ワカゲへの乗り込み
ライズから話を聞いたラックは、用意された部屋で考え事をしていた。防犯カメラの映像があるため、ギュウサとワカゲの役員が何かしらの関係がある事が証明できる。しかし、そのスーツの男性が本当にワカゲの役員なのかは確定していない。それを明かすため、もう一つ証拠が欲しいと思っている。
「考え事だね」
と、ドゥーレがラックに近付いてこう言った。ラックはドゥーレの方を向いて言葉を返した。
「うん。あの証拠じゃあまだワカゲを追い詰めるには弱いんだ。あのスーツの男が本当にワカゲの役員だと示す証拠がないんだ」
「顔は分かるの?」
「ズームで調べてみたけど、サングラスとマスクを付けてて、顔までは分からない」
「しっかりしてるねー、ワカゲの役員さんも」
「大企業が違法ハンターを雇っていることを知られたら、大ニュースになるからね。そうならないように相手も考えているんだよ」
「それよりさ、一度ワカゲに行ってみない?」
この言葉を聞いたラックは、目が点となった。しかし、何かしらの証拠があると思われたため、ラックはドゥーレにこう言った。
「証拠があるかもしれないね」
「うん。まだ向こうはあのビデオの事を知らないはず。少しの油断はあると思う」
「そうだね。ハチャメチャな自由人だと思ったけど、やる時はやるんだね」
「それなりに頭は回るよー。ただ、勉強は苦手だけど」
と言いながら、ドゥーレは笑いながら去って行った。その後、ラックはライズの部屋へ向かい、先ほどのドゥーレとの会話を話した。
「直接ワカゲへ向かうのですか?」
「はい。ただの客として入り、もう一人がこっそりと中に侵入して調べるという作戦です」
「そうですか。いや、確実な証拠がない以上、乗り込むしかないかもしれませんね」
「危険ですが、まぁこう言ったことは何度もやって来たので、何とかなると思います」
「その言葉と自信を信じます。よろしくお願いします」
ライズはそう言って頭を下げた。それから、ラックはその事をヴァーナとドゥーレに話をし、翌日ワカゲへ行くことにした。
翌日、ドゥーレとヴァーナはワカゲ本社の入口にいた。ドゥーレはカメラの前でポーズをとるヴァーナに近付き、小声でこう言った。
「いい? 私たちは出来るだけ中にいて、裏から侵入するラックさんの存在を知らせないようにする」
「なら、中で目立ったことをすればよかろう」
「そうだけど、変なことをやったら拳骨するし、クリムとクララに言いつける」
「勘弁してください。あの二人にあれこれ言われると頭が上がりません」
「だったら変なことをしないでね」
そう会話をすると、扉から案内人の女性が現れた。
「あなたたちが見学をしたいと言った二人組ね」
「はい。私はドゥーレ・チェリーツリー。このカメラの前でへんてこなポーズをとっていたのがヴァーナ・エレクトリック」
「よろしく頼む……」
「は……はぁ」
変なポーズをするヴァーナを見て、案内人の女性は冷や汗をかいていた。ドゥーレはヴァーナにヘッドロックをかけた後、案内人の女性と共にワカゲ社内に入って行った。
その裏では、ラックは隙を見て関係者用の室内に入りこんでいた。カメラに気を付けながら、ラックは部屋の中を探し始めた。
「ここじゃないか……」
資料を調べつくし、ラックは部屋を出ようとした。少し扉を開き、そこから人影がないかを調べ、素早い動きで部屋から出て、次の部屋へ向かった。次の部屋は資料保管庫。そこに何かがあるだろうとラックは思ったのだが、案の定扉には鍵がかかっている。
「やっぱりな」
ラックは鍵の形状を調べた。キーで開く扉ではなく、特定のボタンを押して開く形状の扉であることを察し、少し魔力を開放した。
「少し荒業だけど……仕方ないか」
ラックは電撃をちょっとだけ発し、鍵を故障させて扉を開けた。扉を開けて、すぐに監視カメラの位置を確認し、電撃を発してショートさせた。これで、しばらくここを調べる事が出来る。そう思いながら、ラックは資料室を調べ始めた。調べる中、ラックがため息を吐くくらいにいろんな資料が出てきた。
「全く、貴重な動植物採取以外にもいろいろやってるのかこの会社は……」
調べると出てきたのは違法な行為を働いた証拠。それも、今回の依頼の貴重な動植物採取以外の資料だった。中には、裏ギルドとの関連を裏付ける資料も出てきている。
「そう言えば、ワカゲは警察嫌いとしても有名だったな。これが原因か」
小さく呟きながら、ラックは特殊なカメラを使って、資料の撮影を始めた。その時、扉の外から足音と会話の声が聞こえた。
「異常があったのか?」
「はい会長。見張りをしていたら、急に資料保管庫のカメラが消えてしまったんです」
「カメラの点検は毎日行っているよな?」
「はい。毎日欠かさずやっています」
「カメラ自体の寿命が来たのか……それとも、誰かが来たのか……」
声を聞き、ラックは冷静に身を隠す場所へ避難した。部屋へ入った直後、ラックはいざという時に隠れる場所を見つけていたのだ。ラックがその場所へ入った直後、ワカゲの役員と会長らしき人物が現れた。