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バカップルが相手だから

 メッズーニの様子を見ていたクララは、呆れ果ててため息を吐いていた。


「どうしたクララ? そんな大きなため息を吐いていたら幸せが逃げるぞ」


 雑魚の片づけを終えたストブがクララに近付いてこう聞いた。


「あの人の様子見た?」


「ああ。自ら色仕掛けをかけて部下のやる気を上げるとは、とんでもない変態だな」


「そこじゃないわよ。クリムとシュウさんを相手にするって分かった時の顔。かなり困惑してたのよ」


「そうか。じゃああの二人には敵わないな」


 ストブはこう言うと、大きな欠伸をしてクララにこう言った。


「雑魚の相手は終わったから、私は先に戻る。眠い」


「まだ終わってないわよ。寝るのは後でね」


 戻ろうとしたストブの襟を引っ張り、クララは元の位置へ戻った。




「いいいいいいいいいいいいいいいいいやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」


 メッズーニは大きな悲鳴を上げながら、バカップルとヴァーナの攻撃をかわしていた。


「助けて、ちょっと待って、誰か助けて‼」


 逃げながら叫び声を上げていたが、その声を聞く者はいなかった。何故なら、全員ストブとドゥーレがメッズーニの部下を倒してしまったから。


「さぁ、大人しくしなさい!」


「今なら軽く怪我をするだけで済ましてやる」


 バカップルはこう言っているが、クリムは魔力を開放して炎や氷、雷や風はもちろん、光と闇を放って攻撃しており、シュウもアサルトライフルを的確な場所に撃ちながら攻撃していた。立ち止まったら軽い怪我で済まないことをメッズーニは察していた。


「ちょっとあんたら、少しは手加減してよ‼ 私も魔法使いだけど、あんた達みたいに強くないから‼」


 そう言った直後、上からヴァーナの電撃が襲ってきた。


「アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス‼」


「運のいい奴め。我の全てを無にする慈悲無き(オールデリートライト)をかわすとは」


「ただの雷でしょうが‼」


「違う‼ すべてを無にする慈悲無き光だ‼」


「ああもうややこしい‼」


 ヴァーナにツッコミを入れていると、バカップルの猛攻がメッズーニを襲った。


「いやああああああああああああああああああああ‼」


「さぁ覚悟しなさい‼」


「大人しく捕まった方が身のためだぞ」


 攻撃をかわしたのだが、転倒して倒れているメッズーニに対し、バカップルは近付いてこう言った。すでに次の攻撃の準備を済ませており、下手な動きをしたらすぐにドッカンやるだろうとメッズーニは思った。


「……すみましぇぇん……もうしましぇぇん……」


 泣き声を上げながら、メッズーニは土下座のようなポーズをしてバカップルに謝った。


「かなり深く頭を下げているな」


「情けない姿ですね」


 バカップルの言葉を聞き、メッズーニはにやりと笑った。この女、わざと戦意がないふりをし、バカップルを欺いて逃げるつもりなのだ。


「かかったな間抜けが‼ 煙玉をくらぇい‼」


 メッズーニは懐に隠し持っていた煙玉を地面に叩きつけ、周囲に煙を発した。かなり強い煙なのか、少し離れた所にいるクララ達にも被害が及んだ。


「何これ!?」


「きゃあ、先輩‼」


「うわぁっ‼」


「卑怯な真似を‼」


 シュウ達が怯んでいる間、メッズーニは笑いながら猛スピードで走って逃げて行った。


「あーっはっは‼ あばよ間抜け共‼ できればもう二度と会いたくありましぇぇぇぇぇん‼」


 ドゥーレが風を発し、周囲の煙を飛ばした。辺りが確認できるようになってから、シュウは周囲を見回してメッズーニの姿を探した。


「あの女、もう逃げやがった」


「悔しいです。初めてボスを取り逃しました」


「でもま、奴はぼっちになったし、これ以上悪さをすることはねーだろ」


 ストブは周囲に倒れているメッズーニの部下を見て、シュウ達にこう言った。その後、シュウ達はメッズーニの部下達を捕まえ、地元の警察へ送った。




 翌日。ハリアの村に戻る車の中でストブ達は話をしていた。


「ちっくしょー、依頼には成功したけど、ボスを逃しちまったなー」


「仕方ないわ。でも、これでメッズーニも悪さをすることはないでしょう」


「また奴が暴れたらシュウとクリムが暴れればいいし」


「他人任せですか……」


 ドゥーレの言葉を聞いたクリムは、呆れてこう言った。その時、車の後部座席に座っているヴァーナが叫び声を上げた。


「感じる……我の中で暴れる強い何かが……」


 と言っているが、ヴァーナの顔は真っ青になっている。


「沈めてくれ……我の中で暴れる得体の知らぬ衝動……助けて……マジで助けてください。気持ち悪い」


「全くもう‼ あんたは車に酔いやすいからあんまり後ろに座らないって言ってるでしょ‼」


「クララ、私が治療をしますよ。昔からこの体質は変わらないわね。ヴァーナ」


「すまないクリム。お前ももっと車内でシュウとイチャイチャしたかっただろうに……」


「それもそうですが、苦しんでる人を見逃せません」


 クリムがこう言うと、シュウが慌てて酔い止めを用意した。


「これ飲んどけ。楽になるぞ」


「すまない……」


 シュウから薬を受け取ろうとした時、ヴァーナの顔の色が更に青くなった。その後、車内からクリム達の慌てる声が響いた。


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