復興の裏で暗躍する者
シェラールのギルドの前に到着したシュウ達だったが、バカ騒ぎするストブ達を収めていたジャックとクララの顔には、すでに疲れの色が見えていた。それを見たヴァーナは、恐ろしそうにこう言った。
「二人から疲れの影が見える。まさか、我らが知らないところで暗躍する者の呪いを」
「あんたらのせいよ‼」
プッツンしたクララは、ストブとヴァーナの頭に拳骨を入れた。
「あ……が……」
「イッテェ~……クララ、拳骨は止めてくれよ。お前の拳骨は恐ろしいんだからさ……」
「手を出すような馬鹿な事をしたからでしょうが。全くもう」
クララが呆れる中、タルトが入口の方までやって来た。
「父さん久しぶり」
「そうだなシュウ。クリムちゃんもジャックさんも元気そうで。他の皆は?」
「相変わらず元気ですよ」
と、ジャックは笑いながら話をした。タルトはシュウ達の後ろにいるストブ達を見てクリムにこう聞いた。
「彼女たちがクリムちゃんのお友達かい?」
「そうです。今頭を押さえて痛がってるのがストブとヴァーナ。呆れて立っているのがクララ。で……あれ? ドゥーレは?」
クリムは辺りを見回しながらドゥーレを探すと、上の方からナギの悲鳴が聞こえた。
「何があった!?」
「分からないけど、俺も行くよ‼」
シュウとタルトは大急ぎでエイトガーディアンの部屋へ向かった。シュウは扉を叩き、大声で叫んだ。
「シュウです‼ 何がありました!?」
「シュウさァァァァァァァァァァァァん‼ 見知らぬ女の子が急に下から現れて……」
と、着替え途中のナギが現れてシュウに抱き着いた。話を聞いたシュウはため息を吐き、窓の外へ行った。
「何やってんだドゥーレ?」
「このギルドがどれだけ高いかなーって」
「見ればわかるだろ……クリムやクララにどやされるぞ」
「そんな事よりシュウさ~ん、私の格好を見て何とも思わないんですか?」
ナギは身に着けている下着をシュウに見せびらかすようにしたが、シュウは近くにあったタオルをナギにかけた。
「そんな格好だと風邪ひくぞ」
「ええ~……もうちょっと何か反応するかと思ったんだけど」
「先輩は私にしか見ないんですから。いくら色仕掛けしても無駄ですよ」
と、クリムが部屋に入って来てナギにこう言った。外の廊下では、ジャックとタルトが呆れて同時にため息を吐いていた。
「そちらもお変わりないようで」
「ああ……全くナギは……はぁ」
その後、エイトガーディアンの部屋に集まったシュウたちは、復興の裏で動いている裏ギルドの話を始めていた。
「ねぇキャニー、私たちがここに来るまでの間、何か情報はあった?」
リナサにこう言われ、キャニーは手元の資料をリナサに渡した。それから、同じ資料をシュウたちにも配った。
「裏で動いているのはシーフパラダイスという盗人の裏ギルドです。こいつらは復興作業をしていると見せかけ、金目の物を奪っています」
「復興しているふりをして盗みをするなんて、とんでもない奴らですね」
クリムは少々苛立ちながらこう言った。その時、ヴァーナが大声で笑い始めた。
「この不届き者を我の雷で処罰すればいいのだろう? 簡単な仕事だな。こんな連中まとめて全員我の雷で黒き灰にしてくれるわ‼」
「えーっとヴァーナでしたっけ? シーフパラダイスは盗人の裏ギルドの中でも規模が大きいギルドです。少なくとも復興作業中に百人ほど奴らの下っ端がいると思ってください」
「百……とんでもねー数がいるな」
「だから皆さんを呼んだのです。まぁ、クリムさんのお友達が来るとは思ってもいませんでしたが」
キャニーはメガネの位置を直しながらシュウに話した。キャニーは咳ばらいをすると、話を続けた。
「これから私たちは個別に分担して復興作業に入ります。もし、不審な動きをする人物を見かけたら、すぐに行動に移してください」
「じゃあ、すぐにバーンってやってもいいの?」
ドゥーレの言葉を聞いたキャニーは、慌てて返事をした。
「いけません。その人がちゃんと裏ギルドの人間かどうか確かめてからやってください」
「めんどくせーなー。もういっその事怪しい連中全員ぶっ倒して捕まえて、あれこれして話を聞きだせばいいじゃねーか」
「話を聞いてたの!? ちゃんと調べてからじゃないと動けないって‼ ただ怪しいだけで攻撃しちゃいけないのよ‼」
クララは怒声を上げながら、ストブの頭をぐりぐりし始めた。
「あああああああああああああああああああああああ‼ それは止めて、余計馬鹿になっちゃう‼」
「これ以上あんたが馬鹿になる事はないわ。だから安心しなさい‼」
「安心できない‼」
ストブとクララのやり取りを見るボーノはクリムに近付き、やり取りを見ながらこう言った。
「すごい子だな……こんな会議の場であんなことをできる度胸があるとは……」
「いえ、ストブとヴァーナが馬鹿なだけです。腕は確かなのですが」
クリムはため息を吐きながら、ボーノの質問に答えていた。そんな中、シュウは動じていないドゥーレを見て近付いた。
「おいドゥーレ? さっきから全然動いてないけど大丈夫……ん?」
ドゥーレの体はさっきから動いていなかったのだ。不信感を持ったシュウはドゥーレの顔を覗き、ため息を漏らした。
「まぶたに目を書くなよ……寝てるってのがバレバレだぞ」
ドゥーレのまぶたには目らしきものが描かれていた。それでドゥーレは自分が寝ていることをごまかしていたのだ。この光景を見たタルトは、かなり不安な気持ちになっていた。