ブリザードなお茶会 その裏で(エルフリード・クリストファー視点)
子供たちがお茶会の席を外して、自分たちの母親2人と公爵を怒らせないようにしようと意見が一致した所で、移動を再開する。
庭園を通り抜け、王宮へと移動する一行をエルフリードは側近のクリストファーと共に見つめていた。
「今日のところは、顔見せだけで良しとしておこうか。ね?クリス?」
「エルは、本当にユーリ嬢を王子妃に迎えるおつもりなんですか?」
「そうだねぇ~。ユーミリア国王の妹で、『ユーミリアの百合』と言われた元王女の娘で、筆頭貴族のハーバリー公爵家の令嬢なら何も問題ないと思うけど。しかも、あれほどの美貌だし。クリスは反対なのかな?」
「反対はしませんよ。身分的にも血統的にも王子妃に相応しいと思います。ですが、ユーリ嬢について調べている内に気になる噂を耳にしました。」
「噂?どんな噂なの?」
「ユーリ嬢は、今まで魔法を使えなかったのが、最近になって急に使えるようになったとか」
「へぇ・・・それはまた。普通は6歳前後で魔法を使えるようになるのにね」
「えぇ。しかも、7年前までは王太子妃候補の筆頭として王宮に出入りしていたのを、魔法が使えないという事で、王宮への出入り禁止になったそうですよ。それが、昨日から急に出入りできるようになったと」
「ふ~ん。ユーミリア国王としては、王太子妃候補に戻って欲しいって所かなぁ」
「恐らくは。あと、アルティナ神殿がユーリ嬢の事を探っているみたいですよ」
「神殿が?・・・あぁそういえば、今日ユーリ嬢に挨拶した時に気づいたんだけどさぁ~ユーリ嬢ってオッドアイなんだよな」
「えっ!?それは本当ですか?・・・淡い金髪にオッドアイ・・・『全能の女神』と同じ色彩ですか・・・だから、神殿側がユーリ嬢の事を調べているのか」
「多分ね。・・・クリス。父上に早馬を出してくれ。ユーミリア王国筆頭貴族、ハーバリー公爵令嬢との婚姻申し入れをして頂きたいと。申し入れの親書が到着するまでは、俺はユーリ嬢にアプローチをする」
「本気ですか?ユーリ嬢を王子妃に迎えた場合、今までのような振る舞いは出来なくなりますよ?」
「構わないさ。俺だって手当たり次第って訳じゃなかったんだ。自分の隣に並び立つに相応しい相手を探していただけだよ。」
「・・・エル・・・凄く嘘くさいですよ・・・」
「ははっ。まぁ、俺が落ち着くってなれば父上も喜んでくれるだろうさ。じゃぁ頼んだよクリス。」
昨晩、クリスからユーリについての報告を聞いたエルフリードは、早速行動に移した。
それが、今日の挨拶だったと言うわけだ。
正直、クリスは報告するのを躊躇う。
公爵家令嬢、国王の姪、そして3属性の魔法を使うことが出来る。
それだけであれば問題はなかった。
しかし、カルディール王国の王太子には妃候補はいるが、魔法属性は精々2属性。
そこに、3属性持ちのユーリが現れたのだ。
『カルディール王国王太子の妃候補をユーリに』
と、自国の王が考えるかも知れない。
仮に、ユーリがエルフリード王子の妃になったとしても、王太子妃よりも属性数の多い第2王子妃になってしまう。
しかも、アルティナ神殿の不可解は動きも気になる。
なぜ、ユーリの事を探っているのか・・・それも神官長が内密に探らせているようなのだ。
これは一波乱も二波乱もありそうだとクリストファーは溜息をつく。




