国王陛下の誤算
ユーリの驚き魔法属性が判明した翌日、ハーバリー公爵アロルドは王宮に来ていた。
ユーミリア王国の宰相でもある彼は国王に娘の魔法属性について報告をするためである。
「なんと・・・!そなたの娘が多属性持ちだったと!?」
「・・・左様でございます。陛下は我が娘が持つ色彩をご存知でしょうか?」
「王妃から聞いておる。・・・確か、淡い金の髪に蒼と翡翠の2色の瞳だったか?」
「左様でございます。陛下はその特徴に心当たりがおありのはず。・・・いえ、この国の民であれば全ての者が心当たりがあると思います・・・」
「・・・っ!!『全能の女神』かっ!!」
国王ギルロイはようやく事の重大さを把握した。
ユーミリア王国は王政の国だが、唯一国王の権力が及ばないモノがある。
神殿である。
創造神である『全能の女神』を祭る神殿は建国より
『国と民の安寧を祈る』
とし、王侯貴族からの権力に屈する事無く不可侵を貫いているからだ。
現在は、3属性持ちの国王と王太子がいるため、神殿も静かにしている。しかしユーリが神殿に取り込まれた場合、話が違ってくるのだ。
国王ギルロイとハーバリ公爵アロルドは共に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
もっとも、その理由は全く異なっているのだが・・・。
ギルロイは神殿対策と愛する王妃ミレイにどう説明するかに頭を痛めていた。
ハーバリー公爵夫人となった妹と、王妃の間で昔交わされた約束。それを
『魔法が使えず、属性と魔力の有無もわからないのでは王族として迎えることはできぬ』
と王妃を説得し、不承不承ではあるが納得させたのが今から7年前の事である。
それまでは、王太子妃候補の筆頭として王宮に出入りし、王太子とも交流させていたのだが、その事をきっかけに距離を取らせた。
エドワード王太子もユーリの事をことのほか可愛がっていた。
ふと、ギルロイは思い出す。
(そういえば、エドワードが心からの笑顔を見せなくなり、取り繕った笑顔しか見せなくなったのはその頃からか?)
その事に思い当たりギルロイの背を冷たい汗が流れる。
(マズイ・・・妻と息子・・・両方から口撃されてしまうではないかっ!!)
『美しい微笑みを浮かべ、背後から真っ黒なオーラを出す王妃と王太子』
その光景を容易に想像できていしまい、胃が痛むような気がする国王だった。
一方、ハーバリー公爵アロルドはというと・・・
(陛下のご決断によっては、ユーリにはこの先困難が待ち受けているかもしれないな・・・)
と、可愛い娘の行く末を案じていた。
魔法が使えない事を口実に、ずっとユーリを手元に置いておこうと考えていたからだ。
余談だが、ユーリが産まれた時に妻から王妃との約束を聞かされた時に猛反対している。
更に、魔法が使えず、属性と魔力の有無が判らないと聞かされた時に心の中で快哉を叫んでいたのはアロルドだけの秘密だ。
父としての立場での温度差が激しいですね