魔の手が迫る‼
翌日、シュガーとクララは外に出て不審なスタッフの情報を得ることにした。
「きっと周辺に逃げ込んだと思うんだよね~」
「私も同じ意見です。ビルから逃げたところを目撃した人がいればいいんですが……」
「根気よく探そう。それじゃあレッツゴー」
シュガーとクララはビル周辺に住む人に不審な人の情報を、ホテルなどで不審な人物が泊まりに来てないか情報を集め始めた。しかし、思うように事は行かなかった。
「やっぱり難しいですね。もう何時間も経ちますのに……」
「そういうもんだよ。欲しい情報はすぐに手に入る事があるし、今回のように手に入らないことがある。諦めないで行こ」
シュガーはクララにジュースの缶を渡し、こう言った。クララは缶を手にし、ふたを開けて飲み始めた。
情報を探し始めて数時間後、シュガーとクララはビルの近くにあるマンションにいた。そこに暮らしている庭師の男性に話を聞くと、その男性は思い出したかのようにこう言った。
「そう言えば、庭の手入れをしてたら、ビルの方から逃げるように走る男がいたね」
「逃げるように……」
この言葉を聞き、シュガーは怪しいと察した。
「どの方向へ逃げたか分かりますか?」
「ドンキーボーデって雑貨屋の方だよ。そう言えば、あの辺りは安いホテルがいっぱいあるから、変な奴が止まってるかもしれないね」
「情報ありがとうございます‼」
「いえいえ、ギルドの人が困ってるんです。手を貸さないと」
その後、シュガーとクララはドンキーボーデ周辺へ行き、聞き込みを開始した。しかし。
「ねえお嬢ちゃん、と~っても可愛いねぇ~」
「俺たちと遊ばないかい?」
そこにはナンパ目的でホテルに泊まっている、ナンパな男たちがたくさんいた。
「すみません、今仕事中なので」
「仕事なんてバカがやるもんだよ。そんなもんほっといて俺たちと遊ぼうよ~」
ナンパ男の一人がクララを無理矢理ホテルに連れて行こうとした。それを見たシュガーが、黒いオーラを出して男の肩を叩いた。
「すみませ~ん、今仕事中なので邪魔をしないでもらいませんか? これ以上変なことをすると……その崩壊した顔面をもっと崩壊させてやろうか?」
シュガーはどこからか持って来たか分からないが、物騒な刃物を持ってこう言った。それを見たナンパ男たちは命の危機を察し、悲鳴を上げて逃げ去った。
「あ……ありがとうございます」
「ああいうナンパ野郎はこうやって追い払うのが正解だよ。今度、仕事の邪魔をしたら魔力を開放して追い払えばいいよ。それでも話を聞かなかったらおしおきで」
「流石にそれは……まぁいいや。情報を集めましょう」
会話後、シュガーとクララは再び情報を集め始めた。安ホテルの一つに話を聞くと、そこの従業員が何かを思い出しながらこう言った。
「そう言えばうちに泊まっている人の一人が昨日、慌てて戻ってきたなー」
「慌てて?」
「うん。そうだ、そのお客さんとても迷惑な奴なんだよ。体臭は酷いし、ベッドの上は変なティッシュが乱雑してあるし、それに部屋にいる時はシュルの曲が大音量で流れてくる。うるさいって抗議しても、シュルさんの曲を馬鹿にするとは何事だって言って話を聞かないし。ほんと、早くチェックアウトしてほしいんだよねー」
この言葉を聞き、シュガーとクララはこの人物がストーカーかもしれないと思った。クララはその従業員に近付き、こう聞いた。
「今、その人はどこにいますか?」
「朝からいないよ。まだ泊まるみたいだよ……」
その言葉を聞き、シュガーとクララはありがとうございますと頭を下げた後、急いでメシンギャンプロダクションのビルへ戻って行った。
同時刻、シュルのストーカーはビルの従業員の服を奪い、シュルを探していた。歩いていると、別の従業員が声をかけてきた。
「おい、お前の働き場所はここじゃねーぞ」
「え‼ あの……その……すみません、どこで働くか忘れてしまいました。それと、自分シュルさんのスタッフで……」
「はぁ? シュルさんのスタッフ? お前知らねーのか、今バカップルのシュウさんとクリムさんが徹底的にシュルさんを守るために、一部のスタッフにしかシュルさんは近付けねーぞ。朝礼聞いてなかったのか?」
「そ……そうなんですか……失礼します」
ストーカーはそう言って去ろうとしたが、その従業員はストーカーの肩を掴んでこう言った。
「怪しいな。ちょっとこっちに来い‼」
怪しまれたと思い、ストーカーは従業員の腕を振り払って逃げ始めた。
「あ、待てこの野郎‼」
それから従業員とストーカーの追いかけっこが始まった。しばらく走るうち、ストーカーは近くにあった部屋に忍び込み、そこのバスルームに入った。
「どこへ行った? くそー、見失ったか……」
ストーカーの後を追っていた従業員の声が聞こえた。何とか正体がばれずに済んだと思いつつ、ストーカーは部屋から出ようとした。しかし、外から別の声が聞こえた。
「それでは先輩、シュルさんの着替えをするのでちょっと待っててください」
「ああ。誰か来ないか見張ってるよ」
「お願いします」
この声を聞き、ストーカーは心の中で喜びの声を発した。今潜んだこの部屋に、シュルが入って来たからだ。