戦の神アーレス
城に入った俺達は、リリィの案内で謁見まで俺が待機するらしい部屋へと行った
城の中は、一つ何十万もしそうな壺などがズラリと並んでいた。もし壊したりしたら大変なことになりそうだ
俺は、まわりのものに触れないように注意しながら城の中を歩く
ちなみに、カノンは自分で歩いている。流石に城の中をお姫様抱っこしたまま歩くわけにはいかないからな
「おい、リューキ。リリィ様の様子が少しおかしいのだが、何かあったのか?」
気絶から回復して俺の前を歩いていたミリアが問いかけてくる。リリィの様子がおかしいのは、先程カノンが俺にキスしたことのせいだろう。リリィは、普通に振る舞っているつもりみたいだが、全然誤魔化しきれていない
「ミリアが気絶している間に色々とな。詳しいことはリリィに聞いてくれ」
「わかった。あとで聞くとしよう」
ミリアはそう言ってリリィの隣に戻っていく
ミリアが詳しいことを知ったら、めんどくさい事になるだろうなぁ。今から憂鬱だ。
俺が溜め息をついていると、カノンが隣に来た。心配そうな顔で俺を見ている
「心配してくれてるのか?」
「…(コクッ)」
どうしてもさっきの事を思い出してしまう。俺の視線は自然とカノンの唇にいっていた。カノンの唇柔らかかったな。あれが俺のファーストキスだったわけだが、キスとはなかなかいいものだ。しかも相手が美少女なのだから文句なしだな。っといかんいかん、煩悩退散だ。
しかし、さっきのキスはどういう事なのだろうか?まさかカノンは俺の事が好きとか…?
いやいや、それはあり得ない。まだ出会って一日だし、別に俺はイケメンでもなんでもない。
でも、ほかにキスした意味が全くわからない。ただ俺をからかっただけか?
いや、それもないだろう。カノンの性格からしてそんなことをするとは思えない。あーもう!全然わからん!
「リューキ!聞いているのか?」
突然ミリアに声をかけられた。一体どうしたのだろう?
「どうした?」
「どうした?じゃない!部屋に着いたぞ」
どうやら、考えている間に到着したようだ。
用意された部屋は、俺が予想していたよりかなり豪華だった。日本だったら一泊するのに何十万もしそうなほどの部屋だ。なんか俺には豪華すぎて落ち着かない。
「国王との謁見まで時間がありますので、リューキさんはここで休んでいてください。時間になったら呼びにいきますので」
「了解」
リリィたちはすぐに部屋を退出した。すると、入れ替わりでメイドさんが入ってきた
メイドさんは、綺麗に御辞儀をし、俺に挨拶してくれた
「私はこの城で働いているメイドでございます。部屋の外で待機しておきますので御用がありましたらなんなりとお申し付け下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
俺も御辞儀をし、お礼を言う。するとメイドさんはにっこりと微笑み、部屋の外へと向かった
さて、これからどうするか。まだ時間があるようだし、少し睡眠を取っておきたいな。今日は色々あって疲れた。このまま王との謁見をすると、疲れで倒れてしまいそうだ。
メイドさんに謁見まであとどのくらいの時間があるのか聞いてみると、二時間とのことだったので、三十分前に起こしてもらうように頼み、ベットに倒れこんだ。
「いつもならこのくらいの事で疲れたりしないんだけどなぁ。この世界での生活に早く慣れないと」
俺は、ベットの気持ちよさと疲労感ですぐに意識を手放した
目を覚ますと、そこは城の部屋ではなく真っ白な空間だった。
「またか…」
そう、そこは俺がイデアに転生する前に連れてこられた空間と全く同じだった。その時は、少しして神が現れたはずだ。そろそろか。
俺の目の前に光が集まっていく。しかしそこから現れたのは天照ではなく、身長が三メートル程もある騎士のような格好をした男だった。
「ようこそ。我の世界へ」
「…っ!?」
男は普通に喋っただけの筈だが、俺の体は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
俺は、一応日本でも鍛えていたので威圧感の耐性には自信があるが、これは別物だ。鍛えて何とかなるものじゃない。
とてつもない威圧感に耐えながら何とか平静を保つ。
「俺をここに呼んだ理由は?」
「少し頼みたいことががあってな」
神様からの頼みか。多分断れないんだろうな
てかこいつはなんの神様なのだろうか?
「我の名はアレースだ。宜しく頼む」
「確か戦の神だったか」
戦の神が何のようなのだろうか?何処かの戦争に参加しろとか言わないだろうな?
そんなこと言われたら、すぐに拒否するけどな。
「我と一戦交えてくれないか?」
「は!?」
一戦交えるって、戦うってことだよな?
戦の神と戦うなんて、どんな無理ゲーだよ!
「勿論本気は出さない。ちょっとした小手調べと言ったところだ」
「まぁ、それなら…」
「礼を言う」
こうして俺はアーレスと戦うことになった
はぁ…。どうしてこうなったんだ