家族会議(ただしユーリを除く)
公爵邸に縁談が殺到した夜、ユーリを除く公爵家の面子がアロルドの書斎に集まっていた。
今日の昼間に公爵邸に届いた縁談についてだ。
「・・・しかし、大量に届いたな・・・」
「えぇ・・・本当に。コレ、絶対に一度お断りした方達からも再度届いていそうですわね。」
「父様・・・母様・・・明日以降も今日と同じ状況が続くと執務が滞って困るのですが?」
「・・・・・・」
途中で縁談を申し込みに来た貴族達からの使者を帰したとはいえ、ユージーンとジェラルは昼間の騒ぎを思い出しうんざりとした表情を浮かべた。
「今日、使者が来ていた間、ユーリはどうしていたんだ?」
「ユーリには申し訳なかったですが、部屋に閉じ込めておきました。下手に使者達の前に姿を現すと騒ぎが大きくなり、手に負えなくなると判断したので・・・」
「そうだな。良い判断だった。明日、陛下にエドワード王太子とユーリの面談を申請するとして・・・ユーリが答えを出すまでの間、ずっと屋敷から一歩も外に出ないのはかわいそうだしな・・・」
「あら。それでしたら、私がユーリを王宮のミレイ王妃の所へ毎日連れて行きますわよ?」
「セリス、それはどういう・・・?」
「本日、ミレイ王妃とお茶会をしていた時に久しぶりにユーリに会いたいと言われておりましたの」
アロルドは顎に手をあててしばし考える。
(王妃の所に行けば確かにユーリを安全な所にいさせる事ができるな・・・許可が下りて、都合さえつけばすぐにでも王太子と面談する事が可能か)
「ユーリと一緒にジェラルを連れて行く事は可能か?」
「えっ!?僕もですか?」
アロルドとしては、ミレイ王妃の所にユーリを連れていくのはやぶさかではない。
しかし、王妃の所といえど100%縁談を希望する貴族達からユーリを隔離できるわけではなかった。
一国の王妃として、有力貴族の夫人・令嬢を招待したお茶会を開いたり、他国からの客人をもてなす事が王妃としての公務に含まれているからだ。
しかも、今は隣国の第2王子が王宮に客人として滞在しているのだ。
「あぁ。ユージーンは公爵家の後継者として、領地についての執務があるからな。しかも、今は隣国の第2王子が客として離宮に滞在中だ。王宮という場所柄、侍女のミーナだけでは貴族達の相手はできない。しかし、お前なら弟としてユーリの側にいても問題はない。」
「僕が姉様を守るということですね?」
「そうだ。私も、ユージーンも執務がある。セリスは自身でお茶会を開いたりしないから、ここぞとばかりに夫人達はセリスを囲んでしまうだろう。それではユーリを守る事ができないからな」
「父様。ジェラルと一緒に俺も王宮へ行っても良いですか?」
「ユージーン?」
ユージーンは国内の貴族達の相手はジェラル一人で問題ないと思っている。
しかし、隣国の王子が出てきた場合、話しが違ってくる。
公爵家の人間とはいえ、ジェラルは次男。しかも、社交界デビュー前である。
他国の、しかも王族が出てくる可能性がある。そうなった時、公爵家次男では対応できない可能性がある。
だが、ユージーンは公爵家の後継者で、しかも社交界デビュー済みである。
アロルドは再度考えこむ。
「わかった。では、この騒動に答えが出るまではミレイ王妃の所へユーリを連れて行く。セリス。ユージーンとジェラルも一緒に連れていってくれ」
「わかりましたわ。では、早速ミレイ王妃に手紙を認めます。ですが、領地についての執務はよろしんのですか?」
「しばらくの間は、家令と執事頭に任せれば良い。」
「わかりました。」
手紙を書くためセリスはアロルドの書斎を後にする。
セリスが書斎から出て行くのを見送ると、アロルドはユージーンとジェラルに視線を移し、二人の瞳を見詰めながら
「ユージーン、ジェラル。しばらくはユーリと共に王妃の所へ行ってくれ。王宮は警備が厳しい所だが、何もないとは言い切れないからな。」
「「はい!」」
アロルドは中々婚約者を決めないユージーンと、これから婚約者を探さなければならないジェラルに姿絵ではない、実際の令嬢達と接してもらい二人の婚約者を決めてしまおうと考えていた。
そんな父の思惑を知らない公爵家の男子2人は、翌日からどのようにユーリを守るのか相談を始めていた。
仕事の都合で中々投稿ができませんでした。
亀の歩みですが、少しづつ更新しますのでお付き合いください




