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格の差

 本気を出したクリムを前にして、ナフは今だに余裕の表情を崩していなかった。心の中で「たかが小娘が本気を出したところで、この俺に敵うわけがない」と思っていた。炎の渦に飲み込まれてしまったが、水の魔法を使ってバリアを展開し、ダメージを受けないようにしていたのだ。


 どうやってこの場から脱出しようと思っていると、水のバリアが徐々に弱くなっていくのを感じていた。


「魔力が足りなかったか?」


 小さく呟き、ナフは魔力をさらに解放した。しかし、バリアの強さはあまり変わらなかった。それどころか、更に弱くなっている。


「嘘だろ」


 まずいと思ったナフはバリアを解除し、開放していた魔力を爆発させて炎の渦から脱出した。一旦引いて態勢を整えようと思っていたのだが、ナフの頭上には風の刃が無数に現れていた。


「見つけましたよ」


 空中に浮かんでいたクリムが、風を操ってナフに攻撃を仕掛けた。前に風の刃によって受けた傷を狙って攻撃を仕掛けてきたためか、ナフが感じる痛みは更に強くなっていた。


「グガァァァァ……イテェ、イテェよ‼」


 体から血を流しながら、ナフはその場から逃げようとしていた。しかし、その後を追うようにクリムが発した水が足元に流れてきた。


「水……」


「凍りなさい‼」


 クリムの叫びの直後、濡れてしまった足の周りが一気に凍り付いた。ここまでクリムはナフに猛攻を仕掛けてきたのだが、息が乱れてはいなかった。それどころか、さらに魔力が強くなっていた。


「おいおい……あれほど暴れておいて、まだ魔力があるのか……」


「言ったでしょ。これでもまだ三割ほどしか力を出していません」


「冗談かと思ったけど、まさか本当とはな……」


 ナフは諦めたようにこう言った。だがしかし、ナフは尻ポケットにある小さな折り畳みナイフを手にしようとしていた。


「まいった降参。もう何もしないよ」


 と言って、クリムの戦意を解こうとしていた。が、クリムはナフが言った言葉を信頼していないのか、さらに魔力を開放していた。


「降参するなら、その尻ポケットにある物を見せなさい」


「ばれてたのか‼」


 ナフはナイフを手にし、クリムに向けて投げつけた。が、遠くから飛んできた銃弾がナイフを弾き落とした。


「なっ!?」


「今のは先輩が狙い撃ちしたんです。あなたがバカにした考え無しに銃を撃っていたって罵倒していた相手です」


「あの距離から飛んでくるナイフを撃っただと!?」


 遠くにいるシュウを探そうとしたのだが、シュウの姿は見えなかった。あの坊主、あれほどの腕があるのかと思っていたのだが、クリムはポケットからある物を取り出した。


「そして、もう一つの作戦がこうです」


 そう言ってクリムはシュウが外していた弾丸を宙に浮かべていた。


「先輩が言ってたんです。弾丸を外した場合はクリムが拾って、武器として再利用してくれと」


「外した後の事も考えていたのか……」


「それと、エイトガーディアンを相手にしてたってことも忘れないで」


 頭上からリナサが現れ、光を放った。強烈な光はナフにダメージを与えていた。ナフは何とか光から逃げようとしたのだが、そこにクリムが放った銃弾がナフの脇腹を貫いた。


「ガアアッ‼」


「これで終わりです」


「これ以上暴れたら、もっと酷い事をするからね」


 魔力を解放したクリムとリナサが近付き、ナフにこう言った。




 その頃、狙撃を終えたシュウは無人アパートの屋上から降り、コンリがいる場所へ戻って行った。


「おおシュウ。ご苦労だったな」


 そこにいたのはタルトだった。シュウはタルトに近付き、話しかけた。


「雑魚の戦いは終わったの?」


「ああ。それでコンリの後を追って来たんだが、まさか窒息死寸前になってたとはな。だが、何で周囲が濡れているんだ?」


「リーダー格の男が魔法を使って、こいつの周りに水の空間を作ったんだよ。あいつを倒さないと解けないから、クリム達と追ってた」


「で、お前は何をしてたんだ?」


「クリムがマジモードになってたから、後ろから援護射撃をしてたよ。リナサにクリムの事を任せて、俺は遠くにいた」


「そうか。下手をしたら魔法の攻撃に巻き込まれたかもしれないしな」


「クリムは本気になったら周りが見えなくなるから」


「せんぱーい‼ 終わりましたよー‼」


 会話中、クリムとリナサが戻ってきた。二人はナフを縄で縛り、引きずりながらやってきた。


「かなりダメージを与えたようだな。かなり怯えているぞ」


「ちょっと本気を出したので」


「ちょっと? あれでちょっとなの?」


 一部始終戦い様子を見ていたリナサは、少し冷や汗をかいて呟いた。クリムは荒く深呼吸をしているコンリを見て、ニコッと笑った。


「あのロリコンクソジジイも運よく生きてますし、仕事は終わったも当然ですね」


「ああ。とりあえずシュウ達はこいつらを連れて先に戻ってくれ。私は事故処理の方を行うから」


「分かりました」


「うん、分かったよ」


 その後、戦いを終えたシュウ達はギルドが手配した車が来るのを待った。しばらくして手配した車と護送車が到着した。シュウ達とコンリは手配した車に乗り、倒したナフは護送車に入れられてどこかへ行ってしまった。


「さ、あともう少しで依頼も終わりますね」


「だな。やっと終わるんだな」


 と、シュウは大きな欠伸をしてこう言った。

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