第22話 洋服記念日って言う日があるらしいね
試着室に籠って約数分、着替えはしましたが出るべきか出ないべきか。
僕としては出たくないですよ、恥ずかしいです。
「千冬お兄様、着替えは終わったのではないのですか?」
「早く見せてくださいよ、グヘへ」
「千冬、見せたくなかったらせめて服のサイズが合っているか教えて」
カーテンの向こうからみんなの声が。
あと一人変態が混じっていたような気がします。
我が妹がこんなのではおにいちゃんは悲しいです。
「ぴ、ぴったりなんだけど、これ、露出が激しいというか、人前では見せられないというか、とりあえずフィリアちゃんをお説教したいんだけど?」
「千冬お兄様、お気に召しませんでしたか?」
「お気に召す前に、TPOを弁える服を依頼してほしかったな」
コスプレ撮影用の衣装を着ている気分です。
これでギルドに行ってみてください、皆さんに笑われてしまいます。
「千冬くん、人の体に対しての美しさと言うのは千差万別なんだよ」
唐突にあさ姉が何か言ってきています。
「う、うん」
一応相槌は打っていますが、何が言いたいんでしょう。
「筋肉質な人が良いと言えば、体のラインが綺麗な人が良いという人もいるんだ」
「そうなんだ」
「だけどね、その人たちに共通しているのはその体を見たいという気持ちなんだ」
「そうなのかな?」
でも確かにそうかもしれません、じゃなきゃ女性が体重とかスリーサイズとか気にしないですし。
「だからね、結局のところ見せちゃうのが良いんだよ、むしろ堂々としている方がみんなの期待に応えられると思うんだ」
「ねぇ、あさ姉」
「なに?千冬くん」
認めたくはないですけど、あさ姉はこっち側じゃないことを認めるしかないようです。
「結局のところ、今の僕の姿が見たいだけだよね?」
「そうだよ?」
「うん、そうだよね!あさ姉もそっち側だよね!」
「大丈夫、千冬くんの裸体はほぼ毎日見てきたから、あたしは気にしないよ」
「僕は体を見られる事よりこの格好で人前に出ることに羞恥心を感じるの!」
「まぁまぁ、まずはあたしが見てあげるから、そっち行くね」
「え!?」
というなりいきなりカーテンを開けて入ってきました。
あ、今カーテンの隙間からフィリアちゃんと目が合いました。
この格好を見られたかもです。
「結構可愛いよ、千冬くん」
「僕としては恥ずかしいよ、これで人前に出ろだなんて」
このズボン、股関節辺りまでしか届いていないので下半身にすごく違和感があるんです。
太ももの付け根から先までスースーします。
あぁ、でもなんかこれが背徳的にも感じられます。
いやいやダメダメ!そうなったらもっと露出度の高い服でも平気で着そうだから!
