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第六章 覚悟

 おーーーーーーーーっ久しぶりの投稿になります!

 今までよりもながーーーくなってしまいましたが、気に入って頂けると幸いです。

 現在地、崖下。

 木製の簡易テーブルとイスを用意し、アップルパイと紅茶を堪能し休憩している。ちなみに、簡易テーブルやらアップルパイ等といったものはヨハナの収納魔法によって準備することができた。ヨハナ曰く、温度と状態を保ち続けることが出来る為使いようによっては、便利な魔法だという。 僕からすれば、魔法というものを使える時点で便利だと思うのだけど……。


 「この後、この崖を登りましょう」

 そういってヨハナは真横にある崖に触れる。幸い岩肌が荒い為登りやすくはなっている。

 

 アップルパイを口に運ぶ。

 

 「登った後はどうするの?」


 「前にも言ったと思うけど討伐しに行くわ。あなたは安全な所で隠れてて。武器は護身用の為よ。決して戦おうとは思わないで」


 「でも……ヨハナの力になりたい!」


 「相手はスライムみたいな弱いモンスターじゃないのよ?あなたはこれまでに戦ったことがあるの?武器を手にしたことがあるの?」


 アップルパイを口に運ぶ。

 ……。


 「話、聞いてる?」

 ジト目で僕を見るヨハナ。


 「分かった、ヨハナの言う通りにするよ」


 「えぇ、その方がいいわ」


 そして、再度アップルパイを口に運ぶ。




___________________________





 アップルパイと紅茶を嗜んだひとときとは一変、断崖絶壁の中間地。恐らく高さ45m程。

 僕が先に登り、ヨハナが少し後ろから僕に続く。


 元々はヨハナが最初に登っていたが、直後アクシデントが発生してしまった。

 赤い布地に包まれ、隠されていた下半身、そう楽園を唯一目に焼きつけることができる下からの目線。1層深みと重みを込めて……すなわち、これは女性の――ダァァァァァァァ。

 僕の尻に直撃する弱魔法。

 不意打ちと驚きによる展開で悲鳴とともに僅かに崖下へ滑り落ちる。


 「な、何するんですか! 落ちたら洒落にならないですよ!」


 「あら、先程不埒な思惑に頭を働かせてたのは誰かしら?」


 「……声に出てました……?」


 「出ていないわ」


 「……心が読めるの?」


 「まさか、そんなこと魔法を使っても出来るわけないじゃない」

 そう言って、クスクスと笑うヨハナ。

 あ、いや訂正しよう。笑顔になっていない笑顔で笑うヨハナ。


 「それはさておき……もう忘れなさい」


 「はい、すいませんでした……。ところで……」

 僕の話を遮って、ヨハナが問う。


 「まだ、何か用かしら?」

 早く終われと威圧の笑顔。

 

 尻に麻痺系の痺れを感じつつ、

 「いえ、なんでもないです」


 麻痺は罰だろうな……。

 これ以上の詮索はヨハナにホントに殺されかねないので、無理やり思考から弾き出し、登ることに専念した。




___________________________





 と、アクシデントを乗り越え、大きな壁もとい、絶壁を乗り越えることに成功した。中腰で呼吸を整え、悲鳴をあげていた体中の筋肉に休息を与える。


 「ヨハナは大丈夫なの?」

 ぜーぜーと息を切らす僕とは違い、息があがらず、疲労を感じさせないヨハナ。


 「あー……普段からトレーニングをしてるからかしらね」






 北東に進むこと15分。モンスターや敵と遭遇することも無く、すんなりと目的地に到着してしまった。


 「まずは偵察をしましょう。いい?何があっても、戦いに行こうとしないでね?」


 首を縦に一振、緊張で開かない口の代わりに同意。

 鼓動が早まり、うるさい程に耳に刻まれる。

 

