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お嬢様はご機嫌斜め

 ハリアの村のギルドから出発して数時間後、シュウ達はコエッリオの屋敷に到着した。


「何もなくてよかったですねー」


 クリムは車から降りてこう言った。シュウも手に持っていたリボルバーをしまい、車から降りた。


「ああ。でも、襲撃があったとしても意味がなかったと思うよ。この硬さじゃあな」


 と、シュウは車を触っていた。


「二人とも、依頼はこれからですよー」


「どこから襲ってくるか分からないから、気を抜かないで」


 シュガーとラックは、気を抜いているバカップルにこう言った。すると、助手席に座っていた女の子が叫んだ。


「ちょっと待ちなさい‼ あんたら、本当に私を守る気あるの!?」


 突如叫び声が聞こえたため、シュウ達は驚いてその場に止まった。その後、ゲアルが助手席の扉を開き、女の子が車から降りやすいように台を出した。


「全く、車の中でイチャイチャしている奴はいるわ、もう一人は呑気にお菓子を食べてるわ、別の一人は呑気にグースカ眠っているわ……こんな時に襲われたら、あんな村ぶっ潰してやるんだから‼」


 この言葉を聞き、シュウ達は確信した。この女の子が護衛対象のハーゼであると。


「やっぱりあなたがハーゼ様だったんですね」


「あなた達がどんな戦士か見てみたかったの。でも……こんなに呑気な奴らとは知らなかったわ‼ 本当にナデモースの事を解決した奴らなの?」


「はい。あそこにいるクリム様は最年少の賢者、そして赤茶色の少年はハリアの村きってのガンナーだとお聞きしました。残りの二人は分かりません」


「全くもう‼ 本当に私の事を守れるのか不安になってきたわ」


「安心してください。私達が守る以上、完全武装した戦艦に乗っている気分でいてください」


「泥船の間違いじゃないの?」


 と、ハーゼはクリムにこう言って屋敷に向かおうとした。その時、シュウがハーゼの後ろに向かった。


「気を付けてください。奴らがいる可能性がありますんで」


「本当?」


「あくまで可能性の話です。あそこの高い木の上からライフルで狙っているかもしれないので」


「胡散臭いわ……本当にあの木からここまで届くのかしら?」


「腕のいいスナイパーなら狙えます」


 そう言いながら、シュウはハーゼの後ろをついて行った。その後ろに、クリム達が付いて行った。




 その後、ハーゼは自室へ向かった。向かう途中、ハーゼは付いて来ているゲアルにこう話していた。


「私は不安だわ。あんなド田舎のギルドの戦士なんて役に立つの?」


「腕は確かだとお聞きしました」


「賢者は使えると思うけど、後の奴らは使えるかどうか分からないわ」


「……いえ。あの赤茶色の髪の少年、シュウ様はかなり凄腕の戦士だと私は思います」


 この言葉を聞き、ハーゼはため息を吐いてゲアルに言った。


「あんたも頭がおかしいんじゃないの? 大体、あそこの木からさっきいた場所まで何百m離れてると思ってるの?」


「大体700は離れてると思います。しかし、今の時代には高性能のライフル銃があります。それを使えば700m先のターゲットなんて楽に打ち抜けますよ」


「はぁ……あほらし。私は部屋にこもるわ。後は残りの連中と適当に見回りをしてなさい」


「はい」


 会話後、ハーゼは自分の部屋の中に入った。そして中にいた者を見て驚いた。


「ハーゼ様、今日から私達が見守りますのでご安心を」


「傷ができてもすぐに治すよ~」


 そこにいたのはメイド服姿のクリムとシュガー。二人を見て、ハーゼは怒鳴り始めた。


「何であんたらがここにいるのよ!? というか、勝手に人の部屋に入らないでよ‼」


「そうは言っても、仕事だからね~」


「先輩とラックさんには入らないようにと伝えてあります。私達女の子なら、ハーゼ様のお部屋に入っても大丈夫ですよね」


「そういう問題じゃないわ‼ はぁ……風に当たってくる」


 呆れたハーゼは庭に出て、外の空気を吸おうとした。そこには、銃を持ったシュウと盾を持っているラックがいた。


「ここにいたのね……」


「はい」


「この部屋じゃあスナイパーに狙われやすい。ここを動く気がなければ、俺達が守るしかないと思ってね」


 シュウの言葉を聞き、ハーゼの体は震え始めた。


「あんたらの守りなんてなくても大丈夫よ‼ いいから出て行って、あんたらもよ‼」


 と、中にいるクリムとシュガーに叫んでいる瞬間だった。何かを察したラックが盾を構えてハーゼの前に立ち、シュウがライフル銃を構え、発砲した。


「うるさっ‼ 一体何なの!?」


「あの木から魔力を感じたんでね。やっぱりあそこから撃って来たか」


「僕が見てくる」


 と言って、ラックが外へ出て行った。シュウはライフルをしまい、リボルバーに持ち替えてハーゼに近付いた。


「中にいるクリムとシュガーの所へ行ってください。庭から魔力を感じます」


「まだいるの……と言うか、忍び込んでるの!?」


「こんな広い庭じゃあどこから侵入してきてもおかしくありません」


 その時、黒装束を装備した奴がベランダに入って来た。黒装束はベランダに入った直後にハーゼを狙ってナイフを投げた。


「嘘……」


 飛んでくるナイフを見て、ハーゼは自身の死を察した。しかし、シュウが飛んでくるナイフを打ち落とした。


「クソ‼」


 黒装束は逃げようとしたのだが、後ろを向いたときにシュウが黒装束の左足を狙って撃った。


「グアアッ‼」


 足を撃たれた黒装束は、そのまま落ちて行った。


「さーて、捕まえに行かないとね」


「私も協力するよー」


 クリムとシュガーはこう言って、部屋から出て行った。シュウは気が抜けて茫然としているハーゼの頬を触り、我に戻した。


「大丈夫ですか?」


 この時、ハーゼの瞳には、シュウの顔が滅茶苦茶カッコよく見えていた。

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