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女性の怒り

 フレイオは馬鹿な事をしたと自分で思った。尻の治療など本当に人の気のない所か男子トイレですればよかったと思っていた。


「くたばれ変態野郎‼」


「死ねェェェェェェェェ‼」


「変なもん見せないでください‼」


「塵も残さん‼」


 クリムを含むギルドの女性陣はフレイオに対し、怒りの猛攻撃を仕掛けているのだ。フレイオは悲鳴を上げながら逃げている。その前にちゃんとズボンを装備したのだが、それでもクリムたちの怒りは収まらなかった。


 しばらく走っていると、クリムたちが折ってくる気配が消えた。完全に逃げ切ったと思ったフレイオは安堵の息を吐き、携帯電話を使って部下と連絡を始めた。


「もしもし俺だ、フレイオだ。緊急事態発生。すぐにアジトに戻るぞ」


『あの……フレイオさん……』


 電話の向こうの部下の声は、どこか元気のない声をしていた。それを気にしたフレイオは部下に質問をした。


「どうした? 元気ないじゃねーか。ボランティア活動でばてたか?」


『す……す……すみません』


 と、部下は涙声で謝罪した。どういうことか分からないフレイオはどういう意味だと聞こうとした。だが、すぐに部下の謝罪の理由が分かった。


「ね、言ったでしょ。部下をとっちめればすぐに居場所がわかるって」


「クリムの言うとおりね。こういう時の頭の回転は本当に早いわね」


「流石クリムお姉ちゃん。私たちより頭の出来が違うよ」


 フレイオを見下すかのように、クリムとクララとリナサが立っていた。三人の姿を見て、恐怖を感じた。それと同時にどうして自分の場所が分かったのか、自分たちの部下がどうなったのか理解した。


「ま……まさか……」


「ええ。あなたを追いかけなかったのはあなたの部下を全員倒すため」


「いずれ部下があなたの携帯に連絡をします。その時携帯を逆探知して居場所を探ればあなたの場所は分かります」


「厄介なことを使うな……」


「悪人を倒すためだよ。その為にはどんなことだってする」


「それが私たち……」


「ギルドの戦士です‼」


 クリムたちはそう言うと、一斉にフレイオに攻撃を仕掛けた。フレイオは悲鳴を上げながら逃げ始めたが、後ろから後を追うようにクリムたちが迫ってきた。だがしかし、前から武器を持ったナギとフィアットが迫って来た。


「見つけたわ‼」


「皆、露出狂を見つけたわ‼ 今すぐにこっちに来て‼」


 フィアットは携帯電話を使って他のメンバーを収集した。その数秒後、上空からストブとヴァーナ、ドゥーレが襲ってきた。


「焼き尽くしてやらァァァァァァァァァァ‼」


 ストブの炎がフレイオを襲った。


「ギャアアアアアアアアアアアア‼」


 炎を喰らい、フレイオは悲鳴を上げながら火が付いた服を脱ぎ始めた。その隙を狙い、ヴァーナが電撃を発した。


「喰らえ変態‼ 必殺、変態を葬る漆黒の電‼」


「助けてェェェェェェェェェ‼」


 電撃を喰らったフレイオは感電しながら地面を転がった。だが、次第に彼の体は地面の感覚を感じなくなった。


「あれ? どうなったの俺?」


「飛んでるんだよー」


 ドゥーレの言葉を聞いたフレイオはなんのこっちゃと思ったが、周りを見てすぐに状況とドゥーレの言葉の意味を把握した。今、フレイオは本当に空を飛んでいるのだから。


「あれ? 俺なんで飛んでるの?」


「私が飛ばした」


 ドゥーレがこう言うと、フレイオはそのまま落下した。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」


 フレイオの絶叫が上から聞こえてくる。クリムたちは落下地点を確定し、魔力を開放していた。


「さーて、奴の姿が見えたら一気にぶっ放しますよー」


「りょうかーい」


 殺意満々の女性陣を見て、シュウたち男性陣は後ろに避難していた。この後発生するであろう大惨事を予測しているのだ。


「父さん、女って怖いね」


「ああ……私もそう思う」


「誰だってそうだよ。力がある奴を決して怒らすな」


 シュウとタルトとボーノがこんな話をしていると、落下してくるフレイオの姿が見えた。


「来ました‼」


 クリムの合図と共に、女性陣は一斉に魔法を放った。そのせいで、フレイオは再び宙へ舞って行った。




 ボランティアの代表はシュウたちの前にやって来てお礼を言っていた。


「ありがとうございます。これで火事場泥棒はなくなりました。それで……これからも出ないでしょう」


 と、包帯まみれで担架に運ばれているフレイオを見てこう言った。タルトは苦笑いでごまかしているが、クリムは少しうつむいていた。


「少しやりすぎちゃいました」


「少しばかりじゃねーよ。やりすぎだよ」


 呆れたスネックがこう言っているが、シュウはクリムを抱きしめてこう言った。


「俺のクリムに変な物を見せつけたんだ。本来は俺がもっと半殺しにしてるけど、今回はあれでいいにしてやる」


「せんぱーい」


 クリムはシュウの名を呼んで抱き着いたが、スネックはいちゃつくバカップルを見てさらに呆れた。クララはイチャイチャしているバカップルを見て、こう言った。


「あれが無ければ本当に心強いのに……」


「ま、終わったんだしいいじゃなーい?」


 ドゥーレは欠伸をしながらクララにこう言った。とまぁ、そんな感じでシェラールの火事場泥棒の事件はバカバカしい雰囲気の中、幕を閉じた。


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