 (しげ)みに隠れて、周辺の観察を行う僕とヨハナ。


 「見た所ゴブリンが1,2,3,4匹ね。」


 目の前には体が緑に染まったモンスター、ゴブリンが。

 130cm程の背丈で全て痩せ気味。額に短い角を持ち、片方の肩から汚らしい布キレを纏っている。

 僕のいた世界の常識が通じるなら、ゴブリンは鳥類系のモンスターでなければドラゴン、魔族では無いはずだ。


 「ヨハナ、なぜゴブリンがいるの?」


 口元に手を添え思案するヨハナ。

 「敵は魔族の可能性が高いわね。魔族は他種族を支配して、駒にするものもいるわ」


 僕達がここにいるとも知らず、開けた地で各々に過ごすゴブリン。寝るやつ、木を石で削るやつ、言葉?擬音?を交わすやつ。


 「先に進みましょう」


 音を立てずにその場を去る。

 地面が剥き出しになっている直径200mの円形の地。その淵に当たる部分に僕達は位置している。所々、程よい量で木が植えられている。

 そのおかげで整地されたこの地を一度に見渡すことは出来ない。


 周囲に気を配りつつゆっくりと、音をたたせずに進む。

 数m移動するだけでも、一苦労だ。目の前のゴブリンがこちらに気づくかもしれないし、偶然にこちらに歩み寄ってくるかもしれない。目的である敵、恐らく魔族であろう敵を確実に倒す為、無駄な衝突は避けたい。だって、異変に察知した敵が勘づくかもしれないじゃん?


 徐々に緊張に耐性がつき始めたことを実感。

 鼓動が落ち着き、適度なリズムを取り戻しつつある。


 数10m程進むと、奥の景色を隠していた木を避けることが出来た。

 しかし、そこは――


 「集落?ゴブリンの?」

 無意識に出た言葉。(わら)を編まれたものや木を組まれて作られた家が視界に無数に存在。そして、無数のゴブリン。少なくとも両手で数えられるレベルではない。外には洗濯物が干され、畑が存在し、キャンプファイヤーでもしたような跡。獣を丸焼きにして食べる為の木を組んで作られた道具、飼育される家畜。


 「ヨハナ、ゴブリンって全部こんな感じなの?」


 「……。少し奥まで見てくるわ。あなたはここで待ってて」


 そういってヨハナは再び音を消し、前へ進んでしまった。


 僕は再び茂みから観察する。と、その時――


 「え!?お、女の子!?」

 目の前20m程。棍棒(こんぼう)を持った三体のゴブリンが円を描くように位置し、少女はその真ん中に座り込んでいる。肩につかない程の長さの少女の茶髪は綺麗に手入れされている。

 

 「ま、まずいんじゃないか……?」

 三体のゴブリンは突如(とつじょ)ヨタヨタと円を描くように回りだし、一体のゴブリンが奇声を発する。少女は立ち上がり、そのゴブリンに向かい立つ。

 少女が立ったことで情報更に1つ。白いワンピースにピンクのリボンが申し訳程度に()い込まれ、茶色に染まる革製のサンダルを履いている。綺麗に洗濯されているし、かといってボロボロになっているわけでも無さそうだ。


 ヨハナは待ってろって言ったけど、少女が危ない……よな……。

 腰にさげた長剣メルトの柄を握る。響く鼓動。

 

