表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/448

探検隊の護衛

 その日の夜、バカップルはリナサと共にとある番組を見ていた。


「すごい番組ですね。これ、ヤラセは絶対ないですよ」


「これについていく番組スタッフや同行者もいい度胸してるよ」


「これで死人が一切出ないのが不思議」


 今彼らが見ているのは、未開の土地を探検する番組である。名前はフジヒロ探検隊。人気があるタレントが未開の土地に入り、冒険していくというものだ。たまに似たような番組が他局でやっているのだが、どれもこれもスタッフによるヤラセ演出が目に見えているので、批判が出ている。しかし、この番組はヤラセとか一切ない本気の冒険番組である。


 しばらく番組を見ていると、隣の部屋にいるハヤテの叫び声が聞こえた。


「何やってるんだあいつは?」


「きっと同じ番組を見て興奮してるんだよ。ハヤテ、この番組好きだから」


「男の子って冒険とか好きですからねー」


 クリムはクッキーをつまみ、こう言った。




 翌日。バカップルとハヤテ、ナギがタルトに呼び出された。


「シュウ達を呼んだのはほかでもない。エイトガーディアンに長期の依頼が入ったからだ」


「どんな依頼なの?」


「シュウ達も見ていると思うが、フジヒロ探検隊という番組に協力してほしいとのことだ」


「マジすか!? あのフジヒロ探検隊に俺達が出れるんですか!?」


 ナギの横にいたハヤテは目を輝かせてこう聞いた。ナギは少し黙んなさいと言ってハヤテを下がらせ、タルトは咳ばらいをして話を続けた。


「次の収録でアバジョンというジャングルを探検したいそうだ」


「知ってます。アバジョンは未開のジャングル。調べようとした学者が多数いますが、中に入って生きて出てきた人はいないという……」


「そう。別名人喰ジャングルだ」


 この話を聞き、ナギは冷や汗をかいた。


「本気なんですか? そんな物騒な所で収録とか。怨念とかいますよ絶対」


「危険だから我々に依頼が来たんだと思う。ナギ、もし無理であればこの依頼を降りてもいいんだぞ」


 と、タルトは優しくこう言った。ナギはその優しさに甘えようと思い、この依頼を降りようとした。しかし。


「お前ビビってんのか? あーあ、流石のナギ様もこんな物騒な依頼は出来ないんですかね~?」


 ハヤテがナギを挑発するようにこう言った。この言葉を聞き、ナギの顔全体に青筋が走って行った。


「ナギ、落ち着けよ」


「先輩の言うとおりですよ。落ち着いてください」


 ナギの怒りが大爆発しそうなことを察したバカップルはナギを抑えようとした。だが。


「降りてもいいんだぞ~。その代わりビビりでチキンなナギ様の代わりに俺がちゃ~んと依頼をこなすからよ~」


 この一言を聞き、ナギの怒りは大爆発を起こした。


「やってやろうじゃないの‼ ああぁ? なめんじゃねーぞクソガキ‼ 怨念だか因縁だかオーメンだか知らないけど、私の手でひねりつぶしてくれるわ‼」


 という事で、今回の依頼はシュウとクリムのバカップルと、ハヤテとナギが行く事になった。


 話を終え、未だに口喧嘩をしているハヤテとナギを見て、タルトは大きなため息を吐いた。


「大丈夫かな……」


 少し不安だったのだが、フィアットとキャニーは別の依頼で出かけており、ボーノはギルドの新人戦士の育成に回っている。リナサは休日。スネックは今だに復帰のめどが立っていない。この状況で頼れるものがいないのだ。


「無事に帰ってきますように」


 と、タルトは両手を合わせて祈った。




 数時間後、シェラールの前に大型の車が到着した。その車にはフジヒロ探検隊のマークがついていたため、シュウはすぐにこの車が依頼主だと把握した。


「すげー、本物の探検隊のマークだ」


「昨日、テレビで見たものと同じですね」


「ああ。きっとこの中にフジヒロさんがいるんだろうな」


「そう。私がフジヒロだ」


 車の中からフジヒロが現れた。背丈は今回の参加メンバーで最年長のシュウを超えており、体全体鍛えられているせいか、筋肉ムキムキだった。


「生で見るとすげー迫力」


「先輩より大きい」


「君達がエイトガーディアンか」


「俺とクリムは臨時ですが……」


 そう言ったシュウを見て、フジヒロは驚いた表情をした。


「おお‼ 君達はあの有名なギルドのカップルではないか‼ 活躍は耳にしているぞ。まさか君達が私と共に冒険してくれるとは。心強い‼」


 と、フジヒロはバカップルの手を握った。かなり強く握られているせいか、二人は痛そうな顔をしていた。


「あの、二人とも痛そうな顔をしています」


「ん? すまん。つい興奮してやりすぎてしまった」


 離された手を見ると、かなり真っ赤になっていた。


「いいなー。俺もフジヒロさんに握手されてーよ」


 ハヤテは羨ましそうにシュウに呟いたが、シュウは赤くなった手をさすりながらこう言った。


「結構痛いぞ。まだ痺れてる……」


「見た目通りかなりタフで強い人ですよ。これなら何があっても問題はないと思います」


 クリムは赤くなった手に息を吹きかけながらこう言った。その後、フジヒロはシュウ達を車に案内し、運転手に向かってこう言った。


「さぁ行こう‼ 次の冒険地、アバジョンへ‼」


「アイアイサー‼」


 運転手は威勢のいい声で返事をし、車を走らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