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銀行を守れ‼

 翌日、ストブ達はバカップルと共にギルドカウンターへ来ていた。新しい依頼がないか調べているのだ。


「うーん……どれもこれも薬草探しとか小物のモンスター退治とかそんなもんしかねーなー……もうちょっと派手な依頼とかねーのかよ?」


「ありませんよ。そういう依頼は滅多にしか来ませんよ」


 クリムはストブに向かってこう言った。そんな中、ドゥーレが一枚の依頼表を持ってこう言った。


「面白そうな依頼があったよ」


「ほうほう、禍々しい草を所望する者の依頼か……クックック……感じるぞ、この依頼主から闇のオーラが‼」


「そんなの感じるわけないでしょ。それに、禍々しい草ってただの薬草じゃないの」


 クララはヴァーナに向かってこう言った。朝からうるさいチュエール組の話が響き渡る中、電話が鳴り響いた。


「はい。こちらハリアの村ギルドカウンターです。え? クリムさんとシュウさんに依頼ですか?」


 受付嬢の言葉を聞き、バカップルが反応したが、それより先にストブが反応した。


「なぁ、何でお前ら二人に依頼が来るんだ?」


「有名になったからでしょ。だから滅茶苦茶強いクリムとシュウさんに依頼を頼むから、そうとう難しい依頼なんでしょ」


「クララの言うとおりです。きっと何か大きな事件が裏で発生したんでしょう」


 その後、受付嬢がバカップルに近付いて声をかけた。


「クリムさん、シュウさん。ドンダーケ銀行から護衛の依頼です。話は直接支部長が来ると言っていますが、お時間は大丈夫でしょうか?」


「ええ。大丈夫です。いつ頃来ますか?」


「予定だと、今日の昼前に来るそうです。それでは、予定は大丈夫と伝えておきます」


「分かりました。お願いします」


 クリムと受付嬢の話を聞いたストブは、目を輝かせながらクリムに近付いた。


「なぁ、何か難しそうな依頼だから、私達が手伝おうか!?」


「え? 面子の中に私も入ってる?」


 クララは冷や汗を流しながらストブに聞いた。


「当たり前だろ。初めての依頼なんだし」


「ちょっと待ってよ、こう言うのは最初からは軽い物から……」


「よし決まり‼ それじゃあ私達も支部長って人が来るまで待とうぜ‼」


 勝手に話を進めたストブは鼻歌をしながら去って行った。シュウは去っていくストブを見ながら、クリムにこう聞いた。


「勝手にどうこうするって話になってるけど……いいのか?」


「仕方ありません。今回だけは特別という事にしておいてください」


 クリムはシュウにこう答えると、大きなため息を吐いた。




 数時間後、バカップルとストブ達は待合室で待機していた。しばらくしたらドンダーケ銀行の支部長が来ると連絡があったのだ。


「そろそろ来ますかね」


「昼前に来るって言ってたし、そろそろだな」


 と、バカップルはイチャイチャしながらこんな話をしていた。ハリアの村のギルドの戦士はこの光景を見慣れているため、ツッコミをしていなかったのだが、クララは頭を抱えながらこう言った。


「仕事中にイチャイチャしないでくれる? こっちのやる気が何か……減って来るわ……」


「だったら筋トレしようぜ‼ クララ、お前も一緒に腕立てするぞ‼」


 部屋の中で筋トレをしていたストブは、無理矢理クララをソファーから立たせて筋トレをさせようとしていた。その光景を見て、ドゥーレが呟いた。


「クララが立った」


「そのフレーズはまずいって」


 シュウがこう言うと、何かを感じたヴァーナが突如立ち上がって叫び始めた。


「このセリフはまずい‼ 現実と言う異世界においてそのセリフはある作品のある場面で使われた……」


「うるさいから黙ってなさい。廊下にいる人が入れないでしょ」


 クララはヴァーナの口を閉ざし、外に向かってこう言った。


「どうぞ、入ってきてください」


 その言葉の後、スーツ姿の男性が部屋に入ってきた。見た目は40代後半、スーツも身だしなみもきっちりしていた。


「依頼を受けてくださりありがとうございます。私、ドンダーケ銀行の支部長、イコと申します」


「私はクリム・カスタード」


「俺がシュウ・クリーヴです」


「クリーヴ……ああ、エイトガーディアンのタルトさんのご子息でございましたか」


 イコがこう言うと、シュウは驚いて言葉を返した。


「父さんを知っているんですか?」


「ええ。何度かお会いしたことがあります」


「ギルドの仕事でですか?」


「いえ、銀行の関係です。タルトさんは私の事をあまり知らないと思いますが、タルトさんの親族がよく我が銀行を使っていまして」


「世間話はいいから、私達の紹介を聞いてくれよ」


 と、ストブが話に割り込んできた。その後、クララがストブの頭を叩いた後、何度もイコに対して頭を下げた。


 ストブ達の自己紹介が終わった後、イコはバックからプリントをシュウ達に渡した。


「これが今回の依頼に関する資料です。実は、ドンダーケ銀行の周辺で強盗が何度も発生しています。我が銀行は被害になっていないのですが、もしもの為にと思いまして、あなた達に依頼をしたのです」


「警察には連絡をしたのですか?」


 クリムがこう聞くと、ストブはため息を吐いて返事をした。


「それが、直接被害にならないと動けないとのことです。このままでは、いずれ我が銀行にも被害が及びます。そうなれば、銀行に対しての信頼が崩れてしまい、多数の従業員が苦しみます。どうか、お力をお貸しください」


 イコの話を聞き、バカップルはイコの手を握ってこう言った。


「俺達に任せてください」


「あなたの銀行は必ず守り通します」


 この返事を聞き、イコは涙声で何度もありがとうございますと呟いた。この時のバカップルの表情を見て、クララは心の中でこう思った。やる時はやるようだと。

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