厄介な裏ギルド
ハリアの村とシェラールの中間ぐらいにある町、バウソバウソ。ここではとある裏ギルドが犯罪行為を繰り返し行っていた。この町にもギルドはあるのだが、彼らの隙を伺いその裏ギルドは逃げているのである。
この日もバウソバウソのギルドは通報を受け、現場に向かっていた。
「ここが現場だが……」
「もう奴らはいないようだな」
現場になったのは宝石店。裏ギルドの連中が宝石を強奪しに来たと連絡があってきたのだが、到着した時にはすでにいなかった。ギルドの戦士は荒れた店内で倒れている店員に近付き、事情を聞いた。
「大丈夫かあんた? 今治療するからな」
「あ……ありがとうございます……」
「喋るなよ。傷が広がるぜ」
「はい……」
店員の治療を終え、改めて戦士は事情を聞いていた。
「奴らは今バウソバウソを荒らしまわっている裏ギルド、アウトコーギヌです」
「やはりな」
「この荒れようと、多少感じる魔力。奴らの中に魔法使いがいたようだな」
「はい。それもかなり優秀な魔法使いです」
「そうか……分かった。とにかく今は休んでいてくれ。後はギルドの仕事だ」
会話後、ギルドの戦士は外に出てバウソバウソのギルドに連絡を始めた。
「私です。現場を調べたのですが、どうやら裏ギルドのアウトコーギヌの仕業です。奴らの中に優秀な魔法使いがいるせいか、かなり場は荒れてます。ええ……はい。私もそう思います。この問題は我々だけで解決できるとは思えません。はい。分かりました」
その後、連絡を終えた戦士は携帯を切った。別の戦士が近付き、話の事を聞き始めた。
「俺達だけで解決できないんじゃあ、どうするんだよ?」
「助っ人を呼ぶ。アウトコーギヌを軽く倒せそうな強力な助っ人をな」
この話を聞き、別の戦士はどんな奴が来るのかと思い緊張してきた。
翌日、バカップルはバウソバウソの駅にいた。
「ここがバウソバウソですか」
「見た目じゃあ平和だと思うんだけどな」
シュウは周囲を見回し、人々でにぎわっているバウソバウソの街を確認した。そんな中、二人の前に車が到着した。
「ハリアの村の戦士、シュウとクリムですね。私はバウソバウソの戦士、クロボンと言います」
運転席の窓が開き、そこに乗っていたクロボンが声をかけてきた。バカップルは挨拶をすると、車の中に乗り込んだ。
「事情は聞きました。アウトコーギヌという裏ギルドが暴れまわっていると」
「はい。ギルドの上はエイトガーディアンの誰かに来てもらいたいと考えでしたが、今シェラールは神罰の代行者の後片付けで忙しいと」
「そうだな。あいつのせいでシェラールの大半が爆破されたもんな」
シュウは神罰の代行者との戦いを思い出しながら呟いた。そんな中、クロボンは咳ばらいをして話を続けた。
「今から事件の説明をします。アウトコーギヌの中に優秀な魔法使いがいると思われます。昨日発生した宝石店強奪事件において、現場に魔力を使った形跡がありました」
「ふむ。形跡を残すとはあまり優秀ではないかもしれませんね。しかし、いかに下手な魔法使いでも強力な魔力を持っているとしたら強敵ですね」
「はい。それよりも……本当にこんな状況でよくイチャイチャできますね」
クロボンはバックミラーを見ながら、抱き合うバカップルを見ていた。シュウはクリムにキスをした後、不満な顔をしながらこう聞いた。
「えー? いいじゃないですかー。少しでもクリムといちゃつきたいんで」
「いえ……私が聞いた噂通り……いや、噂以上のバカップルなのでつい驚きました」
クロボンはイチャイチャし続けるバカップルを見て少し呆れていた。だが、心の中でこう思っていた。あんなバカップルだが、エイトガーディアン波の実力を持っている戦士だと。
数分後、車はバウソバウソのギルド前に到着した。
「街のギルドだからハリアの村よりでかいな」
「シェラールといい勝負です」
バカップルが車から出て中に入ろうとしたが、クロボンは慌てて二人を引き留めて裏に回った。
「どうかしたんですか? 泥棒みたいにこそこそと移動してますが」
「イケメンのシュウさんが来ると聞いたうちの女子達が、かなり騒いでいるんです。もしシュウさんが真正面からくれば女子にもみくちゃにされます」
「あー……」
この言葉を聞き、シュウはこの後の未来を予測した。クリムはため息を吐いて呟いた。
「全く、私と先輩は付き合ってるって本当に本当に分からないんですかねぇ」
「女子にとってはイケメンが来るだけでうれしいんでしょう」
「だとしても、俺はクリム以外を愛する気は全くないんだけどなぁ」
「せんぱ~い‼」
シュウの言葉を聞いたクリムはシュウに抱き着いた。そしてまたいちゃつくバカップルを見て溜息を吐いたクロボンは、裏の扉を開いた。
「どうぞ。ここから二階へ」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼ シュウくうううううううううううううううううううううううううううううううううん‼」
扉を開けた瞬間、無数の女子がクロボンを踏み台にし、シュウに抱き着こうとした。クリムは前に立ってバリアを張り、女子からシュウを守った。
「全く、先輩には私という彼女がいるんですよ‼ もう先輩と付き合う事は不可能ですから諦めてください‼ それと、クロボンさんが死にそうだから早くどきなさい‼」
その後、クリムは女子の群れをどかしながらクロボンを救出し、シュウと共に二階へ上がって行った。