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非道の行い

 バカップルと戦っているロボラは、炎を発しながらクリムを睨んでいた。アバジョンで戦った時よりも、自分は強くなったとロボラは思っている。この時の為に、ある日策を彼は思い付いていたからだ。


「喰らえ‼」


 ロボラの右腕から、勢いよく炎が放たれた。だが、狙いはクリムではなく、シュウでもなかった。


「何をするつもりだ!?」


「まずは賢者から始末する‼ それから、お前を始末する‼」


 この言葉を聞き、シュウは確信した。一対一という自分に有利な状況を作ったのだと。


「先輩‼ 待っててください、この炎を水で……」


「させっかよ‼」


 ロボラはよそ見をしたクリムに対し、炎で作った拳をぶつけようとした。その攻撃に気付いたクリムはバリアを張り、攻撃を防御した。


「グッ……すぐに片づけようと思いましたが……仕方ありませんね」


 クリムは深呼吸をし、膨大な魔力を解放した。その勢いで、周囲に発している炎が激しく揺らいだ。


「この魔力は……」


 クリムの魔力を察したロボラの額には、冷や汗が流れていた。アバジョンで戦った時よりも、今のクリムの魔力が強かったからだ。


「こんな力があったのかよ」


「本来なら力を出して敵と戦いたくありませんが、あなたのような残虐な人には容赦しません」


 そう言ってクリムは右手を上げると、勢いよく振り下ろした。その瞬間、強烈な風が発し、地面に亀裂を作りながらロボラに襲った。


「何だと!?」


 強烈な攻撃を察し、ロボラは避けようとした。だが、クリムは左手で大地魔法を発しており、ロボラの後ろにコンクリートの壁が現れた。その事に気付かなかったロボラは壁に激突し、悲鳴を上げた。


「グッ……」


 痛む背中を抑えながら態勢を整えようとしたが、目の前に迫っていた強烈な風がロボラに命中した。


「グアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」


 風に命中し、ロボラの体に大きな傷が発生した。


「初めてですか? こんなダメージを喰らうのは?」


 クリムが魔力を解放させたまま、ロボラに近付いた。攻撃を仕掛けたいロボラだったが、傷の痛みで両腕が動かなかったのだ。何とか魔力で痛みを和らげているが、それでも無駄だった。強烈な痛みは魔力で和らぐことは出来なかった。


「グゾォ……」


 痛みをこらえながら立ち上がり、ロボラはクリムから離れようとした。だが、クリムはその動きを読んでいて、ロボラの後ろにあった壁を操り、泥のように軟化させてロボラを取り込んだ。


「グアアアアアアアアアアアアアアアア‼ 何だこれは!?」


「粘土に似たものです。ばい菌はないので、傷口に菌が入ることはありませんよ」


 クリムはロボラに近付き、杖を向けた。その杖の先には、光の魔力が集まっていた。


「大人しく刑務所に戻るか、それともここで半分死ぬか。どっちか選んでください」


 この言葉を聞き、ロボラは歯を食いしばりながら、クリムにこう言った。


「戻る。負けを認める。だからこれ以上、戦うのは止めてくれ……」


「最初から素直になればいいのに」


 クリムは魔力を戻し、ロボラが発した炎を消してシュウの元へ向かった。その時のクリムは隙だらけだったのだが、その隙を奪って攻撃しても無駄。ロボラはそう思い、その場に倒れた。




 神罰の代行者は、パソコンでグルザークたちの戦いを見ていた。そして、彼ら全員が敗北、屈服したことを知り、険しい顔になっていた。


「全く、何が裏ギルドだ。結局やられてしまったではないか」


 神罰の代行者はため息を吐きつつ、赤いボタンが付いたスイッチを取り出した。だが、何かを思ったのか、彼はマイクを持ってこう言った。


「君達の戦いの様子を見ていたよ」


 その言葉の直後、グルザークやナフ、ロボラが言葉に気付き、何か叫び始めた。だが、グルザークが負けた事を知った直後、神罰の代行者は彼らの声が届かないように設定していた。


「君達ならよりカオスにしてくれると期待してたんだが……残念だよ。君達に用はない」


 そう言って通話を切り、パソコンを見つめた。




「おいコラ‼ 何とか言えよ‼ チクショー、返事がねー‼」


 脱走犯の一人が首輪に向けて叫び声を上げていた。他の脱走犯も、大声を叫び始めていた。


「何かあったんですかね?」


「連絡があったのか?」


 この時、近くにいたジャックとラックが会話をしていた。彼らには、神罰の代行者の会話が聞こえていなかったのだ。


「チッ、何が神罰の代行者だ? あの時、奴の言う事を聞かなければよかった……」


 捕らえられたグルザークは、悔しそうに呟いた。その声を聞いたスネックは、グルザークに尋ねた。


「神罰の代行者と話したのか?」


「前にな。今も連絡があったが、応答なし」


「姿も見たが……顔や体形までは分からん、服やマスクで隠されていた……」


 と、ボロボロになったナフがこう答えた。


 先ほどバカップルと戦っていたロボラも神罰の代行者の声を聞いており、何度も声を上げていた。


「あの野郎……負けたと知って、俺達を捨てるつもりか……」


「神罰の代行者と話したんですね? あの野郎と変わってください‼」


 クリムがロボラに近付こうとしたその瞬間、何かに気付いたシュウが叫び声を上げながら近づいた。


「離れろクリム‼」


「せんぱ」


 この直後、ロボラが身に着けている首輪が赤く光出し、大爆発を起こした。それから各地で大爆発が発生した。突如起きた光景を見て、クリムは茫然としていた。だが、我に戻り、倒れているシュウに近付いた。


「先輩‼ 今治療します、死なないでください……先輩、先輩‼」


 爆発によって瓦礫の山と化した街中、その中でクリムの悲鳴がこだまのように響いていた。

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