第一話「俺という人間について」
「なぜ貴方は御社を受けようと....」
「学生時代頑張ったことは...」
同じような言葉の繰り返し。なぜ、就職活動の面接で面接官は同じようなことを学生に聞いてくるのか。同じような言葉を言うだけなら面接官は人間じゃなくてロボットでもいいじゃないか。機械が適正判別してくれた方がまだやりやすいよ。
それでも俺は答える。就職活動という戦いに勝たないと、今後の人生が成り立たない、生きていけない。息を吐くように答える
「私が御社を志望した理由は....」
『慎重に判断した結果、今回は不合格とさせていただきます。』
また、不採用通知か。というか、不採用通知って幻のアイテムかなんかじゃなかったか?ゲームやアニメの世界での不採用通知は最強だろ?だとすると俺は就活生の最高ランクにいるんじゃないか!!どうだ!全国の就活生!俺を誉めろ!称えろ!
...とこんな風にアホなことを言っている俺は「井上 翔」 。絶賛就職活動中の大学4年生だ。
「さすがに10月になってまで内定0はまずいよな」
時はすでに10月。世の中では内定式がもう始まっている頃だ。大学のサークルやゼミでアホみたいに騒いでたやつらもすでに内定を貰っている。会うたびに「井上はまだ内定ないのか?内定なくて泣いてないのか?」と言われることにも最初は腹が立ったが、今では馴れてしまった。馴れてはダメなんだがな...
「とは言ってもこの時期にまだ採用活動をしている企業様も少ないよな...」この時期、就職支援課に言っても募集要項は少ない、就職サイトを見ても企業は少ない。あるとしても「マイホームな職場です!」や「明るく楽しい職場」という見るからに怪しいと思う企業しかないわけなんだが。10月まで内定がない俺がそんな贅沢を言える立場ではないのはわかってるんだが。かといって就職して、すぐに辞めると職歴に響いてしまうし...
頭を抱えてると一本の着信がかかってきた。相手は「井上 萌香」。俺の妹だ。またなんか言われるだろうな..電話に出たくないし、ここは拒否しよう。拒否したのだが、また着信。拒否し、また着信。この繰り返しに嫌気がさしてしまった。どうせこの繰り返しだろ。覚悟を決めて電話に出るか...
『バッカァァァ兄!やっと電話に出た!!何度、電話を拒否したら気が済むの?バカなの?アホなの?あ、バカだからこの時期になっても内定0なんだよね??』
開幕、うるさい声で俺をバカにしてくる。こいつは本当に兄をなんだと思ってるんだ。せめて人間と思っててほしい...
「チッ、うっせぇな。で用件はなんだ?」
『はぁ?可愛い妹から電話が来て喜ばないの?『お兄ちゃん、可愛い妹から電話が来てもうハートがドキドキ!』とか普通言うでしょ!』
この妹は...まぁ、容姿は仮にも可愛い(多くの男子から告白をさせれてるそうだが)が、こんな本性の性格を知ったときに回りの男たちはどうなるのか気になるところだがな..
「オニイチャン、イモウトカラノデンワキテウレシイ。モウハートドキドキ」
『片言で言われても嬉しいと思わない。このバカ』
「で、用件はなんだ。俺も忙しいんだが。」
『忙しいって何が忙しいんだがね... お父さんたちがお兄ちゃんの就職状況気にしてたよ。10月になって内定0はどうなんだって..』
だよなぁ... やっぱ心配されてるよな...
「まぁその親父たちに伝えてくれ。年内までにはなんとかする、って」
『本当に年内に内定貰えるか心配だよ... ねぇ、こっちに帰って来る気はないの?』
俺は大学のために親元を離れ、一人で今暮らしている。俺の実家はいわゆる田舎だ。周りは田んぼか山。電車もバスも本数は少ない。電柱もなく夜は真っ暗だ。そんな田舎に嫌気が指して、都会の大学に進路を決めた。
「田舎で生活するのは真っ平御免だ。戻って稼げなきゃ意味がない。俺はこっちで稼ぎたいんだ。」
『稼ぐとか言ってられる時期ではないと思うんだけどね... とりあえず、お父さんたちが心配してたから今度連絡してあげなよ。』
「あぁわかった。何気にお前も心配してくれてることがわかって嬉しかったわ。サンキュウな」
『心配というより内定がないお兄ちゃんが身内にいることが恥ずかしいだけだよ...でも頑張ってね。じゃあね。』
そして電話が切れた。ここまで親や家族に心配されてるんだし、自分のなかでも何かけじめをつけなきゃな...
けじめを考えるよりも先に行動をしなきゃな。さてと、大学に足を運んで募集要項を見てみますか。そうして、俺は大学に向けて家の扉を開けた
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「ダメです!魔界の進行が止まりません!」
「敵勢1000。いや10000。それを越えてます!」
「王よ!このままではわが王国は滅びてしまいます!」
「やむを得ん。OEWを解放するのじゃ!」
ここはとある王国。
魔界という概念が存在する世界。
そして、ここに一人の勇者が現れるひとつの世界。