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クリムの作戦

 二階の会議室にいるバカップルとクロボン、そして他のギルド関係者はアウトコーギヌの対策会議を行っていた。


「まず最初に知りたいのは、連中の動きについてです」


「動きというと?」


「行動パターンです。どんな手口で犯罪行為を行うのか、よく出現する時間帯などを教えてください」


 クリムがこう言うと、ギルド関係者の一人が慌てて資料を探し始めた。その間、クロボンがバカップルの方を見てこう言った。


「もうしばらくお待ちください。その間、他に知りたいことはありますか?」


「敵の強さはどんなもんですか?」


 今度はシュウが質問をした。クロボンは思い出しながら答えを言い始めた。


「連中の強さはそこら辺の裏ギルドと同じだと思ってください。魔法使い以外で厄介な奴はいないと思われます」


「では、敵のボスはどんな人物か分かりますか?」


 次の質問を聞き、クロボンは一枚の紙をバカップルに渡した。その紙は写真であり、それに映っていたのはいかにも悪そうな人相の男だった。


「こいつの名前はザッシーマと言います。アウトコーギヌのボスであり、恐らくこの周囲で一番強い剣士と思われます」


「剣士か。じゃあ剣を使うんですね」


「はい。奴の剣の腕は我がギルドでも太刀打ちできないほどです」


「かなり強いんだな……」


 シュウが写真を見て呟いていると、資料を見ていた関係者が声を出した。


「今パターンが分かりました。奴らは何かしらの爆薬を使って周囲をパニックにさせ、そこから犯行に及びます。犯行時間は昼」


「昼に行うのは、人の心理を使ったんでしょう」


「心理ですか?」


 関係者の一人がこう聞いたため、クリムは返事をして答えを言った。


「日常に突然異常な出来事が起きたらパニックになると思います。人それぞれ反応は違うと思いますが、我に戻るまでうまく動けないと思います。それに、奴らの中に魔法使いがいると思われます。奴がいるから他の人は手を出せないと思います」


「そうか……ふむ」


 クロボンはクリムの話を聞き、考えをまとめてからこう言った。


「クリムさん、今後の作戦について何かありませんか?」


「作戦ですか?」


「はい。シュウさんもいい作戦があったら遠慮なく発言してください。この状況下ではいろんなアイデアが欲しいのです」


「分かりました。考えてみます」


 その後、クリム達はアウトコーギヌ対策の作戦を練り始めた。しばらく考え抜いた結果、作戦の内容は昼間の警備を強化する事に決まった。


「単純な作戦ですが、奴らを捕まえるために頑張りましょう」


 クロボンがこう言った後、この場にいた全員は気合の入った返事をした。




 その日の夜。バカップルはバウソバウソのギルドが用意した部屋にいた。バウソバウソにいる間はここで寝泊まりするように言われたからだ。


 クリムは椅子に座り、机の上に広げた資料を見ていた。ジュースを持ったシュウがクリムの横に座り、こう言った。


「いつになく真剣だな」


「ええ。実は敵の魔法使いの事を調べているんですよ」


「敵の魔法使い?」


 シュウはクリムの話を聞いて少し疑問に思った。クリムが手にしている資料を見て、シュウは声を上げた。


「結構腕のよさそうな魔法使いだな。写真から見て、かなり威力のある爆発を使ったんだな」


「腕は未熟です。魔力のカスが残っていました。私くらいの腕になると、証拠となる魔力のカスを出さないで同じ威力の魔法を使えます」


「それもすごいな。にしても……誰がこんなことを」


「チュエールにいたんですよ。火属性がそれなりにうまい魔法使いを」


 クリムの言葉を聞き、シュウの中に嫌な予感が走った。もしやと思い、シュウはクリムにこう聞いた。


「まさか、アウトコーギヌの中にそいつがいるのか?」


「可能性はあります。奴は私が賢者に選ばれたことを妬んでいました。一度コテンパンにやっつけたのですが、それから奴は行方不明になりました」


「……もしかしてクリムをおびき寄せるために……」


「かもしれません。私が来ない確率の方が多いのですが、どうやら奴の賭けが当たってしまったようですね」


 と言うと、クリムはため息を吐いた。シュウはクリムの肩を叩き、こう聞いた。


「倒せるのか?」


「ええ。一度倒した相手なので。それに今回は先輩もいます。先輩がいるだけで私は強くなれますので」


「そうか。ありがとなクリム」


「えへへ~」


 シリアスな話を終え、バカップルはそのままベッドの上に移動してイチャイチャし始めた。




 アウトコーギヌのアジト。建物の屋根にいる一人の男が月を見ながら笑っていた。


「感じる、奴の魔力を感じるぞ……」


「なーに訳の分かんねー事を言ってるんだ? 明日も昼に騒動を起こすから早く寝ろよー」


「分かった。もうしばらく月を見たら風呂に入って寝る」


「早くしろよー」


 下から聞こえた仲間の声に返事をした後、その男は月に視線を戻し、右手に炎を発して矢のような形にした。


「クリム、あの時は貴様に負けはしたが、今回は俺が勝つ。そして……賢者の称号を貰う‼」


 そう言うと、男は月に向かって炎の矢を放った。その時、下からまた仲間の声が聞こえた。


「いい加減にしろよ、馬鹿な事はさっさと止めて早く風呂入って寝ろ‼」


「分かった、分かったから」


 返事をし、男は下に戻って行った。

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