第24話 デジャヴの反対ってジャメヴって言うんだね
時は少し戻って1年のとある教室。
『えー、この時代に、ロシアは不凍港を求め南下政策を始めます。この時の…』
はぁ、授業って憂鬱。
おにいには会えないし、しおんお姉に全部教えてもらったし、正直言ってヒマ。
廊下を見ても、お兄なんていないのに。
え?お兄たちが歩いてる!あれ?でも待って。
なんなの?お兄の匂いが2人分する。
あのTシャツ着たのっておにい?
あれ?でも男子の制服を着ているのもおにいだから、おにいが二人!?
どういう事?おにいが二人で二人がおにいで…!
『みらいさん?どうかしましたか?』
「え?あ、いえ…なにも」
『そうですか?それじゃあ授業に戻りますね』
おにいが二人、おにいが二人、でもどっちが本物だろう?
どっちも同じ匂いがしているなんて。
でもどっちか偽物、ならあとで確かめなくちゃ。
おにいならあたしの気持ち…分かってくれるよね?
トイレから校長室へ戻る際中、寒気がしました。
なんでしょう、なんだか良くないことが起きようとしています。
なんとなくですが、なんだか良くないことが。
「千冬さん、どうしましたか?」
「アリアさん、なんだか寒気がしませんか?」
「なんですか急に?」
「何と言えばいいんでしょうか?なんだかよろしくない事が起きそうなんですよ」
「何を理由にそんなことが?」
「分かりませんが、なんとなく寒気がしたんです」
「でもそんなピンポイントで起こりますか?お昼なんですからお化けだって出ませんよ」
「そういう類のものではなく、もっと身近なものです」
「……?」
「私、なんだかわかるような気がします」
「ありささんも感じましたか?」
「はい、多分私の妹のみらいちゃんだと思います」
「みらいちゃん?」
「ありささんの妹で、ありささんを狙っているんです」
「狙うって、命をですか?!」
「え…?」
「はい…?」
「え?違うんですか?」
「はい、今のはありささんに恋しているって意味です」
「なんだそうでしたか、僕てっきり危ない方の事かと思いました」
「危ない方…」
「ありささんとみらいさんとで命の取り合いをしているのかと」
「したくありませんよ、そんなバイオレンスな事は」
「そうですよ、みらいちゃん以外にも、ありささんのお姉さん達も狙ってるんですから」
「なんだかアリアさんだけ話している内容が違う気がします」
「そしていつかはありささんのお嫁さんとして夜には愛を語り合い…フフフッ」
僕はアリアさんの発言に顔を赤くしました。
「あら、千冬さん、顔が赤いですよ?」
「い…いえ、僕は」
「良いんですよ、千冬さんもありささんと同じ匂いがして、まるで同一人物かのよう」
「いや、千冬くんの純潔は汚させないよ?」
いつの間にか、僕達の後ろにあさ姉が立っていました。
「あ、あなた!能力の証明に私達の下着を使うなんて最低です!」
「そうかな?別に皆に聞かれてもそこまで大したことじゃないと思うけどなぁ、それか伊織の配信を見ていたっていう方が良かった?」
「そ、そこまで知られていたんですか…」
「うん、ありさがローテーションでぬいぐるみにされてたり、アリアちゃんがありさの水着写真をベルちゃんから受け取ってたり」
『……』
二人は言葉が出ていません、そうですよね、だってバレるはずのないところまでバレてるんですから。
「そこまで記録されちゃってるんですか…アカシックレコードって」
「今の発言も記録されてるよ、今までに起きた事象や出来事が記されてるわけだからね」
「そう言われたら迂闊に発言できなくなっちゃいます」
「でもそれが見れるのはごく限られた者達だけだけどね」
「そのごく限られた者達に知られたくないんですよ!」
「そうなの?でもこれが見られる者達の中でも、この能力が覚醒しているのはあたしだけだから、君達の記録はあたし以外誰も見ないよ」
「そうなの?あさ姉」
「うん、皆はパラレルワールドの存在って信じる?」
「パラレルワールド?」
「簡単に言うと、もしもの別の世界ですよね?」
「うん、そのパラレルワールドの存在が、この記録とタイムマシンを使って証明することができるんだ」
「タイムマシンって、今の国宝に指定されている物ですよね?」
「そうなの?そんなものがもう開発されたの?」
「あ、それあたしが小3の時に創った夏休みの工作ね」
「つくったの字が他のみんなと全然違う…」
「創造しちゃってますしね」
あさ姉の夏休みってどんなものだったんだろう?
