婦人達のお茶会
謁見の間を辞したセリスは早速ミレイ王妃の元を訪ねた。
昨夜セリスからの手紙を受け取ったミレイはセリスの訪れを今か今かと待ちわびていた。
侍女からセリスの来訪を聞いたミレイは庭園に用意させていたお茶会の席に案内させた。
「ご機嫌麗しゅうミレイ王妃様。お久しぶりでございます」
「お久しぶりですわ。セリス公爵夫人」
「「・・・」」
二人は揃って噴出した。
「かしこまって挨拶ってなんだかおかしいですわね」
「本当に。セリス様もお元気そうで何よりですわ」
「ミレイ様こそお元気そうで」
ミレイ王妃は人払いをして、王妃と公爵夫人としてではなく友人として話し始めた。
「セリス様、謁見の間での陛下のご様子はいかがでした?」
「それはもう笑いを堪えるのが大変でしたわ。ず~っと目を泳がせていたもの。私が謁見の間に入った時から何かイヤな予感でもしていたのかも・・・ユーリの王太子妃候補復帰については後ほどお話しをする事になっていますから、その時はミレイ様もご一緒に参りましょう。使いの者が呼びにくるそうですわ。」
「まぁ。それは楽しみですわ。陛下がアロルド殿とセリス様を前にどのようなお話しをなさるのかしら?」
「そうですわね。とても言い辛そうに挙動不審になるのではないかしら?それにとても驚くと思いますわ」
「それで?セリス様ユーリの属性はいかがでした?多属性持ちでしたか?それとも『全能者』でしたか?」
「・・・ユーリは『全能者』でした。全ての属性魔法と特殊魔法を行使しましたわ・・・」
「そうですか・・・ではこれからユーリの周囲は騒がしくなりそうですわね」
「そうですわね・・・謁見の間で陛下がユーリを王太子妃候補に復帰させたいと言った時もざわめいていましたから・・・今まで以上に縁談の申し入れが来そうですわ・・・全能者ではなく3属性持ちと報告した時も同じくざわめきが広がりましたし・・・」
「そうですわね・・・ユーリの美貌と公爵令嬢という身分に王家の者と同じ3属性持ちとくれば一度アロルド殿に縁談を断られた家も再度申し入れをしてきそうですわね」
セリスとミレイは揃って深い溜息をついた。
ユーリはまだ、王太子妃候補になったわけではない。
筆頭貴族であるハーバリー公爵家と縁を持ちたい貴族。
3属性持ちを迎え入れたい貴族もいるだろう。
更には『全能者』であるユーリを取り込みたい神殿が動き出す可能性が高いからだった。
「縁談もそうですが、当面の問題は翌年に控えたユーリのデビュタントのパートナー決めですわ」
「そうですわね。この事がなければユーリのパートナーはユージーンで決まりだったと思うけど・・・もし王太子妃候補になったら、恐らくエドワードが名乗りを上げるわね。でもデビュタントでエドワードがパートナーを勤めたら、王太子妃候補ではなく王太子妃として決定したと貴族達は思うでしょうね」
「貴族達がそう思うのは問題ないのですが、エドワード王太子もユーリが王太子妃になると思ってしまうかもしれないですわよ?」
「ユーリは王太子妃にはなりたくないと?」
「そこまではまだ聞いていませんが、やはり7年前の事がありますから・・・」
再度二人は揃って溜息をついた。
「「陛下も余計な事をしてくださいましたわねぇ・・・」」
「とりあえず、ユーリの気持ちを第一に考えましょう」
「ありがとうございます。ですがミレイ様はそれでよろしいのですか?」
「私としては、ユーリが義娘になってくれると嬉しいけれど、人の気持ちはどうにもならないものでしょう?かつてのセリス様もそうでしたのですから」
「まぁっ!ウフフそうですわね。ユーリは政略結婚やお見合い結婚はイヤだそうですわ。私とアロルド様のように恋愛結婚をしたいそうですの」
「まぁぁ!可愛らしい事をおっしゃるのねぇ・・・ウフフその時のユーリを見たかったわぁ」
「真っ赤になっていましたわよ」
二人は笑いながらユーリについて話していた。
しばらくすると侍従が呼びに来たので国王と宰相が待つ国王執務室へと向かった。




