密林での戦い
翌日。出発の準備を終えたシュウ達は再び歩き始めた。だが、シュウ達の話を聞いたスタッフ達は、裏ギルドに怯えていた。
「何でこんな所で……」
「ついてねーよ俺達」
「こんな密林で死にたくねー」
「くよくよ言うな。こうなった以上、いい事を考えながら進むんだ。マイナスになるようなことを考えて進んでも、気を悪くするだけだ」
「でもフジヒロさん。大丈夫なんですか? ギルドの戦士とはいえまだ子供ですよ」
「彼らは強い。何度も難しい依頼をクリアして生きている猛者だ」
「はぁ……」
スタッフは話しながら歩くシュウ達を見て、少し不安に思っていた。
そんなスタッフの気持ちをつゆ知らず、シュウ達は呑気に話をしていた。
「何日もジャングルを歩いたせいか、かなり足の筋肉が付いた気がします」
「不慣れな場所を歩いているからな。俺も最初は足が少し痛かったけど、今は何ともないな」
「すごいですねシュウさん。私はまだこの道を慣れてないです」
「故郷の近くの山で修行したってのもあるかな」
「ティラさんとあそこで修行をしたんですか?」
「ああ。ずいぶんきつい修行だったよ……」
と言いながら、シュウは昔の事を思い出していた。その時、シュウはとっさに拳銃を手に取った。クリムは少しだけ魔力を開放し、ハヤテは腰にある剣に手を出していた。
「私は後ろに下がる」
「お願いします」
ナギはクリムの返事を聞いた後、フジヒロとスタッフの元へ向かった。
「何かあったんですか?」
「若干だけど見知らぬ魔力を感じたわ。敵がいるわ」
ナギの言葉を聞き、スタッフ達は慌て始めた。だが、フジヒロは少しも動じずナギの話を聞いていた。
「そうか。君は魔力のバリアを張れるのか?」
「ええまあ」
「戦えないスタッフを守ってやってくれ。私は外に出て戦う」
「は……はぁ!?」
ナギは歩き始めたフジヒロを止めようとしたのだが、それより先にフジヒロはシュウ達の方へ向かって行ってしまった。後を追いかけようとしたのだが、こんな危険な所でスタッフを置き去りにしたら危険なため、仕方なくナギはその場でバリアを張った。
「もう、どうなっても私知らないから」
シュウ、クリム、ハヤテは三人で背中合わせになり、周囲を見回していた。
「どこから来るか分かりません。武器の準備や魔力の解放をしていてください」
「準備は出来てる。クリム、ハヤテ、敵は三人ほどいる。ここから50メートルほど離れている所だ」
「何を持ってるのか分からねー。こっちから攻撃するか?」
「相手の攻撃手段を把握していない今、私達から仕掛けるのは止めましょう。攻撃のタイミングは向こうが仕掛けてきた時」
三人が会話をしていると、フジヒロが歩きながらこっちへ向かって来た。それを見たバカップルは驚き、急いでフジヒロの所へ近づいた。
「あの、俺達がどんな仕事をしているか分かりますか!?」
「危ないから下がっていてください」
「安心しろ。ここから50メートルほどに敵がいる。数は三人。お。私が着たのを察して動き始めたぞ」
この言葉を聞き、三人は後ろを振り向いた。そこには武器を持った三人の男が迫って来ていた。シュウは銃を構え、クリムは魔力を解放した。だが、男達の狙いはバカップルではなくフジヒロだった。
「しまった‼」
「フジヒロさん、逃げてください‼」
バカップルはこう叫んだが、フジヒロはその場から逃げず、構えをとっていた。
「私は逃げない。共に戦おう」
「ヒャッハー‼ 見たことあるぜ、こいつは冒険家気取りのフジヒロだ‼」
「俺達に勝てると思ってるのか?」
「あの世で自分はバカだったって愚痴を呟いてろ‼」
男達は叫びながら、フジヒロに攻撃を仕掛けてしまった。だが、フジヒロは近付いた一人の男の腹に目がけ、強烈なパンチを繰り出した。
「グゲェ‼」
殴られた男は小さく悲鳴を上げ、その場にうずくまった。フジヒロはその男を強い蹴りで吹き飛ばした。
「はん。一人倒したところで調子に乗るなよ‼」
別の男は魔力を開放してフジヒロに襲い掛かったが、フジヒロはその男の右腕を掴み、そのままへし折った。そして、後ろに背負い投げした。
「カッハァ‼」
「次はお前だ」
フジヒロがこう言うと、残った一人は後ろに後ずさりし始めた。それを見て、フジヒロはにやりと笑ってこう言った。
「どうした? お前達は私に勝てると言ってたが……嘘だったのかな?」
「き……聞いてないぞ‼ こんなに強い奴がいるなんて‼」
「ほう。負けを認めるのか」
この言葉を聞き、残った一人の表情が変わった。怯えた顔から、怒りで鋭い目つきへと。
「この野郎‼ ざけんじゃねぇぞ。ブラッドデスをなめるんじゃねぇ‼」
両手にナイフを持ち、フジヒロに斬りかかった。フジヒロは襲ってくるナイフをかわしつつ、男のナイフを持つ手を手刀で攻撃した。
「ガァッ‼」
攻撃を受けた男は、両手からナイフを落としてしまった。その隙にフジヒロは男の懐へ接近し、強烈なストレートを放った。
「が……はぁぁぁ……」
男はうめき声を上げた後、その場に倒れた。
「ふぅ」
戦いを終えたフジヒロは、ゆっくりと息を吐いて態勢を整えた。このバトルを見ていたバカップルは、互いの顔を見合わせながらこう言った。
「この人一人で何とかなるんじゃないか?」
「もしかしたら私達より強いですよ。護衛なんていらないような気がします」