不審な出来事
依頼を受けたバカップルたちはすぐにメシンギャンプロダクションへ向かった。移動中、クリムはハインドからシュルのスケジュールを確認していた。その横にいたシュガーとクララはのぞき込むようにスケジュール表を見た。
「うわー、スケジュールがいっぱい」
「休む暇がありませんね。いつ休んでいるんですか?」
「シュルさんはいつも車の中で眠っています」
「酔わないんですかね?」
「ええ。いつも寝てるせいで酔わないと言っています」
「すごい人ですね」
クララは感心したようにこう言った。クリムは助手席に座るシュウにスケジュール表を渡し、話を始めた。
「相手はどのタイミングで狙ってきますかね」
「うーん、下手なスナイパーなら車の移動中に狙わないだろう。狙うとしたら、スタジオかプロダクションに着いた時。車から降りた直後を狙う可能性があるな」
「ほう。では、先輩並みの腕のスナイパーなら車を狙うこともあり得ますね」
「それもそうだが、下手な奴でも車のタイヤを狙ってパンクさせて、そのパニックに紛れて撃つこともできる」
「その通りですね」
バカップルの話を聞いていたクララは、あまりに真面目な話をしていたため、少し驚いていた。
「真面目に仕事をするときはするんだけどねー」
「ほんと、いつもこうだったらいいんですけど」
クララは真面目に話をするバカップルを見てこう答えた。
数時間後、バカップルたちはメシンギャンプロダクションに到着した。クララは心臓をバクバク鳴らしながら車から降りた。
「あのシュルさんと会うんだ。うわー、もうちょっといい服買えばよかった」
「仕事で来てるんだよー。私なんて普段着で来てるよー」
と、シュガーはクララに自分が着ている服を見せびらかすようにこう言った。クララはそうですねと言った後、バカップルの姿を探した。
「あれ? あの二人は?」
「先に向かってるよ。イチャイチャしながら」
シュガーは入口の方を見て、恋人つなぎでイチャイチャしながら歩いているバカップルを見ながらこう言った。
クララは呆れながらビル内に入り、シュガーと共にバカップルの後について行った。
「こちらにシュルさんがいます」
扉の前でジッギールが立ち止まり、扉をノックした。中からどうぞと声がした後、シュウがドアノブを回して中に入った。
「失礼します。ハリアの村のギルドから来たシュウ・グリーヴです」
「お話は聞いています。私の護衛をするんですよね」
クララは中にいたシュルを見て、声を上げた。その声を聞き、バカップルやシュガー、シュルは驚いた。
「す……すみません。有名人が目の前にいたので……」
「この子、新入りなんです」
シュガーはクララの頭をなでながら説明をした。その後、シュウたちは自己紹介をした後、手紙の事を聞いた。
「あの手紙が届いた後、何か被害がありましたか?」
「特に何も。ただ、プロダクションの方にいろいろと変な手紙が来たんです。それと、鍵を無理矢理開けようとしたとも話を聞きました」
「その辺は話を聞きました。どうやら輩は、何としてでもあなたの住所などのプライベートな情報を手に入れ、あなたに近付こうとしています」
「下手したら、あなたの命が狙われている可能性もあります。今日から俺たちが守りますので、ご安心ください」
シュウがこう言うと、シュルは安堵したような表情を見せた。
バカップルたちは仕事へ向かうシュルと共に行動していた。車に入る前に、バカップルは車を調べた。
「何をしているんですか?」
「変な輩が車に変な仕掛けをしていないか調べています」
「ストーカー気質の奴は、好きになった人のどんなことでも知りたがります。頭のねじがぶっ飛んでいると、それ以上に変なことをするかもしれません」
バカップルは車を調べ終えた後、シュガーとクララにシュルを守るように車に乗ってくれと伝えた。
その後、車に乗ってシュルの仕事場へ向かった。車の中では、女子がキャッキャウフフと話をしていた。
「あの、シュルさんって男性ですか? 女性ですか?」
「すみません。一応ミステリアスなアイドルとしてやっているので、ギルドの戦士の皆さんにも伝えることはNGと言われてるんです」
「それじゃあお風呂とかトイレとかどうしますか?」
「守る時大変ですよ~」
「大丈夫です。私はいつも自室かプロダクションにある専用のトイレとバスルームを使います」
この話を聞いたシュウは、横にいるクリムにこう言った。
「アイドルも大変だなー」
「そうですねー。ファンがたくさんいるから、こうやって好きな人とイチャイチャできないですし」
「いたらいたで週刊誌の話のネタにされるしな」
と、バカップルはイチャイチャしながら話をしていた。シュルはバカップルを見て、シュガーにこう聞いた。
「噂でかなりのバカップルと聞いていましたが、本当にバカップルだったんですね」
「そうだよー。この二人のおかげでハリアの村は大賑わい。二人を見るためにいろんな所からハリアの村にやって来るんだよー」
「へぇ……」
シュガーの話を聞きながら、シュルはシュウの方を見つめていた。その視線を見て、クララはある事を思った。この人、実は女性なんじゃないかと。