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特許申請へ

 キョーヒ製薬会社、ここは科学で薬を作り出すことでそれなりに有名な製薬会社である。そこの開発部トップである、バーメンがカッカしながら部屋中を歩いていた。


「全く、雇った盗賊ギルドの連中は戻ってこない、スパイの事はばれる……全くもう‼」


 あまりにもイライラしたため、彼は近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばした。中にあったゴミが散乱してしまったが、それでも彼は部屋中を歩き回った。その時、長身の男性が部屋に入って来た。


「あまりカッカしなさんな。何もかも悪い方向へ進んじまう」


「イーツさん……あんたか……」


 イーツと呼ばれた男性は近くの椅子に座り、バーメンにこう言った。


「俺の知り合いが全員捕まった。それに、スパイの事と盗聴器の事に感づかれた。それは知ってるな」


「ああ‼」


「奴らも余裕ぶってるのか、イチャイチャしてらぁ」


 と、イーツは盗聴器から聞こえるバカップルの声を聞きながら、こう言った。


「一体どうすればいいんだ!?」


「すぐにあの会社にいるスパイを戻せ。それと、あの会社が特許申請で動くまでこっちは何もしない」


 この言葉を聞き、バーメンは強く机を叩いた。


「あんたは一体何を言ってるんだ!? 何もしない? それじゃあ薬は奪えないじゃないか‼」


「スパイと盗聴器の事がばれた以上、下手に動くのはまずい。あいつらはナデモースの特許を申請するために、動き出すんだ。そこを狙う」


「……そうか……その方がいいな」


「奴らが動くまでは俺は待機してる。それじゃあな」


 そう言って、イーツは部屋から去って行った。1人になったバーメンは、大きく呼吸を吐いた後、椅子に座って落ち着いていた。




 翌日。社内を見回っていたバカップルは、小声で会話を始めた。


「人数がやけに少ないですね」


「急に会社を辞めた人がいたらしい」


「スパイの可能性がありますね」


「ああ。タブレットの件だけど、やっぱり盗聴器が仕掛けられてた」


「やっぱり。じゃあそれを用意した人も……」


「退社したんだろうな」


「こっちの情報が向こうにある以上、あまり動きは出来ませんね」


「だけど、あいつらも俺達の強さを知って下手に動かないだろうな」


「確かに。とりあえず、特許申請までちゃんと見張りをしていましょう」


「ああ」


 と、かなり真面目な会話をしていたのだが、手を握っていたし、体もかなり密着させていた。しかもクリムはにやけ顔で自分の頭をシュウの肩に置いている。ジャックは遠くからバカップルを見て、小さく呟いた。


「あいつら仕事してるのか?」




 数時間後、シュウが持つボーレのタブレットに連絡が入った。


「日付が決まったんですかね」


「かもな」


 タブレットを開き、ダスヤからの連絡を確認した。


「特許申請をする日を決めたんですね」


「明日の午後か」


「先輩、明日が勝負所かもしれませんね」


「ああ」


 その後、バカップルはジャックとミゼリーと合流し、話し合いを始めた。


「明日の午後になったわね」


「なぁクリム、この情報があいつらに伝わったってことないか?」


 ジャックがこう聞くと、クリムは少し考えて答えた。


「可能性はあります。伝わってなくても、特許庁までの道のりで奴らは襲ってくるでしょう」


「ジャック先輩、ミゼリー先輩、ボーレ本社から特許庁までの地図を手に入れました」


 シュウは持っていた地図を広げ、クリム達に見せた。地図を見たクリムは、少し広い所を指さしてこう言った。


「襲ってくるとしたらこのあたりだと思います」


「ハバノゲン林……林か、身を隠すにはうってつけの場所だな」


「戦闘になったらどうする?」


「俺とミゼリーで行くぞ。シュウとクリムはナデモースの護衛を頼む」


「分かりました」


「了解です」


 会話を終えた後、四人は部屋に戻り、明日の準備を始めた。




 その日の夜。イーツはビル街の裏道にいた。


「遅いな……」


 誰かを待っているのか、小さく愚痴をこぼした。しばらくし、イーツは煙草を取り出して火を付けようとした。その時、ガラの悪い二人組の男がイーツに絡んで来た。


「オイおっさん、いい服着てるじゃねーか」


「その服を俺達に恵んでくれねーか? もちろん、ポケットの中身も一緒にな」


「貴様らにやるような物は何一つない。失せろ」


 イーツの言葉を聞き、カチンときた男の一人は右手に炎を発し、イーツにこう言った。


「こう見えて俺は魔法を使えるんだ。丸焦げになりたくなかったら貴様の身につけているものを全て寄こせ‼」


「俺も使えるぜー。びりっびりに痺れそうな雷をねぇ」


 別の男が、体中に雷を発しこう言った。魔力を解放した二人組を見て、イーツは呆れたようにため息を吐き、その場から去ろうとした。


「逃げるってのか? 逃さねーぜ」


 男は火を放ってイーツを襲ったが、その火は何かでかき消されてしまった。


「なっ……」


「その程度の火なら、小さな風で消す事が出来る」


「風だと……まさかお前も……」


「魔法使いさ。君達と同じくな」


 イーツはそう言うと、風で二人組の衣服をバラバラに切り裂いてしまった。


「うわあああああああああああああああああああああああああああ‼」


「怖いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 服を切り裂かれた男達は、怖さのあまり逃げてしまった。イーツは逃げる男達の背中を見て、欠伸をしていると、別の男が彼に話しかけてきた。


「旦那、アンゼです」


「情報屋か。少し遅かったのではないか?」


「少し道が混んでましてねぇ。タクシーで来るんじゃなかった」


 短い会話の後、イーツはアンゼにこう尋ねた。


「で、ボーレ本社の特許の話はどうだ?」


「明日の午後になるそうです」


「経路図はあるか?」


「もちろんです」


 アンゼはこう言った後、経路図をイーツに差し出した。そして、イーツは数枚の札束をアンゼに渡した。


「ヘッヘッヘ……どうもありがとさん」


「夜道には気を付けろよ」


「分かってますよ、旦那」


 アンゼはそう言って、去って行った。地図を手にしたイーツも、急いでその場から去って行った。

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