シュウに惚れたお嬢様
黒装束の襲撃から数分後、クリムとシュガーは屋敷の地下室にいた。そこには、ぎっちぎちに縛られた黒装束が横たわっていた。
「治療は終わりましたよー」
シュガーはクリムにそう伝えると、クリムは黒装束に水の魔法をかけて無理矢理目を覚まさせた。
「なっ!? ここは……」
「屋敷の地下室です。防音仕様なので、あなたがいくら助けを呼んでも誰も来ませんよ」
「それに、仲間を呼ぶための端末もこっちにありますので」
と、シュガーは黒装束が持っていた端末を見せびらかすように黒装束に見せた。
「返せ‼」
「いーやでーすよー。返してほしければ、私達の質問に答えてください」
「ふざけるなよ小娘共が‼ 大体、貴様らのような小娘が俺に話を聞け出せると思っているのか?」
「はい」
クリムは返事をすると、火の魔法を発し、黒装束の尻をあぶりだした。
「ぎゃああああああああああああああ‼」
「お望みなら、急所の方も焼きましょうか?」
「それはやってはいけない‼」
「じゃあ私達の言う事に答えてください」
クリムは笑顔でこう言った。
数分後、ハーゼの部屋に戻って来たラックは、ベランダ近くにいるシュウに話しかけた。
「シュウが倒したスナイパーは僕が連れてきた。クリムさんとシュガーさんが拷問してるっていうから、そこに連れて行ったよ」
「なら、話を聞けるのも時間の問題だな」
シュウはクリムとシュガーがどんな拷問をしているのか想像し、顔色が青色になった。その時、ラックはハーゼがシュウに抱き着いているのを目撃した。
「なんだかシュウに懐いたようだね」
「みたいだな。今はぐっすり眠っているし」
「ベッドに連れて行けばいいのに」
「起こしちゃまずいだろ。しばらくここにいるよ」
その時、拷問を終えたクリムとシュガーが部屋に戻ってきた。
「せんぱーい‼ 情報を聞き出せました……よ……」
クリムはハーゼがシュウに抱き着いて寝ている所を見て、顔面が真っ白になっていた。目も白目をむいていて、体中震えだしている。
「クリムちゃん、大丈夫~?」
と、シュガーが訪ねた瞬間、クリムは奇声を上げた。
「ピギェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼ 私以外の女が‼先輩の腕の中で‼眠ってるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‼」
「クリムちゃーん。そんな奇声あげるとハーゼ様が起きちゃうよー」
シュガーはこう言ったが、クリムの耳には届かなかった。クリムの奇声を聞いたせいで、ハーゼは目を覚ましてしまった。
「あ……あんたら、用は終わったの?」
「終わりましたよ‼ 全くもう、先輩は私と付き合ってるんですから、離れてください‼」
「嫌よ。私決めたの、護衛はこの人だけで十分。あんたらは適当にその辺をぶらぶらしてなさい」
この言葉を聞き、クリムの理性がぷつんと切れた。
「このクソガキ、カラスの爪とかいう裏ギルドが手を出す前に私がやってやろうか?」
「落ち着いてクリムちゃん。それ、ギルドの戦士が言うセリフじゃないよー」
シュガーはクリムの尻を掴み、無理矢理その場に座らせた。ラックは怒り爆発して我を忘れているクリムに近付き、こう言った。
「とにかく、今はハーゼ様を守る事に集中しないと。それまではシュウと……」
「嫌です‼ 私、寝る前は先輩とイチャイチャしないと寝れないんですよ‼」
「俺もそうだ。最近クリムと一緒に寝てるから、傍にクリムがいないと落ち着かないんだ」
「シュウ君は黙ってて~」
と、シュガーは変な物を見るような目で、会話に割り込んだシュウを睨んだ。そんな中、ハーゼはシュウに立ち上がるように伝え、そのままシュウに抱き着きながらこう言った。
「じゃあ私はそのままシュウさんに屋敷の案内をしますので、皆さんはその辺でぶーらぶーらとしてなさい。それではご機嫌よ~」
「あの、その」
「こいつらはほっておいて行きましょう」
ハーゼは無理矢理シュウを連れて、部屋から去ってしまった。ハーゼは部屋から去る前に、クリムを見てざまあみろと言わんばかりに舌を出した。その態度を見て、更にクリムの怒りは激しくなった。
「あのクソガキああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
その後、ラックとシュガーは怒りで我を忘れているクリムの動きを封じ、ハーゼが狙われている理由を調べ始めた。
「ハーゼ様が狙われる理由ですか」
ゲアルなら何か知っていると思い、二人はゲアルに尋ねていた。
「……心当たりがあるとすれば、前当主のペターオ様のご親族、スリラータが怪しいと私は思います」
「スリラータ?誰で すかそれ?」
「ご親族と言っても、かなり離れた親戚です。この人がコエッリオ家の次の当主は自分にふさわしいと言っていましたが……実際はペターオ様の娘である、ハーゼ様が選ばれたんです」
「指名されたんですか?」
「はい。ペターオ様がご存命の時に、こうおっしゃったんです。自分が亡くなった後は、娘であるハーゼに任せると。それで、私がまだ幼いハーゼ様をサポートするように言われたんです」
話を聞き、二人は遠い親戚であるスリラータが怪しいと睨んだ。話を聞き終えた後、二人はハーゼの部屋へ向かっていた。この話をシュウとクリムに聞かせるためだ。
「やっぱり、スリラータって人が怪しいよね~」
「ハーゼ様を暗殺し、自分が当主になるつもりだ。他の候補もいるだろうけど……」
「皆この家を継ぐ気ないんじゃない?いろいろとめんどくさそうだし」
「だね。金持ちは金持ちなりの問題を抱えてるんだよね」
そんな会話をしていると、ハーゼの部屋から怒号が聞こえてきた。
「クリムちゃん……」
「全く……何してるんだか……」
怒号を聞き、二人は呆れながら部屋へ入った。