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親たちの対策会議

ミレイたちの下へ行かせていた侍従の労を、ギルロイとアロルドは労った。

なぜなら、彼の顔色は未だに青白いままだったからだ。しかも若干震えている。

その様子から、ギルロイは人知れず溜息をつく。

セリスとミレイが執務室に到着したら、速攻でブリザードが吹きそうだからだ。


「・・・なぁアル・・・昨夜ユーリに話してくれているのだよな?」


「・・・まぁ一応は・・・」


これからの話し合い如何で、セリスたちのご機嫌が変わってしまう。

出来うることなら、執務室から逃げ出したいギルロイとアロルドは揃って溜息をつく。

対応が後手に回ってしまっている事に関しては、どうしようもない。

隣国の王子からのユーリ宛に贈り物が届いたと、、使者からの報告を受けた貴族家からは翌日から使者を送ってこなくなるだろう。

隣国から、正式な婚姻の申し入れの親書が届く前に、ユーリの立場をはっきりとさせておかなければならないが、昨夜アロルドからミレイが『王太子妃にはユーリを』と考えていると伝えられたユーリは、返事を先延ばしにしている。

どうしたものかと考えていると、執務室の扉がノックされた。

セリスとミレイが到着したのだ。

ノックの音を聞いた侍従の身体がビクッとはねる。

扉近くにいた侍女がギルロイから合図を受け、扉を開く。

開いた扉の先には、冷たい雰囲気で笑みを浮かべる美女が2人。

ギルロイとアロルドは、『これはマズイ状態だ』と瞬時に判断した。


「陛下。お待たせいたしました。私とセリス様をお呼びと伺いまいりました。」


侍従から既に、何のために呼ばれたのか聞き出しているにも関わらずミレイは惚ける。

ギルロイは冷や汗をかきながら、ミレイとセリスを執務室内に招きいれ、人払いをした。

執務室内にいた、侍従や侍女たちは我先にと扉へ向かう。

侍従たちが執務室からいなくなると、ギルロイは前置きなく話しだす。


「今日、ハーバリー公爵邸にエルフリード王子からユーリ宛の贈り物が届けられた。その際、貴族家の使者たちの前でエルフリード王子の従者がエルフリード王子からだと伝えたそうだ。」


「まぁ!随分と行動が早いですね」

ミレイは驚いた様子をみせるが、ギルロイは内心『白々しいなぁ・・・』と思った。怖いから口にはしないが・・・


「それで?お兄様とアロルド様は、どう対応しようとお考えですの?」


男2人は言葉に詰まる。

ギルロイはこれを機に、ユーリとエドワードを婚約させたい。

アロルドはエルフリードともエドワードとも婚約させたくない。

気まずい雰囲気になった所で、女2人は揃って溜息をつく。

最初に口を開いたのは、ユーリの母であるセリスだ。


「他家からの使者の前でエルフリード王子の名で贈り物が届いたとなれば、翌日以降は他家からの使者は来なくなるでしょう。しかし、エルフリード王子からの使者は来るでしょうし、最悪の場合は王子本人が屋敷に来るかもしれませんわ。」


「そうですわね。ユーリの身の安全を考えるなら、しばらくはこのまま王宮へ来てもらった方が良いと思いますわ。」


一時しのぎかもしれないが、それが最善のように思われる。

ギルロイとアロルドは揃って頷く。


「「そうだな」」


「ですが、隣国から正式な婚姻の申し入れが届く前にユーリの立場をはっきりさせなければならないでしょう。」


「セリス様。でしたらこの際、エドワードと婚約させて隣国から申し入れが届く前に、婚約発表してしまえばよろしいのでは?」


「それが一番良いと思いますわ。お兄様はそれでよろしいですわよね?」


質問の形をとっているが、否やは言わせぬ雰囲気だ。

反対する事がわかり切っているアロルドには聞かない。

ギルロイはもちろん賛成だ。

アロルドは反対したいが、代案がない。

ユーリは国王の姪で、ユーミリア王国の筆頭貴族家の令嬢。

隣国の王子に嫁いでも、おかしくない身分だ。

問題があるとすれば、『全能者』であるという事。

しかし、表向きユーリは3属性持ちとなっている。

アロルドは最後のあがきとばかりに、言葉を発する。


「・・・・・・ユーリがエドワード王太子との婚約を承諾するのであれば私も反対はしない・・・しかし、ユーリが嫌がった場合は、エルフリード王子とも、エドワード王太子とも婚約はさせません。」


アロルドの言葉に、他の3人は驚いた。

まさか、アロルドが条件付とはいえ、反対しないと言ったからだ。

ギルロイは、アロルドの気持ちが変わる前にと、侍従を呼び王太子の私室にいる子供たちを呼ぶように指示をする。



国王執務室で、自分たちの親がそんな話しをしているとは考えもしない子供たちは、今日も和気藹々とカードゲームに興じていた。

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