プロローグ
この世に存在してはいけないもの。
それは幽霊や超能力といった人間には証明できない存在や現象。
普通なら、そんなものはない、ただのトリックだ、誰もがそう答えるだろう。
しかし、本当にそのようなものを見た場合、あった場合、人間は好奇心にとらわれてしまい、その根源を知ろうとしてしまう。
そう、誰もが知らない方がよかった、と後悔するのに――
俺も、最初はそうだった。ただ、この力の意味を知りたかっただけ、それだけだった。
やけに周りがうるさい。この周辺で何か起こったのか? 俺には何も理解できなかった。
ふと、周りを見渡すとここは十字路になっている道路付近であり、そしてその道路で事故が起こったみたいで、二台の車両が止まっていた。
どちらも半壊しており、片方は完全に前がつぶれており、煙が上がっている。傍から見ても中に居た人はもう間に合わないだろうと思った。
そんな凄惨なところに数台の救急車が到着し、救助員が出てきては道路に倒れている人に声をかけ、次々と救急車へと運んでいく。また、原型を留めていない車両の中を確認している様子が分かった。
そんな中、一人の救助員が道路の端っこに座っている一人の子供――つまり俺の元へと走ってくる。
「君! 大丈夫かい!?」
最初は俺のことだと全く気付かなかった。それでも、彼は俺の視線に合わせるようにしゃがみ、話しかける。
「君! 返事が出来るか!?」
俺は何も答えることが出来ずにいた。それでも彼は、
「すぐに搬送するからね!」
救助員は俺を抱きかかえ救急車へと向かう。その間、俺は一言も話すこともせず、流されるまま運ばれていった。
そう、俺の外見はただ少しの怪我程度しかなかったのに。救助員は外見ではなく、俺の精神面がおかしいと感じたのだろうか?
俺は何も抵抗することなく連れて行かれる。しかし、連れて行かれた場所は家族がいる病院ではなかった。それは一体どこだったのだろうか?
俺は、一体、どこの誰なんだろうか?




