全能者と判明しました
再度、属性確認を行ったユーリは家族の前で他の3属性と特殊属性の魔法を行使してみせた。
ハーバリー公爵アロルド、公爵夫人セリス、兄弟のユージーンとジェラルは驚いた。
地方の伝承や神話の中でのみ語られている特殊属性の魔法を使ってみせたのだから仕方がない事だが・・・
ユーリが『全能者』だという事は公爵家の秘密とする事となった。
一方、ユーリはというと・・・
「ねぇミーナ。私、全ての属性魔法が使えたわ~それって『全能者』って事よね?全能ってきっと便利よ」
「はぁ・・・ユーリ様?旦那様と奥様からユーリ様の魔法属性は3種類と報告するとお話しがありましたよね?もうお忘れですか?」
「も、もちろん覚えているわよ?」
ユーリの焦り方を見てミーナは呆れたように溜息をついた。
(ユーリ様・・・今、絶対忘れてましたね・・・この様子じゃふとした時に厄介事に巻き込まれそうだわ・・・これからは一層気を引き締めなければ・・・)
その日の夜、アロルドとセリスは頭を抱えていた。
ユーリが『全能者』だった事と短い詠唱で現象を起こしたからだ。
「まさか、特殊属性の魔法まで行使するとはな・・・」
「えぇ・・・魔法については一切教育をしていなかったのに・・・何故でしょうか?」
「それは私にもわからん・・・ただ、これから周囲は騒々しくなるだろう事はわかっているがな・・・」
「そうですわね・・・貴族達も神殿も黙っていないでしょう・・・」
愛娘がこれから巻き込まれるであろう騒動に二人はそろって深い溜息をついた。
「とりあえず、ミレイ王妃にはユーリの属性について手紙を送りますわ」
「そうだな・・・場合によっては王家の協力が必要になるかもしれないしな・・・」
「ミレイ王妃には私からお手紙で報告しますが、陛下にはあなたからご報告して下さいね?」
「あぁ・・・明日、陛下にご報告しようと思っているが・・・ユーリが『全能者』だと報告したらユーリを王太子妃にと言ってきそうだな・・・」
「まぁ・・・可能性は大きいでしょうね。エドワード王太子はユーリを妃に迎えたいと言っていたようですし・・・陛下はどのようなお顔であなたにユーリを王太子妃候補にすると告げられるのかしら?フフ・・・この目で見れないのが残念ですわ」
セリスはこの上なく楽しそうに笑った。
「確かにな・・・そうだ!セリスも明日の報告に一緒に行くか?久方振りにミレイ王妃にもお会いしたいだろう?ついでに陛下の反応を見るのはどうだ?」
「まぁ!よろしいのですか?」
「かまわんさ。セリスは陛下の実妹なんだからな」
「ウフフ。では明日はあなたと一緒に王宮へ行ってご報告しましょう。ミレイ王妃に早速お手紙を認めて早馬で届けさせますわ」
「あぁ。そうすると良い。明日、王宮に赴いて直接ユーリの事をお話しさせていただきますと。あと、セリスが一緒に行くことを陛下には内緒にしてもらうように書いておけば良いだろう。」
日が変わってアロルドが王宮へ向かう際、何故かセリスも一緒に行く事に子供達は揃って首を傾げた。
「では、行ってくる」
「今日は私も一緒に王宮へ参ります。久方ぶりにミレイ王妃とお話しをしてきます」
「「「行ってらっしゃいませ。父様、母様」」」
子供達に見送られて公爵夫妻は王宮へと向かった。
その頃、王宮では王妹セリスが久方ぶりに王宮へ来ると貴族達が騒いでいた。
ハーバリー公爵と結婚後、滅多に王宮へ来ることがなかった『ユーミリアの百合』といわれた美貌は3人の子供を産んでも衰える事がないのは周知の事実だったからだ。
また、セリスは自身でお茶会を開く事はなく、夜会の招待も必要最低限に抑えていた。
謁見の間には普段以上に貴族達が集まっていた。
セリスを一目見ようと集まっていたのだ。
「ご機嫌麗しゅうございます陛下。本日は妻セリスと共に我が娘ユーリについてご報告いたしたく参りました。」
「うむ。セリスよ息災そうで何よりだ。子供達は元気にしておるのか?」
「はい。先日ユーリが盗賊に襲われた際には王国騎士団を派遣して頂きありがとうございます。本日はユーリが魔法を使えるようになった事をご報告致したく夫と共に伺候いたしました。」
「そうか。ユーリが魔法を使えるようになったか。それは重畳。して魔法属性は何だったのだ?」
「はい。属性は私と妻の属性を受け継ぎ、光・火・雷の3属性でございます。」
「3属性か。そうか・・・しかし以前は全く使えなかったのに、今頃使えるようになるとは不思議なものだな」
「左様でございますね。私どもも何がきっかけで使えるようになったのか分からないのですが、これでユーリの悩みは消えた事と思います。」
国王ギルロイは若干目を泳がせながらユーリの王太子妃候補復帰について言及する。
「ときにハーバリー公爵。そなたの娘ユーリなんだが、魔法が使えるようになったのなら王太子妃候補へ復帰させようと思うのだがどうだろうか?3属性持ちなら問題なかろう」
その瞬間、謁見の間にいた貴族達がざわめいた。
7年前に候補から外し、王太子がどんなに反対してもその指示を撤回しなかった国王が復帰させると言ったのだ。
「陛下。その件につきましては後ほどお時間を頂戴いたしたく」
「わかった。では後ほど時間を作ろう。セリスは久方振りに王宮へ参ったのだ王妃に会ってやってくれ」
「かしこまりました。ですが、王太子妃候補復帰についてのお話しの際には私とミレイ王妃も同席させていただきとうございます」
「わかった。では後ほど王妃の所へ使いを出すからそれまではゆっくり王妃と過ごすと良い」
「ありがとうございます。ではそのようにさせていただきます」
謁見の間に居た貴族達は気づかなかった。
国王がセリスと話している間、ずっと目が泳いでいたのを