「でも、それ等を使ってどうやって証明するの?」
「タイムマシンは、未来と過去を行き来するための装置と思われているけど、本当はちょっぴり違うの」
「というと?」
「タイムマシンは時間旅行する物じゃなく、未来の事象に変更を加える物なんだ」
「未来の事象に?」
「うん」
「変更を加える?」
「そうそう、だから過去に戻って、本来していた行動と別の行動をして戻ると、本来の記録と全く違う未来が訪れたんだ、故にアカシックレコードは行動によって全く別の事が書かれるんだ」
「それがパラレルワールドの存在の証明ってこと?」
「うん、だけどね、その記録を見るには、その時空を持つ空間に居なきゃいけないの、でもこの時空に居て、尚且つ記録が見られるのはあたしだけだから、他の観測者からは何も見えないし感じないってこと」
「だったらちょっとは安心かな?」
「知らない人に見られているわけじゃないからね、と、やっと到着だね、いやぁ学園に沢山の物を取り込んだ結果すごく大きくなっちゃって、あたしが設計したとはいえ色々と大丈夫なのかな?」
「この学園を設計したのってお母さんだったの?!」
「うん、千冬くん達が学校へ行っている最中に10分かけて書いた自信作だよ」
「自信作に費やす時間が短すぎます…」
「もっと考えて書こうよ…」
「でももう手遅れだし、色々と盛り込んだ結果だからね仕方ないね、それじゃあ戻ろっか」
「うん」
「はい」
「はい」
あさ姉が扉を開けて、僕達は校長室に戻りました。
「あ、おかえりー」
「思ったより遅かったね」
「ただいま戻りました」
「ただいまです」
「ただいまー」
「んで、どうだったの?」
「本当に言い当てていました」
「僕の場合は記録を見なくても、昨日あさ姉と千秋お姉ちゃんとで一緒にお風呂に入ったからわかるはずなんだけどね」
「いつも入ってるの?」
ひなさんが聞いてきます。
「はい、昨日だけじゃなくほぼ毎日一緒に入ってます」
「千冬くんと千秋ちゃんは裸の付き合いだからね、色々曝け出すことができるから気が楽なんだよ」
「だからって時折風呂場以外で何もかも曝け出してもいいって訳じゃ無いんだよ?」
『今までどんな生活を送ってきたんですか!?』
フィリアちゃんとアイリスちゃんが食い付いてきました。
なんだか目が血走っているようにも見えます。
「お風呂以外に千冬お兄様に裸を見せているんですか!?」
「まぁお風呂以外に脱いではいるけど」
「何時です!?何時なんです!?!?」
今までに二人から感じたことのない程の迫力を感じました。
「二人が寝たころにね、千冬くんが寝言でお母さんって言いながらあたしに抱き着いてくるの、その時に千冬くんの顔があたしの胸の辺りに来るから、上を脱いで胸を触らせてあげてたの」
「僕、無意識のうちにそんなことしてたの!?」
僕は顔が真っ赤になりました。
ありささんやアリアさんの場合とは違って、これは僕が知らない事なので確証はないんですけど、あさ姉が言うからには本当だと思います。
「今までずっと抜け駆けを…」
「それも千冬お兄様の知らぬうちに…」
二人から真っ黒い負のオーラを感じます、これで何回目でしょうか?
「でもその時の千冬くんはとても幸せそうだったよ?」
「千冬お兄様?」
「いやいや知らないよ!だって僕、その時はいつも寝てたんだよ!?」
「私達にはもう興味はないと?」
「ううん、二人とも大好きだよ?だって血の繋がった妹なんだもん」
「では何故先ほど聞いた行動を?」
「え、えっと、多分寂しかったから…かな?」
「寂しい?」
「う、うん、だって僕のお母さん、随分前にこっちに転生してたわけだし、暫くお母さんの顔を見てなかったから、それで…」
「それで?」
「え、えーと…」
ど、どうしよう、この先何言えばいのか分かんないよ…。
た、助けてあさ姉!
「二人とも、ちょっと外でお話でもしよっか」
「はい?」
「なんなんです?」
「いいからいいから」
あさ姉は二人の手を取り、校長室から出ていきました。
その数秒後、あさ姉に連れられた二人は、まるで別人であるかの如く性格が豹変していました。
「お姉さまぁ」
「千春お姉さまぁ」
なんだか昨夜にも似たようなものを見たような気がします。
「二人の性格が完全に変わってるんだけど…」
「あさ姉何かしたの?」
「いくら千冬くんと千秋ちゃんであっても教えられないなぁ」
フィリアちゃんとアイリスちゃんの目にハートが映り込んでいるように見えます。
「ね…ねぇ、二人とも…」
「あ、千冬お兄様!」
「お兄様ぁ!」
二人は僕に抱き着き、顔をすりすりしてきます。
なんだか昨夜よりも効果が強力になっているような気がします。
「千冬お兄様、愛してます」
「私も愛してます」
目の中にハートが映り込んでいるのがはっきり見えます。
あと息遣いが少し荒いです。




