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閑話・令嬢付き侍女の特殊技能

私の名はミーナ・アルノー。ハーバリー公爵令嬢ユーリ様付きの侍女です。

私がお仕えするユーリ様は公爵様と夫人の良い所を受け継いだ、とてもお美しいお嬢様です。

私が15歳になって公爵家へお仕えする事になった際に、年齢が近いという事でユーリ様付きに抜擢されました。


ユーリ様はずっと魔法が使えない事に悩んでいました。

ご兄弟が魔法の練習をしているのを物陰からこっそりと見ておられました。

ご本人は周りにバレていないと思っておられたようですが・・・

バレバレでございますよ?ユーリ様・・・


旦那様も奥様も何故かユーリ様に魔法教育を施しておりません。

その代わりなのかは分かりませんが、淑女教育はそれはもう熱心に受けさせておりました。

その甲斐あってか、ユーリ様はどのご令嬢にも負けない素晴らしい淑女になられました。


まぁ・・・少々お転婆な所もございますが・・・

湖畔の別邸へ避暑へ行かれるという事で、私も同行しました。

まさか盗賊に遭遇するとは思いもよりませんでしたが・・・


何としても無事にお屋敷へユーリ様をお連れしなければ!!

御者のアレスは巧みな風魔法で盗賊達を振り切って王都の公爵邸へと馬車を走らせる。

屋敷へ戻ったら、きっとユージーン様が討伐隊を向かわせるはず。


(討伐隊のために、盗賊を追えるようにしておかなければ・・・)


私の属性は水と氷なので、こっそりと氷の粒を盗賊達に付けておく。

特殊技能持ちは稀少な存在。私はある特殊技能を持っている。

その特殊技能とは、自分が作った氷粒の魔法波動を感じ取る事ができるというもの。


この世界の人々は魔法を使えて、その人が魔力を持っているかは分かる。特殊技能を持っている人の中で魔法波動を感じる事ができるのは王宮の魔術師団の中でも一握りです。

なので、魔術師団からのスカウトもあり、同時に公爵家からもスカウトが来ました。


天秤にかけるまでもありませんね。

魔術師団は有事の際、戦場に赴かねばなりませんし、しかも男性比率が高いのでですよ。

女性もいるにはいますが、結婚して辞めてしまうそうです。

騎士様と行動を共にする事が多いそうですし・・・

筋肉だらけの職場・・・想像するだけでうんざりしてしまいます。

私は玉の輿に興味はないので、華やかな王宮勤めより、職場環境を優先しました。

まさかユーリ様付きの侍女になるとは思ってもみませんでしたが・・・


あぁ・・・話しが逸れてしまいましたね。

ユーリ様が気づかれる前に盗賊達を捕まえないといけません。


ユージーン様は私の特殊技能をご存知なかったようです。

仕方がないので、他言しないようお願いをして私の特殊技能の事と氷粒を盗賊達に付けている事をユージーン様にお伝えしました。


「ユージーン様。私の討伐隊への同行をお許しいただけますか?」


「ミーナ、お前はユーリ付きの侍女だろう?何故、同行を希望する?」


「盗賊達の追跡ができますので、同行をお許し頂きたいのです」


「・・・なに?一体どういう事だ?」


「・・・ユーリ様や他の者達へは秘密にして頂きたいのですが・・・私は特殊技能持ちです」


「特殊技能持ちだと!?」


「はい。私の特殊技能は自分が作った氷粒の魔法波動を感じ取る事です。盗賊達に氷粒を付けましたので追跡が可能です。」


「・・・わかった。許可しよう」


「ありがとうございます」


「・・・ミーナ。お前の特殊技能の事を父様はご存知なのか?」


「・・・はい。王宮魔術師団からスカウトされていましたが、旦那様からも同時期に公爵家へ仕えないかとお誘いがございましたので・・・」


「そうか・・・ミーナ、ユーリが気がつく前には屋敷へ戻ってくる事。それが同行を許可する条件だ」


「かしこまりました。それではユージーン様、私はこれより騎士様方と共に出立いたします」


「あぁ。必ず護衛騎士の傍にいるようにな。お前が怪我するとユーリが悲しむ」


「っ!はい。かしこまりました。それでは行ってまいります」


ユージーン様はお約束通り、ユーリ様には私の特殊技能を秘密にして下さいました。


盗賊達を捕らえ、王国騎士団へ引き渡し、事後処理を全て騎士様方へお任せして私は一足先に屋敷へ戻らせて頂きました。

護衛騎士団長にのみ私の特殊技能の事はお話しさせてもらいました。

そうしないと同行できそうになかったので・・・

確かに正確な位置を教えるとなると流石に話しておかねばなりません。


森の中へ入り、最初に遭遇した地点へとやってきました。

全神経を集中すると、一箇所に纏まっている氷粒の魔法波動を感知しました。


(あら?こちらの方角って確か滝があったわよね?)


波動を追って行くと案の定、滝の前へとやってきました。

隠れる事のできる所を探しますが見つかりません。

もう一度集中すると滝の後ろ側に波動を感知しました。

団長様へこっそり耳打ちして、滝の後ろを確認してもらうと洞窟があったようです。


騎士様方が一斉に滝裏の洞窟に突入しました。

しばらくの喧騒のあと、盗賊達が捕縛されて出てきました。

他に逃げた盗賊がいないか確認のため集中します。

波動は他に感じられないので、全員捕まえられたみたいです。

では、私は一足先に戻らせて頂きましょう。

ユーリ様が心配ですからね。

団長様が何か言いたそうにこちらを見ていますが何でしょうか?一応聞いておきましょうか・・・


「ルイ団長何か?」


「あ・・・いや・・・今回は助かった。こんなに早く捕縛が終了するとは思わなかったからな」


「ユージーン様とのお約束で、ユーリ様のお目が覚めるまでに戻らなければなりませんので」


「そうか。では護衛を1人付けよう」


「結構です。馬を一頭お借りします。あと、事後処理をお願いします。私は先に戻らせていただきます」


「わかった。気をつけてな。ユージーン様に盗賊は全て捕らえたとお伝えしてくれ。正式な報告は私が戻ってからさせて頂くとも」


「かしこまりました。それでは失礼いたします」


踵を返して馬の所へ向かうミーナをルイ団長は不思議な面持ちで見つめていた。


「特殊技能持ちが何故、公爵家で侍女なんてしているんだ?魔術師団に入ればそれなりの地位に就けるのに・・・」



公爵以外は知らない。

ミーナが職場環境に重点を置いている事を。

そして1人でユーリを守る事ができるほどに剣の腕がある事も

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