第三話「俺の持ってるスキルで世界を救うって」
異世界に召喚、また転生されてからどれだけの時間がたっただろうか。未だに自分が異世界にやって来たという自覚がない。
スマホを取り出してみても、電波は繋がらない。俺を召喚した王と名乗るおっさんに「お疲れだろうと思うから、まずは部屋でゆっくりと休みなさい」と言われ、用意された部屋のベッドの上で倒れるように寝転んでみたものの、やることがない。
時間もあることだし俺は状況を整理することにした。
俺が召喚された国は「オフドン王国」と言うらしい。この国の名物は豊な自然らしい。人工も少ないが皆笑顔で仕事や生活をしているらしい。俺からしてみれば田舎だし、ふるさとに似ている雰囲気があって少しだけ心地よい。
だが、ある日を境に魔王が長き眠りから復活したらしい。その魔王が目覚めるや否や周辺王国を侵略、略奪を行っていた。
王は最初、「さすがに回りが自然しかない我が国は侵略させることはないだろう」と魔王が復活して思っていたらしいが、魔王の軍勢がオフドンに向けて侵略を進めることをしり、焦り急ぎ異世界から勇者を召喚することを決めたらしい。
しかし、自然しか無い国に異世界から俺を召喚できるかという疑問を持っていた。
この国には遠い昔、異世界から一人の人間を召喚したという伝説があった。その時に使ったと言われる「OEW」という技術。これを使い、今回の魔王襲撃に対し俺を召喚したらしい。
ちなみに「OEW」だが「Open Esekai World」の頭文字を取り「OEW」と名付けたらしい。というか、この技術があるからこそ魔王がこの国に進行を進めてきたのではないかと俺は思うんだが...
「勇者様。失礼してもよろしいでしょうか?」
考えを整理してると、ドアの向こうから声が聞こえてきた。なんだ?何かあったか?
「大丈夫ですよ。」
「失礼いたします。」
声の主は、メイド服を来た美少女だった。目鼻立ちはとても良く、む..胸もある、背は低めだがかなりスタイルの良い女性がそこにはいた。しかも、獣耳!この時、俺は異世界に改めてきた実感をしたのであった。
「獣耳メイドキタコレ...」
「?今なにかおっしゃいましたか?」
「何も言ってないよ。」
心の声が漏れてしまった。危ない、危ない。
「そうですか。では、改めて。私、この国でメイドを勤めておりますシャーリと申します。以後、お見知りおきを。」
シャーリと名乗る女性は丁寧な挨拶と姿勢で俺の目の前に現れた。
「シャーリさんよろしくお願いします。」
「さっそくですが勇者様。失礼します。」
そういうとシャーリさんはいきなり俺の唇にキスをして来た。
え....?
キキキキキキキキ、キススススウウウウウウウウウされた!ちょっとまって!いきなりなに!キス?何でキスをした?え?え?
「なんでキスをされたかわからない顔をされていますね。」
「そりゃね!いきなりキスされる意味がわからないもん!」
しかも俺にとってはファーストキス。美少女にキスをされて嬉しくない人間がいないはずはないが、困惑してしまってそれどころではない。
「勇者様の能力を調べるにはこれしかないもので。」
キスで能力を調べるって。どんなシステムだよ。この世界。
「さっそくですが調べた結果を...」
キスを何ともなかったようにシャーリさんは俺の能力を延べていった。
身体能力、計算能力に関しては平均。異世界特有の魔法スキルは1。ちなみにスキルは5段階評価で5が最高だ。なので1の俺の魔法スキルは最低クラス。頑張って手から小さな炎を出せるくらいらしい。異世界特有の魔法が使えないのは残念だ。
また攻撃や防御のスキルも1という仕打ち。
「はっきりと申し上げると召喚された勇者様のスキルでは世界どころか周辺の街すら救えないと思います。下手したら王国から一歩外に出て会うモンスターに遭遇したらやられるかもしれない。そのようなレベルです。」
うっ...そんなに俺は弱いのか。ほんとなんで召喚されたんだろう。
「シャーリさん。僕に何か良いスキルはないんですか...」
藁にすがるような思いでシャーリさんに聞いてみる。
「ただ、勇者様にはクリエイティブスキルという固有スキルがあり、これが最高の5です。」
クリエイティブスキル... 武器や防具を作るためのスキルらしい。これが5なのか。つまり俺は先頭で戦うわけでもなく、後方で支援するのでもなく、戦う以前の武器や防具で力を発揮するらしい。これが勇者なのか。おとなしく店でひたすら武器や防具を作ってた方が身のためだ。
「クリエイティブスキルでどうやって世界を救うんですかね。大人しく街で武器や防具を作った方がいいですよね。」
「そんなことはないです。むしろ、このクリエイティブがあれば勇者様はさらに力を増すことが出来ると考えています。」
え?クリエイティブスキルで俺は力を増やすことが出来るの?そんなことあるの?
さらにシャーリさんはこう付け加える。
「魔王の力を食い止める最大にして最強のスキルが、このクリエイティブスキルなんです!」
俺の持っているスキルで世界を救える?
そんなことがあるのだろうか...