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閑話・ついていない侍従

王妃専用の庭園でお茶会をしている所へ、侍従が駆け寄ってきた。

常にない様子の侍従にセリスは問いかける。


「その様に急いで如何しましたか?」


「王妃様、公爵夫人。陛下がお呼びです。至急、執務室へ来るようにと。王太子殿下と公爵家のお子様たちは殿下の私室に控えているようとの事です。」


「?急にどうしたのかしら・・・わかりました。エドワード。ユーリ達と私室にて控えていなさい。良いですね?」


「わかりました。母上。では、行こうか?昨日のカードゲームの続きでもしよう」


「「「はい。では、失礼いたします。」」」


全員が席を立ち、ミレイとセリスは国王執務室へ。

エドワード達は王太子の私室へと移動する。

子供たちの姿が見えなくなると、ミレイは侍従に理由を問う。


「それで、なぜ陛下が執務室へ私とセリス様をお呼びになったの?」


ミレイは綺麗な笑みを浮かべているが、その目は全く笑っていない。

その様子を見た侍従は顔色を無くし、冷や汗を流す。


「それが・・・陛下と宰相閣下が国王執務室にて、エルフリード王子についてお話し合いをしていたのですが、ハーバリー公爵家より火急の知らせが届きまして・・・」


何やら言いよどむ侍従。

セリスが屋敷からの『火急の知らせ』について訪ねる。


「屋敷から火急の知らせ?家令と執事が貴族家からの使者の対応をしているはず・・・その2人でも対応しきれない事が起きたと言うことですか?」


「いえ・・・いや・・・ある意味そうかもしれません。」


何やら要領を得ない答えを口にする侍従に、ミレイは痺れを切らす。

目が笑っていない笑みに、何やら黒いオーラを纏いながら。

哀れな侍従はヒィッと短い悲鳴を上げる。


「ああああの・・・ハーバリー公爵令嬢ユーリ様へエルフリード王子より贈り物が届けられたと・・・それと、その様子を見ていた貴族家の使者たちが一斉に自家へと帰って行ったとの知らせが・・・」


誰も予想しなかった速さで、行動を起こされてしまい対応が後手に回ってしまっている現状にセリスとミレイは揃って舌打ちした。

『ユーミリアの百合』『ユーミリアのバラ』と称される2人のその様子に、侍従の顔色は悪くなるばかりである。

顔色を無くしている侍従に気づいたセリスは、黒オーラを納めて国王執務室へ至急向かうとギルロイに伝えるよう指示をする。

哀れな侍従は、コクコクと頷き脱兎の如く王妃専用庭園を後にする。

その様子を見ていたセリスとミレイは苦笑をもらす。


「それでは、セリス様。陛下の執務室へ参りましょうか?」


「そうですわね。早急に対応策を練らないと、アロルド様にとって最悪な結果を招きかねませんから」


美しい淑女2人はクスクスと笑い、庭園を後にする。

そして、庭園にいた侍女達は一部はミレイたちと共に執務室へと行かねばならず、2人にわからない様に誰が行くのかを決めていた。

庭園にてお茶会の片付けを行う事になった侍女達は、ミレイたちと行かねばならなくなった同僚達を哀れみのこもった眼差しで見送った。

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