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物心ついた時からずっと一緒だ。
『ねえ、チトセさん』
「ん、なんだヒトヨ」
同居人の彼をチトセさんと呼び、
彼は私をヒトヨと呼ぶ。
呼び方だけで、漢字は知らないけど。
『あのドアの向こうには、どんな世界があるの』
今座っているソファーの先にある黒いドアを見つめる。
「魔物がいんだよ。お前喰われっぞ。」
『ふーん、チトセさんはよくドアを開けてどこか行くのに喰われないよね』
「俺は勇者の剣があるから大丈夫なんだよ」
そう言っては、彼はリュックを背負ってドアに向かう。
「お留守番してろよ、すぐ帰ってくるから」
そしてドアを開けて未知の世界へと彼は消えていった。