嵐のお茶会・その3
今回も短めです
ユーリがエドワードのエスコートで王宮内へと移動し、その姿が見えなくなるとユージーンとジェラルは母であるセリスの横の席に戻ってきた。
令嬢達は急に席に戻ってしまった公爵家の兄弟を不思議に思って見つめていた。
招待された貴族の夫人達にはミレイ王妃より事前に、今回のお茶会について説明がされていた。
ハーバリー公爵家に縁談が殺到してしまっている事、エドワード王太子が公爵令嬢ユーリを王太子妃にと考えている事、そして令嬢達にはこの事を一切説明していない事を。
理由を知らない令嬢達は、エドワード王太子がユーリをエスコートしていってしまった事を内心、快く思っていなかった。
すると、夫人達から厳しい視線を受けている事に漸く気づく。
「本日、王妃様よりお茶会のご招待を受けたご令嬢方は礼儀作法の教育を受けておられないのかしら?」
ある伯爵夫人が口火を切った。
それをきっかけに次々と夫人達は令嬢達にダメ出しを始めた。
「王妃様、本日ご招待したご令嬢方の中で公爵令嬢はユーリ様だけでしょうか?」
「えぇ。本日のお茶会に招待したのは子爵家から伯爵家までの貴族令嬢ですわ。」
ミレイ王妃の一言でやっと令嬢達は自分達がユーリに対して無礼をしていた事に気づく。
さすがに、上位貴族令嬢であるユーリに自分から声をかける事はしなかったが、睨んだりした事を自覚していた。
「エドワード王太子のお目に留まりたいという気持ちはわかりますが、流石に公爵令嬢へのあの態度はいかがなものでしょうか」
「お可哀想に。あの雰囲気ではユーリ様がご気分が悪くなるのも当然ですわね。」
「ユージーン様、ジェラル様。ユーリ様の体調が心配ですので客室へ行かれてはいかがですか?」
兄弟は驚きに目を見開き、どうすれば良いかユージーンがセリスに訊ねる。
「母様。ユーリの様子を見に行ってもよろしいでしょうか?」
「私はかまいません。ミレイ王妃、息子達をユーリの元に向かわせてもよろしいでしょうか?」
「かまいません。ユーリも兄弟が傍にいた方が心強いでしょう」
「王妃様、お心遣いありがとうございます。では、私どもは席を外させていただきます。」
令嬢達は公爵家兄弟が席を外す事にがっかりした。
王太子の目に留まるのがベストだが、今回急に参加した公爵家兄弟のどちらかと親しくなれればと考えたからだ。
しかし令嬢達のユーリへの態度を見て2人は
(今回のお茶会に参加した令嬢達とは今後も接したくないなぁ・・・)
と思っていた。
アロルドの思惑は令嬢達の態度で見事に打ち壊されてしまっていた。
がっかりする令嬢達に目もくれずに、王宮の侍女に案内されて公爵家兄弟も王宮の建物へと向かった。




