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ドレスを注文します

公爵家へ縁談の使者が殺到した翌日、アロルドは朝から王宮へ仕事に向かい、セリスとユーリは王宮へ赴くための準備で大忙しだった。


「ねぇユーリ、ドレスはこの色が良いのじゃない?」


「えぇ~少し子供っぽくないかしら?」

ユーリは大きな姿見の前で淡いレモンイエローのドレスを当てていた。

あと1時間程度でドレスを作るための職人が採寸のために公爵家へやってくる予定である。

それまでユーリが作らせていたドレスはどれも淡く可愛らしい色合いが多かった。

(さすがにピンクとかは、この季節が暑く見えるわよね・・・青系統で何かなかったかしら・・・)


色とりどりのドレスを前に悩む主を見かねて有能侍女のミーナは、一着のドレスを手に取る。

それはレースの装飾も少なめの白に近いクリーム色のドレスだった。

「ユーリ様こちらのお色ではいかがでしょうか?」


ユーリはミーナが持っているドレスを見て頷く。

「そうね・・・ミーナ今日はその色のドレスにするわ。」


「かしこまりました。」

ユーリがドレスに袖を通し、しばらくすると母娘のいる部屋の扉がノックされた。


「奥様、職人がお嬢様のドレスの採寸にまいりました。お部屋へお通ししてもよろしいでしょうか?」


「あら。もうそんな時間なのね。お通しして。午後にはミレイ王妃の所へ行かなければならないので急いで採寸してもらわないと」


「かしこまりました。ではお通しいたします」


すぐに侍従に連れられて、採寸するための職人が部屋へ入ってくる。

「当店をご指名いただきありがとうございます。本日はお嬢様のドレスの採寸という事でよろしいでしょうか?」


「えぇ。翌年にデビュタントを控えているので、少し大人っぽいデザインと色でドレスを作ろうかと思っているの。これからは社交に出る事も多くなりますからね」


「かしこまりました。それでは早速採寸を行いたいと思いますがよろしいでしょうか?」


「かまわないわ。ユーリ私はこの部屋で待っていますから採寸をしていらっしゃい」


「はい。母様」


ユーリは採寸をするために職人の助手と部屋を移動する。

職人はユーリを見て、ドレス用の布地の色見本をセリスの前に置いた。

ユーリの持つ色彩に合わせるためだ。

色とりどりの布地にセリスのテンションも上がる。

今までは、淡い色合いのドレスが多く、またデザインも子供っぽいモノが多かった。

しかし、デビュタント後しばらくはお茶会や夜会の招待が多数届く。

パートナーは今回のユーリの魔法属性の問題があるので決まってはいないが、デビュタント後の夜会はパートナーが持つ色彩も考慮してドレスや装飾品を決めなければならないのだ。

セリスはそれならばと、ユーリの衣裳部屋を用意した。

ユーリの部屋の隣を衣裳部屋にしてしまったのだ。

これは部屋を移動しなければならなかったジェラルが割を食う形になった。

ジェラルは今、ユージーンの隣の部屋へ引越し中だ。

衣裳部屋の中は、濃淡様々な色で様々なデザインのドレスを作って収める事になっている。

続き間には、靴や装飾品を収める事になっている。


「今までユーリは淡い色合いのドレスが多かったから、淡い色合いのものと濃い目の色合いのドレスを作ろうかと思っているの。あと、デビュタントで着るための白色のドレスもね」


「本日、お嬢様がお召しになっているクリーム色ではダメなのですか?今までもデビュタント用のドレス製作を受けましたが、クリーム色の布地でドレスをと依頼されるご令嬢は多いですよ?」


「そうね。今日ユーリが着ている色でも問題はないのだけれど・・・手間がかかるとは思うけど、白地に金糸と銀糸を使って刺繍を施して欲しいと思っているの。ユーリは淡い金の髪色でしょう?銀糸のみでも金糸のみでもダメ。2色を使って布地に刺繍する事によって娘の色を表現したいの。」


「かしこまりました。刺繍のデザインについては後日ご相談させていただきたいのですがよろしいでしょうか?ドレスのデザインが決まらないと刺繍のデザイン案もご提案できないので・・・」


「えぇ。かまわないわ。ただ、ドレスはかなりの数をお願いする事になるわ。この部屋と同じ広さの部屋を衣裳部屋にしたので、その部屋が埋まるくらいの数が必要になるわ」


「・・・かしこまりました。では、製作するドレスについては一度での納品ではなく、出来上がり次第お持ちするようにいたします。」


「そうね。もし、私達が不在でも使用人に言付けてくれれば良いわ。周知しておきます」


「かしこまりました。」


部屋の広さを見て職人は内心で溜息をつく。

一体どれだけの数のドレスを作ることになるのか・・・

実際にドレスを縫うお針子達は大丈夫だろうか・・・と。


職人の悩みなど露知らずセリスは布地の色見本を眺めている。

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