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ティラの作戦

 オイジーブラザーズは熱探知ゴーグルを装備し、ティラとストブの姿を探していた。


「兄貴、奴ら一体どこに行ったんだろうな?」


「分からんが、この一帯にいることは間違いない。俺たちの商売の邪魔をしたら、命がないってことを教えてやろうぜ」


 兄は周囲を見回し、怪しいものがないか調べていた。すると、モニターに赤いもやが映った。そこに熱を発している何かがあるということだ。


「温度36度。俺たちを狙う奴は木の上にいる」


「俺も確認したぜ兄貴‼」


「二人で狙おう。同時に狙えば、奴らを殺せる」


 そう言って兄弟は同時に銃を構え、赤いもやが映った木に狙いを付けてライフルを構えた。


「同時に撃つぜ」


「合図は?」


「俺がする。3で撃つぞ。1……2……3‼」


 3と言った直後、兄弟は銃を乱射し始めた。無数の弾丸が放たれたせいで、木に茂っていた葉っぱや伸びていた枝が次々と折られたり落ちていった。しばらく乱射を続けていたが、弾が切れてしまった。


「終わったようだな」


「え……ちょっと待って兄貴。奴らの死体がありませんぜ‼」


 弟はずっと木の方を見ていた。もし、木の中に何かが隠れていたとしたら、撃たれてバランスを崩して木から落ちるはず。使っている弾丸もかなり固いもので、鉄板すらも容易に打ち抜くほどの威力がある。木の後ろに隠れていても、弾が木を貫通して命中する。しかし、ティラとストブの死体はなかった。


「そんなはずはない。確実に始末したはずだ」


 兄はそう言って木に近付こうとした。しかし、突如どこからか弾丸が飛んで来て、兄が装備するゴーグルを破壊した。


「グアッ‼」


「兄貴‼」


 ダメージを受けた兄を見て、弟はすぐに草むらに身を隠した。どこかに敵がいる。何かしらの方法で隠れ、反撃したと弟は考えた。


「クソッたれが……」


「兄貴、隠れてくれ。ここで反撃したら奴らの思うつぼだよ」


「ああ……グッ……」


 弟に言われ、兄はこめかみから流れる血を抑えながら草むらに隠れた。身を隠してしばらく経過したが、兄を撃った後動きはなかった。


「どこかへ行ったのか?」


「分からないよ。でも、敵はいると思う」


「俺は行く。この傷の借りを返さなくちゃな」


 と言って、兄はほふく前進で進み始めた。だが、その時に炎の刃が兄に向かって降ってきた。


「おわっ‼」


「見つけたぜ、オイジーブラザーズ‼」


 空から聞こえたのはストブの声。突如現れたずぶ濡れのストブを見て、兄弟は慌てて銃をストブに向けた。だが、その時二人に向かって銃弾が飛んできた。


「グガッ‼」


「アギャッ‼」


 銃弾を腹に一発ずつくらい、兄弟はその場に倒れた。兄は震える声で、ストブにこう聞いた。


「な……何で俺たちの場所が……」


「教えてやるから、服の一つ位持ってこい」


 と、ずぶ濡れのティラがこう言った。その姿を見て兄は察した。ゴーグルは熱を探知するが、逆に低いと探知しない。それを利用し、ストブとティラは近くの水源に身を隠し、体を濡らして体温を低下させていたのだ。その為、二人の姿は確認できなかった。だが、兄はもう一つ分からないことがあったので、捕らえに来たティラに尋ねた。


「一つだけ分からないことがある。探知したあれは一体何だったのだ?」


「炎の人形だよ」


 ストブはこう言って、火の魔力を操って人型にした。それを見た兄は、何もかも把握した。


「これを囮にしたんだよ。そのあとで、私たちは水場に隠れたんだけど……こんなに濡れるとはね」


「後で火の魔法を使って乾かせばいいじゃねーか。いつもやる手口だけど、本当だったら服が渇くまでスッポンポンだぜ」


「私の火を乾燥機代わりにしないでよ。何か食いもんよこせよー」


「わーってるって。後で骨付き肉やるから」


 捕らえたオイジーブラザーズの前で、二人はこんな会話をしていた。




 数時間後、全てのハンターを捕らえたシュウたちはギルドに戻っていた。


「じゃあ俺とクリムは依頼を終えたことを報告してくる」


「二人はお風呂に入っててください。いくら乾いたと言っても、風邪をひくかもしれないので」


 と言って、二人は手をつないでカウンターへ向かった。


「相変わらずバカップルだなー」


 二人の後姿を見て、ストブは呆れながらこう言った。その後、クリムに言われた通りストブは風呂場へ向かった。だが、入った瞬間充満している酒の臭いで思わず鼻を抑えた。


「ウブッ、何だこの匂い……」


「おー‼ お前も酒風呂に入りに来たのかー?」


 湯船には酒を持ちこんで飲んでいるティラの姿があった。周囲を見ると、そこかしこに酒瓶が落ちていた。


「お前、まさか風呂場で飲んでるのか!?」


「風呂場で飲んじゃ悪いか? 今日の依頼は私が活躍したんだから、風呂で一杯やってもいいじゃねーの?」


「よくねーよ‼ 私たち以外にも使う人はいるってのに‼」


「全く、騒がしいわよあんたら」


 その時、別の仕事を終えてやって来たクララが風呂場に入って来た。クララはすぐに鼻を抑え、ストブにこう聞いた。


「何やってるのあの人?」


「今日の依頼で活躍したから、自分へのご褒美だとよ」


「全く……何やってるんだか。本当にシュウさんとクリムさんの育ての親なの~?」


 そう言いながらクララは呆れていた。


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