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騒動の予感

ユーリとエドワードが庭園の東屋で話しをしているのを、隣国の第2王子が遠くから見ていた。

隣国カルディール王国の第2王子、エルフリード・アルディ・カルディールである。

自国で浮名を流す息子に業を煮やしたカルディール国王が、王子としての自覚を促すために他国へ赴かせたのだ。

親書により、その事を知っていたギルロイは王妃ミレイと王太子エドワードにその事を伝えていなかった。

エルフリードはユーリをじっと見つめて、共にユーミリア王国まで来た幼馴染であり、学友であり、側近でもあるディール伯爵家嫡男クリストファー・アルフ・ディールに語りかける。


「クリス、あの子すごく綺麗だね」


「そうですね。遠目からでは瞳の色までは分からないけど、あの淡い金髪は見事としか言いようがないですね」


「あの子、国に連れて帰れないかなぁ?」


「えっ!?それは王子妃としてですか?」


「うーん・・・王子妃にかぁ・・・身分が分からないから何とも言えないかな?この国の王女ならベストだよ。王子妃として申し分ないでしょ。この国の貴族なら・・・身分的にも侯爵家までかな?」


「この国の国王と王妃の間に王女はいないですよ。王宮に出入りしているのなら貴族令嬢で間違いはないでしょうが・・・どの家の令嬢か調べますか?」


「流石はクリス!話しが早くて助かるよ」


嬉しそうに笑う主を見てクリストファーは溜息をついた。

第2王子であるエルフリードは、気に入った女性に見境なく声をかけては浮名を流す。

その事に対して自国の国王は常に頭を悩ませていたのを知っていたからだ。

王子としてはとても優秀なのだが、いかんせん女癖が悪すぎた。

将来、国王となる兄を臣籍降下して支えなければならないはずなのに、自覚が足りないと国王は思っていた。

そのため、王子としての自覚を促すため、また見聞を広めさせようと、交流と称して他国へと赴かせたのだが、そこでも悪癖を発揮しているのだ。

令嬢の身分いかんでは外交問題に発展する可能性があるのを、主であるエルフリードが分かっているのかはなはだ疑問だった。

クリストファーは念のため確認する。


「それで?殿下。令嬢の身分が侯爵家以上だった場合どうなさるおつもりですか?王子妃に迎え入れるのですか?」


「えぇ~?俺まだ20才だよ?できればまだ1人の女に縛られたくはないかな?」


「・・・では、遊びという事ですか?場合によっては外交問題に発展しますが?」


「クリスは頭が固いなぁ~。折角、口うるさい父上の目の届かない他国にいるっていうのにさぁ~」


「・・・他国だからこそ、しっかりして頂かないと困るのですが?」


エルフリードの言葉に頭痛がしてきたクリストファーだった。

視線をエドワードとユーリに戻す。


「一緒にいらっしゃるのは、この国の王太子殿下ですね。あの雰囲気から察するに婚約者か王太子妃候補の令嬢だと思うのですが?」


「え~?エドワード王太子には婚約者も王太子妃候補もいなかったはずだよ?縁談も軒並み断っているって聞いてるけどなぁ・・・」


「・・・わかりました。では一応そのご令嬢の事を調べますが、くれぐれも外交問題にならないようにして下さいね?お約束いただけないのであれば、お調べすることをお断りさせていただきます。」


「分かったよ。外交問題にならないようにするよ。もし、侯爵家以上の家格の令嬢だったら王子妃に迎えても良いかもしれないしね。俺が妃を迎えるって言ったら父上も喜ぶんじゃないか?」


(まずはどの家の令嬢か調べて、魔法属性を調べないと・・・)

クリストファーは、溜息を1つつくと踵を返し、ユーリの事を調べるべく王宮の建物内へと消えていった。

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