不審者に気付け、戦士たち‼
防災ベルが鳴り響き、悲鳴を上げながら逃げまとう人々の声が聞こえる。混沌渦巻く中、シュルのストーカーはまんまとシュルに近付くことに成功した。スタッフと同じ服装をしているためか、シュルの周りにいるシュウたちも自身がストーカーであり、今回の騒動の張本人であることを知らない。
クヒヒヒヒヒヒ、今がチャンスだ。
ストーカーはそう思い、シュルに近付いて手を伸ばそうとした。だが、シュウがその手を掴んでこう言った。
「シュルさんは俺たちで守ります。スタッフの皆さんは早くどこか安全な所へ‼」
チッ、またしても邪魔をしやがって。
ストーカーは心の中で舌打ちをし、渋々シュウの言う事を聞いた。その後、ストーカーを含めたスタッフは皆外に出る事が出来た。それから、少し遅れてシュルを囲んだシュウたちも外に出てきた。
「クリム、今から中を調べに行くが一緒に来てくれるか?」
「はい! 先輩と一緒ならどこでも行けます~‼」
その後、バカップルはシュルの事をシュガーとクララとハインドに任せ、メシンギャンプロダクションのビルの中へ戻って行った。ストーカーは去って行くバカップルを見て、ここはひとまず逃げようと考え、身を隠しながらばれないようにその場から離れた。
バカップルはビルの中に戻り、防災ベルが鳴った原因を調べていた。
「火事や煙は発生してませんね」
「誰かがわざと押したに違いないな」
シュウはこう言うと、クリムは少し考えてシュウに話した。
「嫌な予感がします。すでにストーカーがここにいる可能性が大きいです」
「スタッフに紛れてる可能性があるな」
「はい。先ほど、避難している最中にシュルさんに手を伸ばすスタッフがいましたね」
「俺たちが守ってるって分かってるのに、どうして伸ばしたか……」
「あいつがストーカーかもしれませんね」
「ああ。誰かがわざとベルを押したようだし、外に戻ってシュガーたちと合流しよう」
会話を終え、バカップルはすぐにシュガーとクララの元へ戻った。
「お疲れ、何かあった?」
バカップルの姿を見たシュガーが声をかけてきた。クリムはすぐに誰かがわざと鳴らしたと伝え、クララの方を見た。
「クララ、この辺に変な動きをしたスタッフはいなかった?」
「実は、少し太ったスタッフが草むらの方に向かって移動してるのを見たわ。すぐに追いかけたかったけど、シュルさんを守らないといけなかったから……」
「分かった。どの辺に逃げた?」
「あっちよ」
クリムはすぐにクララが伝えた草むらへ向かうと、そこには脱ぎ捨てられたスタッフの服があった。
「やはりスタッフに変装してましたか……」
そう呟いてクリムは周囲を見回したが、もう怪しい人物はいなかった。その後、クリムはそのスタッフの服を持ってシュウたちの所へ戻った。
「やはりスタッフに変装してました」
「もう逃げたようだな」
「今度現れたら私が相手になるよ~」
と、シュガーは紫色の液体が入った水筒を取り出してこう言った。それを見たクララは恐る恐るこう聞いた。
「何が入ってるんですか?」
「それはね……飲んでみてのお楽しみ~」
クフフと笑うシュガーを見て、クララは恐怖を覚えた。
その日の夜、シュウたちはシュルと共に同じ部屋にいた。ストーカーが近付いてきた以上、少しでも目を離すわけには行けないとクリムが言ったからだ。
「ごめんなさい、いくら護衛でもこんな大人数で寝泊まりする事になってしまって」
「いいえ、自分の身が狙われているんです。承知してます」
頭を下げるクリムに対し、シュルは大丈夫と笑みを見せてこう言った。そんな中、シュウが部屋に入って来た。
「もうビル周辺に変な奴はいない。俺は別室で異変が無いように見張るよ」
「分かりました。本当は私も先輩と一緒の部屋でイチャイチャしながら見張りをしたいのですが、女子は女子で、男子は男子で部屋わけになってしまいましたから……」
「これが終わったら思う存分イチャイチャしようぜ」
と、シュウはクリムにこう言うと、クリムは黄色い歓声を上げながらシュウに抱き着いた。バカをやってるバカップルを見て、呆れてこう言った。
「さっさとシュウさんは元の部屋に戻ってください。シュルさんの見守りは私たちでしますので」
「分かった分かった。じゃ、また来るよ」
と、シュウが外に出ようとしたその時だった。
「あの……ちょっといいですか……」
シュルが声を出してシュウを引き留めたのだ。その声を聞き、シュウとクララは驚いてその場に立ち止まり、クリムの額には青筋が浮かんだ。
「クリムちゃん、ちょっと落ち着こうね」
シュガーはそういってクリムの尻を掴んだ。
「ぴぎゃああああああああああああああああ‼ シュガーさんお尻を掴むのは止めてください‼ これで何度目ですか!?」
「クリムちゃんを落ち着かせるためにはこれが一番なんだよね~」
シュガーはこう言った後、シュルはもういいかなと思い、話を続けた。
「シュウさんもこの部屋にいてくれませんか? ちょっと不安なんです……頼れる男の子が一人いれば、大丈夫かなって……」
この言葉を聞き、クリムは少し迷いながら、再びシュウを部屋に入れた。クリムは思った。確かにシュウがいれば安全性が増す。しかし、それ以前にシュルはシュウに気がある。変なことが怒らなければいいが。と、クリムは思っていた。