチャしていると、ティラが扉を開けて部屋の中に入って来た。
「よー、相変わらずいちゃついてるな。そろそろ治ったんじゃねーの?」
「師匠」
「私もいるよー」
と、ティラの後ろからシュガーとクララ、ミゼリーが顔を出した。
「皆来てくれたんですね」
「様子を見に来たのよ。シュウとクリムが風邪を引いたって驚いたけど、大したことなさそうね」
たった今依頼から帰って来たミゼリーはイチャイチャするバカップルを見て、少し呆れながらこう言った。そんな中、ラックが依頼に出ている事を思い出し、シュウにこう言った。
「そう言えば、ラックが自然保護のサンラバンからの依頼に出てるって聞いたけど、まだ戻って来てないのかしら?」
「ワカゲが関わってると話に聞きましたし、難しい依頼だと思います。それに、ドゥーレとヴァーナがいますし……」
「あの二人、ラックさんに迷惑をかけてなければいいんですが」
「まぁ、いざとなった時はあの二人もちゃんとやるから大丈夫でしょ」
と、心配するクララに対し、クリムはこう言った。