大企業を相手に
ラックはかなり不安だった。以前バカップルたちが倒した違法ハンターを操っていた黒幕、ワカゲ衣服制作会社を追い詰めるため、ラックはサンラバン自然保護協会から依頼を受けた。しかし、共に行動するのがドゥーレとヴァーナだった。
「はぁ……大丈夫かな……」
依頼を受けた後、ラックはドゥーレとヴァーナと共に自然保護協会があるビルにいた。そこまで行くまで、ヴァーナは変なことを急に言ったり、敵だと言って急に雷を使ったりした。ドゥーレはドゥーレで自由気ままに空を飛んだり昼寝をしていた。そんな中、ラックは本当に依頼を達成する事が出来るか心配になってきた。
「そんなにため息を吐くなラックよ。幸運の星は逃げるぞ」
と、ヴァーナは笑いながらラックの肩を叩いた。そんな空気の中でも、ドゥーレはソファの上でグースカと寝ていた。
その後、ラックたちはライズの案内でワカゲが違法ハンターを雇っていたという証拠を見に行った。
「映写室……何か証拠となる映像を手にしたのですね」
「はい。ワカゲに潜入している我が社のスパイがその映像を手にしました」
「スパイですか……」
「自然を守るためには手段を選びません。言ったでしょ、殺し以外は何でもすると」
「そうですか。ま、立場上スパイは見なかったことにします」
「ご理解のほどありがとうございます」
だが、スパイと聞いて騒ぎ始めるおバカさんがいた。ヴァーナである。ヴァーナは突如ライズに飛びかかり、叫び始めた。
「貴様‼ 悪の道に走って何が正義だ!?」
「あの……どうしてもワカゲが違法なことをやっていると証拠が欲しくて……」
「そんなのが理由になるか‼ 思い出してみろ、お前のおふくろさんはそんなことをするために貴様を育てわけではないんだぞ‼」
「ヴァーナ、静かにせい」
と、ドゥーレがどこからか持って来たか分からない謎の巨大ハンマーをヴァーナの頭に振り落とし、気絶させた。
「じゃー、ヴァーナは私が見張っておくんで。ラックさん、後で話聞かせてね」
「ああ……うん。分かったよ」
ドゥーレと気を失ったヴァーナが映写室から出て行った後、ラックはライズと共にワカゲの違法行為の映像を見た。
「ここはどこですか?」
「ワカゲ本社から近くのビルです。一通りが少なく、このビルの従業員も夜中まで働いておりません。ワカゲがこのビルを調べてなかったおかげで、この映像を手にしました」
「運が回ってきたんですね」
「ええ、本当にこの時は神に感謝しましたよ。そろそろです」
ライズがこう言うと、画面右端からスーツのような物を着た男が現れた。それから数秒後、画面上部に白い車が止まり、中から安物の服を着た男が現れた。そして、スーツの男性は胸元から封筒のような物を出し、安物の服の男に渡した。封筒を受け取った安物の服の男はすぐに白い車に戻り、その場から去って行った。スーツの男性は辺りを見回した後、安物の服の男とは別の方向に去って行った。時間としては、約20秒ほどの映像だった。
「これが証拠なんですね」
「スーツの男の身元は分かりませんが、安っぽい服の男は把握しています。違法ハンター集団のまとめ役、ギュウサです」
「ギュウサ……ギルドの資料にも載ってない男ですね」
「奴はかなり慎重な男です。我々も奴の存在を知るのに時間をかけました」
「どうやって知ったんですか?」
「奴の部下を捕まえて聞きだしたんです」
この時のライズの表情と口調で、何をしたかラックは察した。そして、本当に自然の為なら何でもやるなと心の中で思った。
「もし、シュウやクリムちゃんがいたらあなたたちごとぶっ飛ばしてそうですが、僕はそう言ったことをしないのでご安心を」
「そうだったんですね。恐ろしい二人組です」
「だけど、頼れるんだ」
と、ライズに向かってラックは笑顔でこう返した。
同時刻、風邪で寝込んでいるバカップルは自室で抱き合って寝ていた。
「はぁ……やっぱりこの態勢が一番楽だ……」
「先輩とくっついていると、風邪をひいていることなんて忘れてしまいます~」
「何やってんだバカ共が」
と言いながら、ティラはバカップルの部屋を開けて中に入って来た。その後ろには、シュガーとクララがいた。
「玉子酒持ってきてやったぞ。何も食ってねーだろ? 栄養のある物を取って休め」
「いただきます」
バカップルは玉子酒をティラから受け取り、飲み始めた。少し飲んだ後、クリムはシュガーにこう聞いた。
「お見舞いに来てくれたんですか?」
「治療に来たんだよ。風邪に効く新しい薬を作ったから試したくて」
と言って、シュガーは手にしている注射器を二人に見せた。中に入っている液体は緑色で、とても信頼できるものではない。そうバカップルは察した。
「大丈夫だ。寝てれば風邪なんて治るから」
「先輩の言うとおりです。こんなの、二日寝てたらすぐに治ります」
「え~? せっかく試したかったのに」
「シュガーさん、だから注射器じゃなくて普通の飲み薬にしましょうって言ったのに……」
クララの言葉を聞き、クリムは驚いた表情をした。
「え? クララもこの薬を作ったの?」
「手伝いをしただけよ。大丈夫、シュガーさんは変な物を入れてないわ」
「いつも私が変なのを入れるようなことを言わないで~」
「いや、いつも入れてるような気がする」
シュウの言葉を聞き、シュガーはどす黒い笑顔で注射器を持ち、シュウに近付いた。それを見てクリムはシュウを守ろうとした。それから騒がしい声がバカップルの部屋から響いた。そんな声を聞き、ティラは玉子酒用で使用し、余った酒を飲みながら呟いた。
「このバカップル本当に風邪ひいてんのか?」