恐怖‼ 兵器と化した護衛ロボット
セッツーナマンションの住人は、騒動を聞いて皆外へ避難するために移動していた。ある男性が、マンションの廊下で倒れている護衛ロボットを見てこう言った。
「この騒動でロボットも潰れたのかな?」
彼は先程の爆発でロボットが倒れ、そのショックで起動停止したと考えていた。だが、突如ロボットのモノアイ部分が赤く光出し、周囲を見渡すかのように動いていた。
「あれ? 動いた」
その直後、ロボットは男性に近付いて右手のアームで思いっきり殴った。
「がはっ……」
この惨事を見た他の住人は、悲鳴を上げてロボットから逃げ始めた。
「メイレイ……メニツクモノハ、シマツセヨ」
ロボットがこう言うと、他の場所にいたロボットも立ち上がり、同じ言葉を呟きながら住人に攻撃を仕掛け始めた。ロボットはいざという時の為に護衛として作られていたもので、かなり頑丈に作られている。その為、その腕で殴られたら大怪我、運が悪ければ命を落としてしまう。
「コロセ、コロセ、メニツクモノハコロセ」
ロボットは何度も同じことを言い放ち、住人を襲っていた。それと同時に、別の所で大爆発が起こる。
「何だよ……この地獄絵図は!?」
別の住人が、息を切らせながら目の前の惨状を見てこう叫んだ。爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ者、ロボットに襲われて血まみれになる者、辺りはこの世のものとは思えない悲惨な事になっていた。
避難活動や消火活動を行っていたバカップルは、この惨事を見てかなり引いていた。
「誰が何のためにこんなことを……」
「鬼畜ですよ。こんなことを考えた奴は後に捕まえることにして、今は皆さんを助けましょう」
その後、バカップルは大急ぎで住人の避難と消火活動を行った。クリムの水の魔法で火は簡単に消していき、シュウの冷静な判断で人々は無事に避難していった。そんな中、バカップルがいる階の上から、悲鳴が聞こえた。
「上に誰かいるのか」
「何かあったに違いません」
その時、丁度上の階の床が炎で崩れ、天井が開いてしまった。だが、バカップルはこれを好機として考えていた。
「都合いいです。飛んで行きましょう」
「了解‼」
シュウはクリムに抱き着き、クリムは魔力を使って高く飛び上がった。
「アラタナニンゲン……」
「カンケイナイ、コロセコロセ」
殺人マシーンと化したロボットが、バカップルを見てこう会話をしていた。ロボットの周りには、血を流して倒れている人がたくさんいた。
「護衛ロボットか? 今は違うみたいだけど」
「管理システムを乗っ取った奴が、ロボットを操っているんですよ。仕方ありません、壊しましょう」
クリムは光魔法を発し、ロボットを壊していった。それを見た住人の一人が、シュウにこう言った。
「壊していいんですか? あのロボット、かなり高いって聞きましたが」
「じゃあほっとくのか? 値は張るけどロボットは壊れても直せるんだ。人の命は失ったら、どんなに金を使っても直せないぜ」
「そうですね……」
その後、クリムは魔法を使って殺人マシーンと化したロボットを全て破壊した。
「さて、消火活動をしましょう」
「おう」
バカップルはこう会話をし、消火活動と避難活動を再開した。
数時間後、多少の重軽傷人は出たものの、住人の避難は全て終了した。周りには消防車や救急車、警察官や他のギルドの戦士達が来ていた。
「ふぅ……終わりましたね」
「いや、まだ父さんが戻って来てない」
「そうだ。お義父さんは!?」
バカップルは慌ててシステム管理室へ行こうとしたが、そこにいたマスコミがバカップルの姿を見つけ、一斉に駆け寄ってきた。
「あなた達がこの火災を終わらせた戦士ですね!?」
「どんな状況だったか教えてください‼」
「あのバカップルですよね。イチャイチャしながら活動してたんですか?」
「すみません‼ 今相手をしている場合じゃないんですよ‼ どいてください‼」
シュウはこう叫んでマスコミをどかし、急いでシステム管理室へ向かった。そこには消防隊員と救急隊員がいて、担架で何かを運ぼうとしていた。
「すみません、エイトガーディアンのタルトさんはいませんでしたか?」
シュウが救急隊員にこう聞くと、近くから声が聞こえた。
「シュウ……か……」
「父さん!?」
シュウがタルトの元へ近づき、様子を聞いた。
「父さん……」
「はは……しくじったよ。まさか……パソコンを……爆破させるなんて思ってもなかった……」
「酷い怪我だけど……」
「ああ。火傷もしたし、爆発のショックで骨も折れた」
「すみません。かなり重傷なので、お話はあとでお願いします」
「はい」
その後、タルトは救急車に運ばれて行った。その時、リナサとボーノの声が聞こえた。
「エライ酷い騒動があって聞いたが……タルトさんは?」
「今、救急車で運ばれました」
「システム管理室へ向かったんですが、そこで大爆発に巻き込まれたようです」
「タルトさん……」
心配そうにリナサが呟いた。ボーノは周囲を見回し、この惨状がとんでもなく酷い物だという事を改めて認識し、バカップルにこう言った。
「すまない、もう少しエイトガーディアンにいてくれ。この騒動、楽には終わらなそうだ」
「はい。そのつもりです」
「こんな騒ぎを起こした奴は……絶対に許しません、絶対に逃がしません」
クリムは拳を強く握りしめながら、こう返事した。