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大事件の前触れ

 シェラールには多くの雑居ビルが存在する。たくさん人がいて繁盛するところもあれば、売れなくて結局廃ビルになるところもある。一部の裏ギルドや個人の犯罪者は、誰も目が付かないような所を見つけ、そこを根城にしている。


 そんなとある廃ビルの一室。そこは無数のパソコンや何かのポスターが張られていた。その中に、太った男が汗水たらして何かをしていた。


「これで完成だ……」


 男はそう言うと、それを安物のバックに入れて出かけて行った。人がいない時にビルから出て、コンビニへ向かった。


「いらっしゃいませー」


 深夜なのか、やる気のない店員がこうあいさつをした。男が買い物をする中、男の店員が別の店員に小声でこう会話をした。


「見ろよあの客。豚みてーに太ってるぜ」


「ケケケケケ。どうしたらあんなデブになるんだか」


「おっ、カップ麺持って来たぞ。チャーシュー麵だとよ」


「共食いじゃねーか」


 男がレジに来ると、店員はすぐに立ち位置に戻り、勘定をした。


「夜中のコンビニバイトは楽だよな。人も来ねーし、うるさい上司はいない」


「楽して稼ぐのにうってつけだ……ん?」


 店員の一人が、通路にバックが置かれているのを発見した。


「あのデブ、忘れもんしやがった」


「えー。今すぐあいつ呼びに行くか?」


「だな」


 男がバックを持った瞬間、そのバックは大爆発を起こした。この衝撃でコンビニのガラスは全て吹き飛び、強烈な炎が柱のように登り始めた。それからすぐに消防車が来て作業に当たったのだが、消火が終わるまでは数時間もかかった。


「ふひひひひ……大成功……」


 あの男は自分が住むビルのベランダから、望遠鏡で火事の様子を見て笑っていた。




 翌朝。バカップルがギルドのキッチンでいちゃつきながら食事をしていると、呆れた溜息と共にスネックが近付いた。


「よー、お二人さん。朝っぱらから何やってんだ?」


「スネックさんこそ何してるんですか? そんな荷物を持って」


 クリムはスネックが持つバックを見てこう言うと、スネックは見せびらかしながら答えた。


「今から武器屋に行ってくる。相棒の修理が終わったんだよ。このバックにはそのための金が入っているんだ」


 スネックの言葉を聞いたナギは、ショックのあまりその場で立ち止まった。


「そんな……シュウさんがここから去る事になるじゃない……」


「そりゃーそうだろ。俺の代理だもん」


「やだ‼ やだやだやだやだ‼ せめて私とシュウさんが結婚するまで待ってくれない!?」


「その願いは一生叶う事はないでしょう」


 クリムは額に青筋を浮かばせながらこう言った。ナギはクリムから魔力を察し、慌てて逃げた。


「ずっとここにいてほしかったけど、しょうがないね」


 リナサはお茶を飲んでこう言った。その後、スネックはギルドから出かけて行った。


「明日にはハリアの村に戻る事になりそうですね」


「そうだな。コンリの時や町でデートした時に師匠達には偶然会ったけど、あれ以来会ってないからな」


 バカップルがそんな会話をしていると、テレビのニュースの音声が聞こえた。


『次のニュースです。今日未明、シェラールのカドバシ駅付近のコンビニで大規模の爆発が発生しました。この事故による死者は二名。除法によると、このコンビニでバイトをしていた人だそうです。しかし、遺体の損傷が激しいため身元が分からないそうです。なお、消火活動は明け方まで続いたとのことです』


 このニュースを聞き、クリムは驚いていた。


「これは偶然による爆発じゃないですよ。誰かが爆弾を作って爆破させたんです」


「ただのガス爆発でここまで被害が広がらないし」


「火もすぐに収まるはず」


 シュウとリナサは推理しながら呟いた。クリムは少しため息を吐き、シュウにこう言った。


「もうしばらくここにいる事になりそうですね。この事件、まだ続くような気がします」


「やったー‼ これでもうしばらくシュウさんといられるー‼」


 ナギがシュウに抱き着こうとしたのだが、クリムとリナサがナギの頭に拳骨を喰らわせた。


「人が死んでるんですよ‼ そういったことを言うのは慎んでください‼」


「少し頭冷やす? それとも修正されたい?」


「すみません、以後気を付けます……」


 たんこぶが出来た頭を押さえながら、ナギはこう答えた。




 あの男はビルの自室で笑いながらネットニュースを見ていた。


「ふひひひひひ。取り上げられてる。どれどれ……」


 その後、ネット上の掲示板のサイトへ向かい、この事件の事を調べた。どう書き込んでいるのか気になったのだ。そのサイトには……


 以前からあのコンビニのバイトが気に食わなかった。死んだと聞いて本当にすっきりした。


 あのバイトに陰口されてた。死んで当然の奴が死んだ。


 俺の彼女に色目を使ってた。ザマーミロ‼


 などと罵倒のような言葉がずらずらと並んでいた。それらを読んでいるうちに、男は上機嫌となって行った。そして、ある事を思いついてそのサイトにこう書きこんだ。


 我は神罰の代行者なり。本日の夜にセッツーナマンションは爆発と炎によって飲まれるだろう。


 この文章を書きこんだ後、あっという間に返信が返ってきた。


「ぐひ。ぐひひひひひひひひ。皆は嘘みたいだと思っているが……あれを見たらどう反応するか楽しみだなぁ……」


 男はそう言って、手製の爆弾を見つめた。

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