嵐のお茶会・その4
今回も短めです
ユーリとエドワード、それにハーバリー公爵家兄弟が王妃主催のお茶会の席を辞すとお茶会の席には王妃ミレイと公爵夫人セリス、そしてお茶会に出席していた貴族の夫人・令嬢達が残された。
ミレイとセリスは、夫人達が令嬢達に対するお説教を涼しい顔をして眺めていた。
令嬢達はユーリが自分達に声をかける訳でもなく、王太子のエスコートで席を外した事を声高に非難しているが、そもそも自分達がユーリに敵意の篭った視線を向けていた事を遥かかなたへと放り投げていた事に気づいていない。
夫人達はその事を咎めたが令嬢達は理解していないようだった。
王太子のみならず公爵家の兄弟もユーリの後を追う様に席を立った事も大きかった。
そんなやり取りを見ていたセリスはおもむろに口を開く。
「皆様のおっしゃる事は分かりましたわ。ユーリの態度にも問題はあったかもしれませんわね。しかし、ユーリがご令嬢の皆様に声をかける事ができなかったのはご令嬢方にも原因がございますのよ?それはお分かりかしら?」
セリスの言葉に令嬢達は一様に首を傾げる。
ミレイはその様子を見て溜息を一つつきセリスがいわんとしている事を続ける。
「ご令嬢方がユーリと親交を持とうと思っていらっしゃらない事をユーリが感じ取ったからですわよ?」
令嬢達は漸く理解した様子で耳まで赤く染めて俯いてしまう。
夫人達はその様子をみてやっと自分達が言っていた事を理解したと判断した。
今回、急遽お茶会に参加する事になった理由をセリスは説明する。
「この度、ユーリは魔法が使えるようになりました。 昨日陛下へ夫であるハーバリー公爵と共に謁見した際にご報告させていただきました。その際、謁見の間にいた貴族の家々からユーリに縁談の申し入れをする使者が公爵邸に殺到しました。騒動が治まるまで屋敷の自室へ娘を閉じ込めておく事もできない為、王妃様へご相談させていただきました。」
「公爵夫人から相談を受けて私が急遽、本日のお茶会にご兄弟と共に招待いたしました。本日出席頂いたご令嬢方には事前にお話ししていませんが、エドワードは王太子妃にユーリを望んでいます。ここにいるご令嬢達は属性数が1つまたは2つです。しかし、ユーリは3属性の魔法を使います。この意味はお分かりですね?」
令嬢達の間にざわめきが広がる。
王族にも稀にしか3属性持ちは出ない。
現在の国王と王太子は3属性だが、王妹である公爵夫人セリスは2属性なのだ。
貴重な3属性持ち。しかも公爵令嬢で降嫁した王妹の娘である。
血筋・家柄共に申し分がないのは令嬢達も分かった。
令嬢達の様子を見ていたミレイとセリスは安堵の溜息を漏らす。
(これで令嬢と夫人から各貴族家へ情報が行き渡るはず)
貴族の夫人・令嬢達は社交のため、各家で催される夜会やお茶会でこの話しを流すだろう。
今日、屋敷に戻ってからも夫や親へ早速話すだろう事も想像にかたくない。
1日でも早く公爵家の騒動が治まる事を祈るセリスとミレイだった。