 と、その時ゴブリンが棍棒を高く振り上げた。

 くそっ!ヨハナ、ごめん……。


 「ハァァァァァァァァァァァァァ!」

 悲鳴のような叫びとともに駆け出す僕。


 剣?使ったことないよ。持ったことすらないよ。


 現実の世界での、そして先までの異世界での出来事が走馬灯として記憶に描写される。


 頬を伝う涙。

 僕、これでいいんだよな……。せっかくの異世界転移、不意にしちゃったよな……。

 後悔……ヨハナに謝りたいかな……きちんと待ってられなかったや……。


 恐怖が一線を超え感覚が麻痺している。走りながら長剣を抜く。今まで読んできたラノベのキャラを戦闘を思い描く。

 せめて、少女が逃げられるように……。

 せめて、今まで誰かの為に何か出来るようなパラメータを持ち合わせていない僕に、唯一与えられたこの機会を活かかせられるように……。

 悔いとして残さないように……。


 恐怖?怒り?悲しみ?分かんないよ。

 剣を強く、もっと強く握る。切っ先を高く空に向ける。次に踏み込む足に重心をのせる。

 頬を伝う涙の感覚。


 目の前には驚愕を(あらわ)にしたゴブリン。そして、戦闘に備えようと棍棒を構えるゴブリン2匹。


 勢いよく足を踏み込み、同時に重心を移動。更に同時に剣を振りかざす。


 狙ったゴブリンの両サイド、2匹のゴブリンがクロスさせるようにこんぼうを重ね、僕の長剣を防ぐ。


 脳に(ささや)かれる。――エンチャント、強化の類――


 交差された剣と棍棒は互いに押し合う。気迫で押し合う。

 と、狙っていた1匹目のゴブリンが遅れながら戦闘に備える。僕の真正面、高くジャンプし、高く振りかざした棍棒が頭に直撃。クラりと意識が傾く。次いで、腕の力が抜け長剣が棍棒に押し返されるとともに、カウンターとして片方のゴブリンが僕に追撃。


 グハッ……。

 鳩尾に突きの一撃を喰らう。

 腹を押さえうずくまる僕に3匹のゴブリンが滅多打ちに棍棒を叩きつける。


 背中を激痛が貫く。

 クソッ……!ここまでなのかよ……。所詮、僕は――


 ――違う――


 脳内に囁かれる、しかしキッパリと否定された言葉に一蹴される。


 ――後に続けなさい。我が(めい)の元に命ず――


 誰かが僕に話しかけているのか。それとも妄想の類なのか。どちらでも、なんでもいい。この状況を打開できるのなら。根拠の無い、しかしなぜか信用するに足る声に僕は応じた。

 我が名の元に命ず。

 声として発せられない、しかし想いとして口から出る単語に周囲の環境が一変し始める。そして、ゴブリンが1歩後ずさりする音。


 ――我が身を焦がせ。我が身を焼き尽くせ。応じよ、魔精霊よ。仕えよ神獣よ。トランス・豪炎の冥者・リスティ――


 ほとんど同時に詠唱。

 疲弊仕切った体に身を悶えさせる熱さが駆け巡る。体を何かが焼き付くそうとしている。疲れ、蓄積されたダメージ、フィードバック、あらゆる苦痛に体が悲鳴をあげる。僅かに意識を保ち続ける。


 なんとか、立ち上がりゴブリンを一瞥(いちべつ)

 目を閉じ、脳に武器を思い描く。長剣、紅く染まりオーラを(まと)う、そんな剣をもっと強く、もっともっと強く思い描く。


 初めて使った詠唱。でも、どこか懐かしみのある……この詠唱……。


 ゆっくりと目を開け、思い描いた剣が右手に装備されていることを確認。そして、1匹目のゴブリンに突進。無駄のない動きで剣を僅かばかりさげる。そして、すかさず剣を前方に突き出す――と、脳裏に違和感。無理やり突きの一手を押し留め後ろにバックステップを踏む。

 そして、元いた場所に魔法が直撃。直径1.5m程の球形の魔法。いくつもの紫色をドリップしたかのように染まったエネルギーの塊。


 背後に感じた気配を確かめるべく後方を確認。そこには、3匹のゴブリンを遥かに上回る巨躯(きょく)をもつゴブリン。緑に染まる体はより暗い緑に染まり、右手には鉄槍。切っ先には紫色に着色された、恐らく毒であろうものが付着している。


 四方をゴブリンが包囲。剣を構える。


 と、巨躯をもつゴブリンが突進してきた。剣で薙ぎ払い、その隙をついたゴブリンが両サイドから棍棒の突きと打撃。それを薙ぎ払った剣の柄頭で打撃、足で蹴ることで回避。そして、立て続けに後方ゴブリンが突進、それを再度蹴りで一蹴。そして、巨躯をもつゴブリンが鉄槍を僕に向け再度突進。

 受け流すべく構える剣。


 と、少女が手を大きく広げ僕と巨躯をもつゴブリンの間に介入。


 「ば、ばか!出てくるな!」

 これでは、少女が!

 しかし、予想とは一変、ゴブリンは歩みをとめ鉄槍を少しばかり下げた。


 「もう、やめてぇぇぇぇぇぇぇ!」


 え?な、、、なんで……?

 少女は僕を正面から見据える。

 

 「お兄さん、このゴブリン達を虐めないで!」

 すみません!次回の投稿も未定とさせて頂きます。

 感想等頂けると励みというか、力になるので良かったらどうぞ♪

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