連鎖する爆発
テレビ局の操作を終えたシュウ達は、帰りの車の中で話し合いをしていた。クリムが持つ携帯の画面には、神罰の代行者の動画が流れていた。
「何が神罰の代行者だ。馬鹿じゃねーか?」
「先輩の言うとおりですね。本人はカッコイイことを言っているつもりですが、聞いているこちらとしては馬鹿な奴としか思えません」
「本気でこんなことを言ってるのかな?」
リナサの言葉を聞き、バカップルは黙り込んだ。もし本気であったなら、また大規模な爆発を起こす可能性があると考えたのだ。
「とにかく、この動画を投降した人を探そう」
「もう捜査班を作って調べてるみたい。まだ情報は流れてこないけど」
「しばらく待つしかありませんね」
クリムはシュウにもたれながらこう言った。シュウはクリムを優しく抱く中、リナサにこう聞いた。
「他に何か変わったことはなかったか?」
「そうだ。スネックが復帰するって」
「本当ですか!?」
この言葉を聞いたクリムは、飛び上がると同時にリナサに改めてこう聞いた。
「うん。ナギから連絡があった。もうこの事件の事を調べてるみたい」
「父さんが入院中だし、人は多い方がいいな」
シュウがこう言った直後、リナサは何かを見つけて慌て始めた。
「お兄ちゃん、クリムお姉ちゃん、これ見て‼」
「何かあったのですか?」
「神罰の代行者が、新しい動画を出したの」
「何だって!?」
バカップルは慌ててリナサの携帯の画面を見て、神罰の代行者の動画を見た。背景のマークは変わっておらず、しばらくそのマークだけが映っていた。
「何を言うつもりだ?」
シュウがこう言った直後、加工した音で変換されているが、咳をする声が聞こえた。
『失敬。我は神罰の代行者だ。前の動画から時間が経ったため、動画を新たに製作することにした』
「前の動画って、投降したの数時間前じゃない」
リナサが少し怒りながら呟いた。
『あれからネット上では騒いでいるが、メディアやニュースでは取り上げられていなかった。これだけ大騒ぎになっているのにも関わらず。なので、我は行動を早めることにした。今からシェラールの中心街にあるいくつかの施設を爆破する。今ここにはくだらない野暮用でうろちょろしている警察やギルドの人間、くだらない番組の為に出歩いている芸が出来ない芸能人共が出歩いているだろう。メディアよ。我は大きなニュースを提供する。その事を感謝しながらニュースを伝えるんだな』
神罰の代行者がこう言った直後、動画は終わった。
「シェラールの中心街……これはまずいです。私達も行きましょう‼」
「運転手さん、お願い!」
「分かりました。一気に飛ばしますからちゃーんとシートベルトをしていてください‼」
運転手は返事をし、見事なテクでUターンし、猛スピードで中心街へ向かって行った。
その頃、中心街にはスネックがいた。一足先に動画を見て、急いで向かったのだ。
「運よくここに来れたが……奴はどこを爆破するんだ?」
スネックは周りを見ながら呟いた。中心街には名物となるビルや建物、店などがたくさんある。先ほどの動画の予告が本気であれば、奴はどこかを爆破するとスネックは思っていた。すると、携帯を見た人達は、慌ててバスやタクシー、駅へ向かい始めた。あの動画を見たとスネックは察した。
「おい‼ 走るな、急ぐな‼ 気持ちは分かるが、慌てたら無駄な怪我をするかもしれねーぞ‼」
スネックは大声で注意を促したが、周りの人は我先にと思っているのか、スネックの声など耳にしていなかった。クソッたれとスネックが思った直後、近くのビルで爆発が起こった。
「クソ、やりやがったな‼」
バリアを張って飛んでくるガラスの破片やコンクリートの破片を防ぎつつ、スネックは大声で叫んだ。
「建物の周りに集まるな‼ 次はどこが爆発するか分からないから、冷静に……」
注意を促している時、次の爆発が発生してしまった。今度は駅とバスターミナルで爆発が発生した。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
「助けて……助けてくれェェェェェェェェ‼」
「うわああああああああああああ‼」
爆発は一度だけではなかった。何度も爆発を起こしていた。その音に交じり、人々の悲鳴も聞こえていた。
「いかれてやがる……」
混沌と化した街を見て、スネックは呟いた。その体は、怒りで震えていた。
神罰の代行者こと、あのビルに住む男は笑いながらニュースの速報を見ていた。
「グヒヒヒヒ‼ グヒヒヒヒヒヒ‼ いい気味だ、僕の言う事を聞かなかったからこうなるんだよ‼」
テレビの画面には、中継として中心街の映像が流れていた。男は映像を見ながら、パソコンを操作し始めた。
『見てください、無数の爆発によって駅が……ギャアアアアアアアアアアアア‼』
テレビからニュースキャスターの悲鳴が聞こえた。丁度中継場所が爆発したと男は察し、笑い声を上げながらテレビを見た。その映像には、慌てふためく司会者と、右往左往しているスタッフの姿が映っていた。
「グッヒッヒ! あー、面白い面白い。こんな面白い事は本当にないよ」
男はポテトを食べながら、テレビを見ていた。