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旅行の行方

「仕方ねー、手分けして探そう」


 ジャックは頭を抱えながらタルトとナギにこう言った。広い旅館を探すのに、一緒だと時間がかかると思ったからだ。何かやらかさないかと心配しているタルト、何が何でも先にバカップルを見つけて邪魔をしてやるとたくらんでいるナギ。いろいろと不安な人選だが、手っ取り早く見つけるにはこの作戦しかないとジャックは思った。


「じゃ、俺は三階。タルトさんは二階、ナギちゃんは一階を頼む」


「分かった。何かあったらすぐに連絡をする」


 タルトはこう言ったが、話を聞いたナギはすぐにダッシュでバカップルを探しに行ってしまった。


「……不安だ」


 雄たけびのような声を上げて走り去るナギを見て、タルトは不安げにこう言った。




 そんなことも知らずに、バカップルは自室の庭の温泉で湯船に浸かっていた。


「気持ちいいですねぇ……」


「ああ、疲れが流される気がする……」


 バカップルは体を密着させながら湯船に浸かっている。外は森になっており、ありのままの自然の姿を見る事が出来た。


「あ、鹿だ」


 庭の前に、鹿が現れた。一応動物が入ってこないように目に見えないバリアは這ってるのだ。その前に、キラリには動物が入らないように柵が張ってあるのだが、たまーに動物がそれを乗り越えてしまうのだ。


「ここにいると人に見つかるぜ」


「早く逃げなさい」


 バカップルの声を聞いたか、鹿は後ろを振り向いて去って行った。


「行っちゃいましたね」


「二人っきりだと思ったけど、動物がいるんだな」


「まぁいいじゃないですか。可愛いですし、人の入浴を覗くようなことはしませんし」


「俺は動物であろうとも、大事なクリムの裸を誰にも見せたくないんだ」


「んも~、先輩ったら~」


 クリムは多少照れながら、シュウに抱き着いた。




 そんな中、ジャックは三階でバカップルの姿を探していた。


「ったく、どこに行ったんだ奴らは?」


 そんなことを呟きながら、三階を見回していた。キラリの三階は娯楽施設になっている。温泉以外の施設として、ゲームセンターやデパート、レストランなどがある。ジャックはバカップルが食事をしに来たと考えここに来たのだが、バカップルの姿は見当たらなかった。


「見つからねーなー」


 その時、タルトから連絡が入った。ジャックは急いで携帯を手にし、電話に取った。


「もしもし?」


『私だ。客室を見回したが、プレミアムチケット使用者以外の部屋名簿を見たが、二人はいなかった』


「チケットか……」


 この時、ジャックは思い出した。バカップルがこの温泉街に入れたのはタルトが手に入れたチケットであると。


「おい、二人にどんなチケットを渡したか覚えてますか?」


『チケット……な‼ あああああああああああああああああああああああああああああああ‼ しまったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼』


 タルトの絶叫が響いた。ジャックは電話を切りながら落胆した。バカップルが使ったチケットはプレミアムチケット。つまり、高い金を出して買うチケットであり、一般向けのチケットを使った人は入れない施設とかに入れる。ジャックは察した。バカップルはそこにいるのではないかと。




 ジャックとタルトは一階に集まり、話を始めた。ナギにもこの話をしようとしたのだが、探すのに夢中で携帯が鳴っていることに気付いてないようだった。


「しまった……プレミアムチケットなんて渡すんじゃなかった……」


「下手したらもう部屋にいるかもしれないな……」


「ヤダ‼ まだ40代なのにおじいちゃんだなんていわれたくない‼」


「俺だってそうですよ。まだ彼女すらいないのに、後輩にあれこれ抜かれるなんてプライドがズタズタになる」


「君、彼女いないんだね」


「そうです。当分一人をエンジョイしたいのですが、未来の事を考えるとねぇ……」


「そんな事より二人を探さないと‼」


 二人の前に置かれている机が強く叩かれる音がした。びっくりした二人は顔を見上げると、そこにはナギが立っていた。


「ここにいたんですか。それと、何ですかその情けない顔は?」


「いやー実は……」


 タルトがナギに先ほどの事を説明した。ナギは二人のように驚きもしなかった。


「あれ、意外な反応」


「思ってたんですよ。プレミアムチケットしか入れない所にいるんじゃないかって。それに、私達が来てることをクリムが勘付いたかもしれませんし」


 ナギの言葉を聞き、二人は深く考えた。一応変装はしているのだが、クリムは微かな魔力でも反応してしまう。それに勘付いてプレミアムチケットしか行けない所にいるのではないかと。


「タルトさん、エイトガーディアンの特権で何とかなりませんか?」


「私情でエイトガーディアンの権力を使いたくないのだが……」


「今はそんな事言ってる場合じゃないですよ。もし仮に二人があれこれしたら、大変なのはタルトさんなんですよ。子供の世話を見るのは親の仕事なんですから」


「親の仕事……か……」


 ナギの言葉を聞き、タルトは少し考えた。そして立ち上がって二人にこう言った。


「出来るかどうか分からないが、エイトガーディアンの力を使ってこの難題を乗り越えてみる」


「無理だったら?」


 ジャックの言葉を聞いた後、タルトはすぐに答えた。


「別の案を考えるさ」

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