アピールなのでしょうか?
今の世界では見慣れない黒髪の青年を見てユーリは固まった。
前世では見慣れていた黒髪も、この今の世界ではとても珍しい色である。
「初めてお目にかかります。ハーバリー公爵アロルド殿。私はカルディール王国第2王子のエルフリード・アルディ・カルディールと申します。」
「初めまして。エルフリード殿下。失礼ですが・・・なぜ殿下はこの様な所へ?」
アロルドが問いかけるとエルフリードは笑顔で告げた。
「昨日、そちらにいらっしゃるお嬢様を庭園でお見かけしまして、一度ゆっくりとお話ししてみたいと思ったのです。よろしければお嬢様のお名前を教えていただけませんか?」
エルフリードの告げた内容にユージーンとジェラルが息を呑む。
昨夜、公爵に隣国の王子がエドワード王太子と一緒にいるユーリを見ていた事は話していた。
エドワードからもエルフリード王子に注意するよう言われてはいたが、こんなに早く行動を起こすとは思っていなかったのだ。
「そうですか・・・こちらは私の息子でユージーンとジェラル。そして娘のユーリです。」
「ユーリ・・・というのですね。可愛らしいお名前ですね。ユーリ嬢、よろしければこれから私と庭園を散歩いたしませんか?」
いきなり話しかけられたユーリが、どう返事をしようかとオロオロとしているとセリスが助け舟を出した。
「エルフリード殿下、本日はミレイ王妃よりご招待を受けております。申し訳ございませんが娘を連れて行かねばなりませんの。庭園のお散歩についてはまたの機会にしていただけませんか?」
「王妃陛下からご招待を受けておられたのですか。それでは残念ですが、またの機会にいたします。それではユーリ嬢またお会いできる日を楽しみにしています。」
エルフリードはユーリの手を取り、その甲に口付けをおとした。
急な事にユーリはアワアワするだけ。
その様子を見たエルフリードは笑みを深めて踵を返してクリストファーの元へと去っていった。
「父様・・・何だか嵐の様な方でしたね・・・母様。助けていただいてありがとうございます。」
「いや・・・まぁとりあえずミレイ様がお待ちになっている。急ごうか・・・」
エルフリードの言動に困惑気味のハーバリー公爵一家は、王妃の待つ庭園へと移動した。
王妃の庭園に到着すると、アロルドの予想通りにお茶の席にギルロイも居た。
ギルロイの姿を確認すると、アロルドは深い溜息をついた。
「お待たせして申し訳ありません。本日はお招きいただきありがとうございます。ところで・・・ミレイ王妃とエドワード王太子が同席するのは知らされておりましたが、なぜ陛下がここにいらっしゃるのでしょうか?今の時間は執務室にで書類仕事をしているはずでは?」
アロルドがサラっと毒を吐く。
ギルロイは苦笑を漏らし、同席している理由を告げる。
「なに、アロルドの子供たちに久しぶりに会いたいと思ったのだ。書類については、昨晩の内にある程度は片付けているから心配いたすな。立っているのもなんだから席に着いたらどうだ?」
それが、表向きの理由であるのはユーリ以外の全員がわかっていた。
アロルドは再度、深い溜息をついて席に着く。
アロルドに続いてセリス達も席について、国王一家とハーバリー公爵一家のお茶会が始まった。
後にユーリはこのお茶会に参加した事を後悔する事になった。