「それじゃあ元の服に戻ろっか、そっちの方が千冬くんも落ち着くでしょ?」
「う、うん、そうする」
「それじゃあ先に出てるね」
元の服に着替え、試着した服を持って部屋から出ました。
「千冬お兄様、何故、私の依頼した服を着てくださらないのですか?私にはもう飽きたのですか?」
フィリアちゃんが目をうるうるさせてこっちを見ています。
「そうじゃなくて、恥ずかしいもん、あれ、布の面積少ないもの」
「それで恥じらうお兄様がいいんですよ」
目を輝かせて涎を垂らしながら言わないで。
「はい、今度は千秋の番だ」
千秋お姉ちゃんが店主さんから服を受け取り、試着室へ入っていきました。
「お、凄い、このブラ、私の胸のサイズとピッタリになってる」
この発言を境に、フィリアちゃんとアイリスちゃんは真っ黒いオーラに包まれました。
ハンガーに掛かっている服が波打っています。
千秋お姉ちゃんが試着室から出てくると、黄緑のTシャツに茶色の半ズボン姿で出てきました。
あぁ、僕のズボンも、あれだけ長ければ……。
「ブラも作ってくれてたんだ」
「あぁ、バストサイズの割には胸が窮屈だったろ?それで少しはマシになると思うが」
「最高だよ!前の世界じゃ市販のブラでもきつくてね」
千秋お姉ちゃんが目を輝かせています、なかなか見れない光景です。
一方、フィリアちゃんとアイリスちゃんの方を見てみると、更に身体が黒くなって目だけが赤くなっています。
「妬ましい」
「恨めしい」
うわぁ、フィリアちゃんとアイリスちゃん、今、女の子がしていい顔してないよ。
ちょっと見えずらいけど般若みたいな顔しているよ。
「そんなに貧乳が嫌か?」
「「当たり前でしょう!!」」
店主さんは今の発言で、二人の逆鱗に触れたようです。
「お、落ち着いて二人とも、二人が暴力を振るったら、お兄ちゃん二人のこと嫌いになっちゃうよ」
「「ぐッ!!」」
僕が二人の手懐け方を見抜けなかったら、今頃店主さんの命は無かったと思います。
天井にまで届きそうなたんこぶに加え、二人から受けるダメージを考えると即死になりそうです。
「女が胸に抱えている悩みはよく分からないな」
また二人を逆撫でするような発言をしました。
でも実際、千秋お姉ちゃんの胸って大きいんですよね。
あさ姉ほどじゃ無いけど、普通の女子高校生と比べるとだいぶ大きいんですよ。
その胸を枕にして寝れるくらいには。
ちなみにあさ姉の場合、僕と千秋お姉ちゃんをいっぺんに枕する程です。
なにやら店主さんが裏に入ると、数字を書いた紙ともう一式の服を持ってきました。
紙の真ん中に0と横棒が書かれています。
「これは?」
「服の請求書、それと、今回の服の依頼で俺もダメだと思った、だから予備の服を制作しといたから、そっちも持って行ってくれ」
「あ、ありがとうございます」
店主さんの手に、Tシャツとジーンズが畳んであります。
それを受け取って、僕は試着室へ駆け込みました。
着替えてみると、腰が楽だし、半袖Tシャツでとても安心しました。
何故か大きく四面楚歌と書いていますが、まぁ気にしない方向で。
「ありがとうございます!店主さん!」
「そうか、満足してくれて良かった」
「あ、そうだ」
あさ姉が何かを呟きました。
「神格スキル『操作』発動」
「え?あさ姉、何したの?」
なにかのスキルが発動したみたいですけど、何が起きたんでしょうか?
「試着室からでると分かるよ」
試着室を出てみると、なんとさっきまで日が昇っていたのに、もう夕方でした。
「え?!あさ姉、本当に何したの?」
「時間を操って朝から夕方にしたの、時間が加速したように感じるけど、あたしの周りにいるみんな以外の人達にとっては、いつもの時間が流れているとしか感じないの」
「となると、今日の入店者はお前たちだけになるんだが……」
「そういえば、時間が進んでいる時に1度もドアが開かなかったね」
「もう閉店なんだ」
「えーと、今日の売り上げ、実質マイナス5000クレジット、と」
恐らくこの店の売上帳みたいなノートに、あさ姉が今日の売り上げを勝手に書き足しています。
というか今更なんですが、この世界の通貨はクレジットと呼ぶようですね。
「ところであさ姉、なんで時間進めたの?」
というかそんな人間離れしたスキルどこで習得したんだろ?
「日本に行くんだから、こうすれば向こうは午前10時ぐらいになっているでしょ?時差ボケ防止の為だよ」
「そっか、僕達に気を遣ってくれていたんだね」
「そういうこと、さぁて、いよいよ日本に向けて出発だよ、みんな、準備はいい?」
この言葉に僕達は頷きます。
「それじゃあ行くよ、ワープ!」
ワープを唱えると、大きなゲートが出現しました。
「いってらっしゃーい」
店主さんの一言に、僕達五人は手を振りながら入っていきました。




